近年はサブスクリプション(定期購入)型の商品が増えているが、その中で菓子のサブスクとして2016年にスタートしたのが、スナックミー(Snaq.me)だ。1配送につき8種類の菓子が送られてくるサービスで、好き嫌いなどの嗜好に関する回答から約1000億通りの中からアルゴリズムによって菓子が選ばれる。また菓子には人工着色料や人工香料、精製した白砂糖、マーガリンやショートニングといった材料を使用せず、自然素材を用いることで食べても罪悪感を感じない、いわゆる“ギルトフリー”のものが作られている。もちろん体に優しいだけでなく、「アガベチョコレート」「枝付き干しぶどう」「ギルトフリーショートブレッド」「手作りかりんとう」など、とにかく美味しそうなものばかりなのだ。
スナックミーの服部慎太郎CEOは「子どもが生まれたタイミングで菓子の外箱の表示を見るようになった。そこからちゃんとしたものを食べられるようにしなければと思い、最初は都内のマルシェなどで見つけた商品をBOXに詰め合わせて売り始めた。しかし、データを集めて、それを基に作った方が面白いなと思うようになったのが今の形の始まり」とスナックミーの始まりを語る。今では一部の外部委託を除いて、菓子は自社で開発、試作、製品まで一貫して行っている。
スナックミーの製造は都内某所のビルの1フロアに、菓子の開発工場、エンジニアのデスク、製造された商品とそれを仕分けるスタッフがそろうコンパクトさだ。「テック系企業出身のエンジニアが多くて、先にアルゴリズムのシステムを作った。参考にしたのは『ネットフリックス(NETFLIX)』だ」という。「ネットフリックス」は米発の映像ストリーミング配信会社だが、マイページには常時おすすめの作品が表示される。これは一度観た映画やドラマから予測してレコメンドされている訳だが、これを参考にアルゴリズムを考えたというから、菓子を作る会社というよりはテック系のベンチャー企業のようだ。
スナックミーでは毎回、送ったものに対して評価を行ってもらう。大まかに星の数で評価をつけることに加え、甘さや食感など細かな評価も可能だ。「しかし好みに合わせすぎると、全て焼き菓子だった、といったことが起こってしまう。なので、2つほどこちらのおすすめを送っている」という。
このような形は購入者にとって「新しい発見機会」であるだけでなく、企業にとってもメリットが大きい。「開発時は100〜200種類を作り、商品として送っている。サンプルで調査を行うと忖度とか、バイアスがかかってしまうが、商品として送っているからリアルな声が届く。その声に合わせて量産するか、やめるか決めている」という。また一社で開発から製作までを一貫しているため「面白そうと思ったら数週間でアイデアを形にできる」のもメリット。このようにして年間300種ほどの新商品が生まれている。
外部の委託先にとってもメリットがあり「テストマーケティングではないけれど、外部の企業も新しいものをお客さまに食べてもらい、フィードバックがもらえる。職人肌でものづくりの熱意が高い人ほどマーケティングが弱い、ということもあるので、下請け会社ではなく、一緒に新商品を開発しているような形」と関係者すべてにメリットがある。もちろん「サンプルボックスのようになることはなく、クオリティーを保つためにそういった商品は1箱に1つくらいしか入らない」という。
服部CEOは「サービス自体がプラットフォームのような形なので、新ブランドを立ち上げることもできる」と話す。その第1弾がプロテインバー「クリアバー(CLR BAR)」だ。シリアルやチョコなど多くの味が入る一般的なプロテインバーではなく、素材の味が生きるように素材を減らし、またえんどう豆やナッツ由来のタンパク質、甘みにはデーツを使うなど“ギルトフリー”なものだ。「クリアバー」もスナックミーのサービスと同様に、お客の意見や要望に合わせて新製品の開発を続けている。「僕たちがやっているのはおやつの時間の価値を上げること。ベネッセコーポレーションの『こどもちゃれんじ』みたいに、楽しみでやめられなくなるサービスを目指している」。