ファッション

身長155cm以下の女性のための服 顧客と一緒に作るD2Cが設立1年で月商数千万円に

 2018年1月にスタートした「コヒナ(COHINA)」は、身長155cm以下の女性がターゲットのD2C(Direct to Consumer)ブランドだ。手ごろな値段のキレイ目カジュアルを提案する同ブランドの特徴は、インスタライブを通じた消費者とのコミュニケーション方法。視聴者と共に商品を開発するユニークな手法で、設立以降、主要SNSであるインスタグラムのフォロワー数と売り上げは右肩上がり。現在、インスタグラムは7万8000フォロワー、売り上げは月数千万円。現在も月20~30%の成長を続けており、今後は海外への進出も視野に入れているという。なぜ、「コヒナ」はここまで成長できたのか?同ブランドを立ち上げたディレクターの田中絢子さんと清水葵さんに聞いた。

WWD:ターゲットを155cm以下の女性にした理由は?

田中絢子「コヒナ」ディレクター(以下、田中):日本人女性の平均身長は157~158cmほどですが、私の身長が148cmで、清水が151cm。小柄な私たちにとって似合う服を見つけるのがかなり大変でした。例えばサイズが大きすぎたり、ボトムスも裾が長すぎて、お直し代の方が商品よりもお金がかかってしまったり。身長が低いというだけで、ファッションを楽しむ可能性が閉ざされてしまっているなと感じたのがそもそもの始まりです。

WWD:低身長の女性向けのブランドは少なからず存在するが、自分たちで「コヒナ」を立ち上げた理由は?

田中:低身長向けというコンセプトは同じでも、価格が高かったり、デザインが10代向けでギャルっぽかったりと、個人的に欲しいと思う服とは少しズレが生じていて。私と清水をはじめ、周囲の小柄な女性たちもそういった意見が多く、「じゃあ、自分たちで作ろう」と思い、始めました。

WWD:他ブランドとは異なる「コヒナ」の特徴は?

清水葵「コヒナ」ディレクター(以下、清水):小柄な方特有のコンプレックスを解消できるよう、サイズとシルエットにはとにかくこだわっています。フリーサイズの服をただ小さくしたようなデザインではなく、ワンピースの切り替えの位置や身幅など、“小柄さん”が求めるものを作っています。同じ丈のパンツでも4サイズをそろえるなど、体形を幅広くカバーしているのもポイントです。

WWD:インスタライブで視聴者と一緒に服を作っている点も特徴的だ。

清水:色や素材などを相談しながら商品開発をしています。その場で商品の仕様が決まることもありますね。

田中:私たちはもともとアパレルの経験がなく、当初はどういった商品が良いのか全然分からなかったので、自分たちで全部考えるのではなく、お客さまと一緒に作っていくのが現実的なのではないかなと思っていました。

WWD:アパレルの経験がなかったことで、生産工場の確保なども難しかったのでは?

田中:1人も知り合いがいなかったので、大変でした。初めは清水の知人の母親で、パタンナーをされている方にお願いしていた時もありました。工場も初期はネットで探して直接連絡し、「うちの工場で作るよ」と言っていただいた方にお願いしました。そこから、それなりの生産数で、しっかりとやり取りを続けていくことで、「その商品ならこの工場が得意だよ」と紹介していただくことも増え、徐々にネットワークが拡大していきました。

インスタフォロワー急増のカギは“ライバー”の存在

WWD:ブランド設立1年強でインスタグラムのフォロワーが7万8000人と急伸しているが、きっかけなどはある?

清水:ジワジワと増えていった印象ですね。お客さまには今、何が響くのかを考えながら実験的にいろいろなコンテンツを投稿しています。「コヒナ」の強みであるサイズ感に関する投稿は既存のお客さまからの反応も良いです。

WWD:今までインスタグラム上で発信してきたコンテンツの中で、最も反響があったものは?

田中:インスタライブは、私たちがインスタアカウントを運営する上で一番大切にしていて、かつお客さまからの反応もいいです。コミュニケーションの場として、日々欠かさず1時間ほど配信しています。そろそろ365日連続配信記録が樹立できそうです(笑)。

WWD:インスタライブでのコンテンツには、商品開発以外にどういったものがある?

田中:個別のアイテムに対しての説明や、着回し術などですね。「コヒナ」でモデルをしてくれている方などを“ライバー”としてお招きして、紹介してもらっています。“ライバー”は20人ほどいるので、一口に小柄といっても体形は幅広い。彼女たちがいろいろな服を着て紹介することで、視聴者も新しい発見ができたり、親近感を持てたりする。いわばオンライン上での店員とお客さんの関係ですね。

清水:ライバーさんの個性が生きることも多いです。例えば、とあるライバーさんはアラフォーのママ代表として、授乳しやすいコーデをレクチャーするなど、ピンポイントなテーマで配信してくれることもあります。

WWD:インスタライブでの配信は、ブランド設立当初から考えていた?

田中:ブランドに関わっている人がお客さまの前に立つことは考えていました。小規模かつ、誰がやっているのか分からないブランドだと、仮に見つけてもらえたとしても「ふ~ん、こんなブランドあったんだ」で終わってしまう。誰がどんな思いでやっているのかといった透明度の高さは意識していますし、そのスタンスは今後も続けていくつもりです。

WWD:視聴者やフォロワー間でコミュニティーができることはある?

清水:びっくりするくらいあります(笑)。最初はインスタ上でコミュニケーションを取り始めて、後々仲良くなってポップアップストアに遊びに来てくれたこともありました。

田中:うれしいことに、インスタで「コヒナ」用のアカウントを作ってくれる方も少なからずいます。ブランドを媒介にして、新たなコミュニティーができあがっている印象ですね。

WWD:現状はD2Cブランドだが、卸などは考えている?

清水:卸はあまり考えていないですね。お客さまとのコミュニケーションを重視していることもありますし、価格の面でも、卸を行わないからこそ今の価格で販売できているので。お金をかけるのであれば、細部にこだわったり、サイズ展開を増やす方に使いたいです。

田中:他ブランドさんとのコラボを通じて、コラボ先の方が持つショップなどでの販売することはあります。コラボに関しては今すすめている段階で、年内にいくつかできればいいな、と考えています。

WWD:今後、ブランドをどうしてきたい?

清水:いま、海外進出に向けて準備を進めています。小柄なゆえにファッションに悩みを抱えているのは日本に限らず、世界中にいるはず。まずは日本と同じ身長の方も多いアジアに進出したいなと思っています。

田中:服のテイストも今後は広げていくつもりです。当初はキレイ目カジュアルからスタートし、現在はよりカジュアルなものや、オフィス要素の強いものにまで広げてきました。小柄さんの共通点は持ちつつ、もっとモードであったり、スポーティーであったりとバリエーションを広げ、誰もが購入したいと思えるようなブランドにしていくつもりです。

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