イオンモールは、中国と東南アジアの海外事業を拡大する。前期(2019年2月期)で中国19、東南アジア8の計27施設を運営しているが、26年2月期を最終年度とする中長期構想ではそれぞれ35の計70施設の体制にする。これまで新規開発の初期投資が先行していたが、前期に初めて営業黒字に転換。開業3年以上の施設が7割以上になったため、今後はこれらが安定して利益を弾き出す公算だ。日本のアパレル企業などにとっても海外での販売のプラットフォームになる可能性を持っている。
カンボジアの首都プノンペンに18年5月に開業した「イオンモール セン ソニック シティ(AEON MALL SEN SONIC CITY)」は、経済発展が著しいこの国の勢いを象徴したようなショッピングセンター(SC)だ。総賃貸面積8万5000平方メートルの広大な空間に物販や飲食だけでなく、室内遊園地、プール、アクアリウム、ボーリング場、コンサートホール、テレビの収録スタジオなどが営業する。若い家族連れやカップルが一日中過ごす場所としてにぎわいを見せる。カンボジア国民の平均年齢が24歳と日本よりも20歳以上若く、消費意欲が旺盛だ。
イオンモールが東南アジア(ベトナム、カンボジア、インドネシア)で1年以上運営する7施設は前期に全て黒字化した。中国も17施設中10施設が黒字化し、残りの7施設はほとんどが開業3年未満のため黒字化は時間の問題といえる。
08年に中国・北京に初進出して以降、特にこの数年はドミナント(地域集中)出店の拡大によって、エリアでの知名度アップとスケールメリットによる業務効率化を進めてきた。海外事業は前期に5億円とはいえ初めて営業利益を出した。これが今期(20年2月期)は75億円に到達する見通しだ。吉田昭夫社長は「収益が加速度的に拡大するサイクルに入った」と自信を深める。
進出する4カ国では、現地のニーズに沿ったリーシングやサービスを柔軟に取り入れてきた。インドネシアでは配車やフード配送、電子マネーなどで成長を遂げているIT企業のゴジェック(GOJEK)と協業して、施設内でこれらのサービスが受けられるようにした。中国では「独身の日(11月11日)」にネット出店する専門店のオンラインと同じ価格設定にしたり、施設独自のクーポン券を発行してオンラインよりも安く買い物などができるようにした。また中国EC大手のJD.comのリアル店舗を誘致し、新しいニーズにいち早く対応してきた。
同社の中長期構想の目標はでは、営業利益1000億円(前期は529億円)のうち海外事業で350億円を稼ぐ青写真を描いており、成長の軸足は海外事業に移る。ただ、中国および東南アジアは中長期的な経済成長は見込めるものの、政治や国際情勢のリスクもつきまとう。イオンモールは3年ごとのテナントの契約満了のタイミングで大規模な改装や賃料改定、計画的な増床などによって、マクロ経済に左右されずに成長していくことを目指す。