奥田亜紀乃が手掛ける洋服とテキスタイルの新ブランド「マスノウ デザイン(MASNOU DESIGN)」が2019年春夏からスタートした。ジェンダーレスかつエイジレスな洋服と、スペインなどで生産したオリジナルテキスタイルの両方を受注販売している。4月中旬に行った展示会では、19-20年秋冬ウエアと20年春夏向けのテキスタイルを発表した。
ブランドの強みは天然原料にこだわったオリジナルの生地だ。強ねん糸を高密に織り上げ、程よいストレッチの利いたスペインのコットン、日本と中国で生産したシルクやコットン、ウールなどを掛け合わせた布帛素材など。オリジナル生地はデビューシーズンの19年春夏に6社へ卸し、すでに著名なデザイナーズブランドも使用しているという。
洋服のデザインは一見シンプルだが、普遍的なこだわりがつまっている。「性別や年齢、サイズの既成概念にとらわれず、両親とも着回せるくらい自由で、着方を着る人に決めていただくような服を作りたかった」と奥田デザイナーが話すように、商品は全てユニセックスで着用できるもの。パンツはウエストをゴムにして、ジャケットは紳士服に合わせて左前で仕立てフリーサイズの1サイズ展開。色はエクリュ(生成り色)、ネイビー、ブラックなどベーシックカラーを取り入れ、コートやジャケットには財布やスマートフォンもすっぽり入る大きなポケットを付けているのもポイントだ。
価格設定は洋服としてはユニークで、電化製品やドラッグストアのコスメのように商品の参考上代を提示し、卸先に販売価格設定を委ねている。「私自身が決めつけられることが好きじゃないのもあるが、販売スタイルは店によって異なるので、店頭に並べる価格は自由に決めていただきたい」と奥田デザイナー。19-20年秋冬商品の参考上代はアウターが4万9000〜7万9000円、シャツ型のライトアウターが4万3000〜5万9000円、シャツ・ブラウスが2万5000〜4万3000円。カットソーが1万9000円、ボトムスが2万3000〜4万3000円、テキスタイルバッグが1万3000〜2万4000円、ハットが1万8000〜2万3000円など。
ブランド名の“マスノウ”はスペインのバルセロナ近郊の町の名前で、スペイン語で“mas”が“もっと”(英語のmore)、“Nou”が“新しい”(英語のnew)を意味する言葉でもある。「マスノウを訪れたとき、暮らしの豊かさや人のやさしさなど、都会とは異なる贅沢さを感じた。その感覚をブランドに反映させたい」と奥田デザイナー。ブランドコンセプトに「豊かさ、多様性、普遍性、新価値」を掲げ、長く使えて着回しの利く服を提案する。
デザイナーの奥田は、東レインターナショナルや伊藤忠モードパルなどでのテキスタイル担当を経て、ワールドの生産を担うワールドプロダクションパートナーズで「マスノウ デザイン」の前身となるユニセックスブランド「エー グリーニング(A GREENING)」をスタート。同社を退社後、18年に「マスノウ デザイン」を始動した。19年春夏は福岡のピクチャー、長崎のデソートクロージングカンパニーなどセレクトショップ8店舗で取り扱っている。