ファッション産業の透明化を目指す任意団体「ファッションレボリューションジャパン」は4月24日、東京・渋谷の「トランクホテル」でサステイナビリティーをテーマにしたセッショントークを開催した。有料にもかかわらず会場は終始満席で、来場者の半数以上が20代前半の人たちだった。
ファッションと環境のつながり
セッションは4つ行われた。1つ目は「ファッションと環境のつながり」をテーマに、環境省の岡野隆宏・大臣官房環境計画課企画調査室室長と、繊維商社・豊島の溝口量久・執行役員営業企画室室長が登壇した。
環境省の岡野室長はまず地球環境の現状について説明し、そのために環境・経済・社会の総合的向上が不可欠であることを述べた。豊島の溝口室長は、同社が16年前から取り組むオーガニックコットンプロジェクト「オーガビッツ(ORGABITS)」や、廃棄食品から染料を抽出していることなどを紹介。「エコ素材をエコひいきしてほしいな」と語るなどして会場を沸かせた。
このセッションで強調されたのはサステイナビリティーに取り組む時に「厳密性と緩さが重要」だということ。「100%完璧に行おうとすると難しい。まずは10%でも行うことが大切である」ことを2人は伝えた。また、「社会を大きく変えるための仕組み作りが必要で、各個人が行うサステイナブルアクションが価値創造や喜びになる社会になれば」と締めくくった。
トレンドメーカーとしてできること
2つ目のテーマは「トレンドメーカーとしてできること」。「ヴォーグ ジャパン(VOGUE JAPAN)」の渡辺三津子編集長とケリング(KERING)のセシリア・タカヤマ(Cecilia Takayama)オペレーション&テクノロジー マテリアルイノベーションラボラトリー(MIL)ディレクターが登壇した。
渡辺編集長は19年2月号でサステイナブル特集を行ったことを紹介しながら、「ここ1~2年でのファッション業界の変化を感じ、消費者目線で興味を持っていただきたいと特集を組んだ。こうしなければいけないではなく、愛しているものが悲しい状態にあるというもやもやを大切にして、今後も読者と意識を共有し、『ヴォーグ』らしい形で続けていきたい」という。また、最近では各国「ヴォーグ」とのサステイナビリティーに関する最新情報の交換が活発に行われていると語った。
タカヤマ・ディレクターはケリングのビジネスの中核にサステイナビリティーがあること、最高基準を満たしたサステイナブル素材を提供すること目的にしたMILの活動などを紹介した。2人は「ファッションはエモーショナルなものであり、人々に影響を与える産業。ラグジュアリーの意味の一つにサステイナビリティーがあり、それをクールにファッションに変換していきたい」と締めくくった。
なぜ今サステイナビリティーを推進するのか
3つ目は、「なぜ今サステイナビリティーを推進するのか」というテーマでへネス・アンド・マウリッツ・ジャパンの山浦誉史CSRコーディネーターとストライプインターナショナルの二宮朋子SDGs推進室長が登場。
山浦コーディネーターは、循環型ファッションを目指す同社の取り組みについてプレゼンテーションした。二宮室長は14年から作る人も着る人もフェアなサプライチェーンの実現に取り組んでいることに言及し、SNSを通じて縫製工場とブランドのつながりを発信していることを語った。
また、両社ともショッピングバッグの有料化を行っているが、そのことについて山浦コーディネーターは「ショッピングバッグ自体を減らすことが重要で課金しているのはなるべく使わないという選択をしてほしいから」と話し、二宮室長は、「無料のものでも誰かが作ったもの。そこを意識してほしいと思った」と話した。
今日からできるサステイナビリティーへの一歩
4つ目は、「今日からできるサステイナビリティーへの一歩」と題し、特定非営利活動法人ゼロ・ウェイストアカデミーの坂野昌理事長とパタゴニア(PATAGONIA)日本支社の篠健司ブランド・レスポンシビリティ・マネージャーが店単位でできるサステイナビリティーについて話した。店舗におけるごみをいかに減らすかを、「パタゴニア」が行っている具体的な事例とともにレクチャーした。
坂野理事長は徳島県上勝(かみかつ)町で「ごみ排出ゼロ」に取り組み、1月に行われた世界経済フォーラムの年次総会(通称、ダボス会議)には共同議長の一人として参加した。「ダボス会議でもサステイナビリティーと循環型に取り組むことは成長戦略ということを確認した。これは経済の文脈から見ると画期的なこと。これからはビジネスモデルをいかに循環型にするのかが問われ、あるもので回していくことが重要になる。社会の仕組みから変えていくことが必要」と述べた。
「ファッションレボリューション」は2014年の設立。同年4月24日にバングラデシュの縫製工場が崩壊し、1100人以上が死亡して2500人以上が負傷し、200人以上が行方不明となった事故をきっかけに、このような悲劇を二度と起こさないために何をすべきか、何ができるのかを考えるためにスタートした国際的な団体で、今回のイベントを主催したのはその日本における組織。