三越伊勢丹ホールディングス(HD)は今期(2020年3月期)、伊勢丹新宿本店、三越日本橋本店、三越銀座店の基幹3店の改装とデジタル関連の新ビジネスに積極投資する。改装では、18年10月に日本橋の第1期改装で打ち出したパーソナルショッピングを新宿と銀座にも導入。地方店にも来期(21年3月期)以降の導入を目指す。デジタル関連では、「店頭にある商品を全てECサイトに掲載する」(杉江俊彦社長)ことを目指し、4月から新宿のパークシティ伊勢丹1、2階を、ささげ(撮影、採寸、原稿書き)作業のための“デジタルベース”として稼働させている。
パーソナルショッピングを導入した日本橋店は、「18年12月まではなかなか効果が出なかったが、19年1月以降浮上している」という。18年10月~19年3月の催事売り場を除く売上高は、前年同期比3.4%増だった。コンシェルジュが接客すると、「来店率は1.5倍、セット買い上げ率2.3倍、複数ショップの利用率は1.2倍になった」と自信を見せる。そこで、改装に合わせて新宿店、銀座店の一部にコンシェルジュサービスを導入。サイズダウンした形で地方店にも導入する考え。
コンシェルジュサービスの導入とともに、基幹3店の改装のキーワードとなるのが、売り上げ好調な化粧品、宝飾・時計、特選の3軸だ。新宿店の本館の改装では、「化粧品は現在1階がメインだが、これを2階まで拡充する」。今期中に進める新宿店の本館と日本橋店の第2期改装には、100億円強を投資する。これは、前期(2018年3月期)と今期で両店の改装に約250億円を投資するという元々掲げていた計画通り。銀座店は、今期から来期にかけて宝飾・時計などを強化する形で改装する。
デジタル関連では、実店舗とECでのシームレスな価値提供に引き続き注力する。店頭にある全商品のEC化を掲げているが、現在の達成率は約2割という。苦戦する地方店に対しても、「EC画面を活用することで、基幹3店の商品を取り寄せて楽しめるようにする」。
新ビジネスとしては、食品の定期宅配事業“イセタンドア”、化粧品のEC&総合情報サイト“ミーコ”などで既にサービスを開始している。特に、“イセタンドア”は「会員数が5月末に1万人を超える見込みで、購買単価も想定を上回っている」。今期はチャットでパーソナルな接客販売をするECサイト、Eギフト、メンズのカスタムオーダーという3つの新デジタルビジネスをスタートする予定。「それぞれの事業を“点”で行うのではなく、“面”で顧客を捉えていく」ことを目指し、そのためのポイントシステムも今期中に新たに立ち上げる予定だ。
実店舗とオンラインでのシームレスな顧客体験の向上の一環として、実店舗では改装に合わせて優良顧客向けのラウンジも拡充してきた。ラウンジは「年間300万円以上購入する顧客向けだが、週末は合計で200人以上に利用いただいている」という。
2019年3月の業績は、売上高が前期比4.7%減の1兆1968億円、本業の儲けを示す営業利益が同19.7%増の292億円だった。ただし、投資ファンドに株式の過半を売却した高級スーパー「クイーンズ伊勢丹」や、18年3月に事業終了したマミーナ、同3月に閉店した伊勢丹松戸店などの影響を除いた既存事業の売上高は同0.1%増だった。