「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」は8日、2020年プレ・スプリング・コレクションのショーをNYのジョン・F・ケネディ(JFK)空港内にまもなくオープンするTWAフライトセンターで発表した。
同センターは1962年に当時の米国大手航空会社のターミナルとして建てられ、01年まで使用されていた。フィンランドの建築家エーロ・サーリネン(Eero Saarinen)が手掛けた流線形のデザインは60年代の名建築として知られる。白い大きな鳥が羽を広げたようであり、開放的で近未来的。ジェット機時代到来に沸いた当時の熱気をほうふうとさせる。15日にオープンし、今後はホテルとして使用される。
この日のために会場を飾った緑の演出も異国への旅情を誘う。アーティスティック・ディレクターのニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquiere)は「私は幸運にも90 年代年代の終わりに TWA フライトセンターに飛行機で到着したことがあり、決して忘れられない思い出だ」とコメントしており、若いジェスキエールが夢を胸にNYに降り立った姿が目に浮かぶ。「この場所は、20 年間も忘れ去られていたが、現代に蘇った。まさに復活した聖域のようであり、ホテルという形でアメリカのヘリテージの一部が新しい魅力を発揮する姿を再発見するのは喜びだ」とも話す。
「ルイ・ヴィトン」のプレ・スプリング・コレクションはこれまでも、各国の名建築を会場に発表してきた。建築好きなニコラの方針であり、その街の文化と「ルイ・ヴィトン」のアイデンティティーでもある“旅”を融合して見せることでブランドの世界観を深く伝える。今回TWAフライト・センターを通じて伝えたのは、NYという街の夢見る力とエネルギーだ。
リーゼントヘアは映画「ウエスト・サイド物語」のロカビリー少年を、濃い目のメイクアップは70年代の米国のアイコン、グレイス・ジョーンズ(Grace Jones)をほうふつとさせ、ウィメンズだが印象はジェンダーレス。スイングトップ風の短い丈のアウターには第1ボタンまできっちり閉めた柄シャツを合わせ、“ウォール・ストリート”をイメージしたというダブルのスーツはウエストをベルトでかっちりマークする。NYの摩天楼の柄を刺しゅうで施したり、ジャカード柄で夜の街の光を再現したりととにかくエネルギッシュだ。TWAセンターの流線形とリンクする大胆なカッティングも力強さにつながる。会場は広く階段も多いが、モデルの足元はレースアップのワークブーツだからハイスピードで歩き抜ける。
バッグのバリエーションは実に豊富で、特に印象的なのは前半に登場したデジタルガジェットと融合したハンドバッグ。プロトタイプとのことで詳細は発表されていないが、デジタル、イノベーティブといった現代のNYのカルチャーとリンクするものとなりそうだ。