チャームを替えていく通りにも楽しめるイヤードレスのヒットと色石人気で、「アガット(AGETE)」が絶好調だ。「WWDジャパン」が年2回、全国の百貨店を対象にカテゴリー別にアンケートを集計するビジネスリポート(2018-19年秋冬)で伸長率トップのブランドに躍り出た「アガット」は、来年で設立30周年。ブランド設立当時から色石を中心にした個性的なジュエリーを提案し、こだわりを持つ女性たちから高い支持を得ている。同ブランドをはじめ、雑貨とジュエリーを販売する「ノジェス(NOJESS)」やテーパーカットのダイヤモンドに特化したジュエリーの「ベルシオラ(BELLESIORA)」などを展開する、サザビーリーグ傘下エーアンドエスの稲瀬修・執行役員兼販売部部長に話を聞いた。
WWD:「アガット」「ノジェス」「ベルシオラ」の売り上げ比率は?
稲瀬修エーアンドエス執行役員兼販売部部長(以下、稲瀬):2018年度の売上高が約110億円で、その大部分を「アガット」が占め、「ノジェス」と「ベルシオラ」は2つ合わせてもわずかだ。
WWD:「アガット」好調の要因は?商品開発や施策などは?
稲瀬:特に何かアクションを起こしたわけではないが、MDやサービスにおいてブランドが持つ強みを信じてやり切った結果だと思う。立ち上げ当時からダイヤモンドではなく、着替えるジュエリーをブレずに提案し続けている。それが時流に乗ったのだろう。また、「アガット」の世界観を統一して見せるため壁面を作ってアンティークの什器を設置するなど店舗の改装を行っており、昨年3月にはそごう横浜店の、夏には新宿フラッグスの店舗を移設拡大したのが売り上げアップにつながった。現在「アガット」の店舗は中国に20店、台湾に7店舗あり、壁面で囲まれたショップになっている。だから、インバウンド顧客が日本で買い物する際にすぐに「アガット」だと分かる店舗環境にしていく。
WWD:気になる消費動向は?
稲瀬:オンラインの販売は安定しており、伸び代があるのはリアル店舗の方だ。「アガット」は女性のための着替えるジュエリー。王道のダイヤモンドのネックレスなどとは違うので、男性には商品選びの難易度が高く、女性主導のギフト購入が増えている。「ベルシオラ」は女性の管理職クラスなどを視野に入れているが、「アガット」も同様に、女性の自家需要の市場をチャンスとして捉えている。
WWD:ここ数年の年商の推移と前年比は?
稲瀬:年商は2017年が102億円、18年が110億円とここ数年着実に1ケタ増で伸びている。ピーク時には90あった店舗も74になったが、単店の売り上げがアップしている。
WWD:競合ブランドは?競合とみなす理由は?
稲瀬:国内ブランドは競合ではない。同じグループのセレクト業態であるロンハーマン(RON HERMAN)やエストネーション(ESTNATION)などで販売しているブランドの方が競合相手だと思っている。もちろん客層は違うが、ファッションジュエリーとして商品開発をしているため、どちらかというとクリエイター系の自由に表現されたものが競合相手に近い。石にこだわりつつ、なぜこのデザインなのかと常に追究しながら物作りをしている。これらをバランスよく表現するのは永遠の課題だ。それができれば、50年、100年と継続するブランドになれる。
WWD:今後の戦略や出店計画は?
稲瀬:「アガット」では、先述したが日本人や外国人関係なく誰が見ても分かる店舗環境を作りつつ、商品的にも「アガット」らしく、さまざまなジュエリーブランドがある中で淘汰されないブランドにしたい。出店はしばらく予定していないが、大阪、名古屋、福岡でいい物件があれば路面店出店も考えたい。「ノジェス」はターゲットを若年層にシフトしており、店舗も百貨店からSCへシフトしていく。2000年に立ち上げた時は、アクセサリーとファッション雑貨が融合したブランドとして注目され軌道に乗ったが、ここ10年くらいで年商が約3分1に落ち込んだ。それを取り戻していきたい。「ベルシオラ」はじっくり時代の流れを見ながらターゲットを絞り、商品開発を行っていく。
WWD:ジュエリー市場が活性化するために必要なことは何か?
稲瀬:市場が望む商品を作っていくこと。ギフトが苦戦しているのは、商品も商品の裏側にあるストーリーも消費者にとって魅力がないからだと思う。素敵なギフトの在り方や女性がもっと美しくなれるジュエリーの提案にこだわりつつ、思い切ってやってみることが大切だ。各ブランドの個性があるので、その強みを伸ばしながらしのぎを削ればジュエリー市場も活気が出てくるだろう。何はともあれ、クリエイティビティーとブランディングが重要だ。