ワールドは10日、子会社を通じて婦人靴ブランド「エスペランサ(ESPERANZA)」などを運営する神戸レザークロス(神戸市、齋藤伸介社長)の全株式を取得すると発表した。取得金額は6億4400万円。神戸レザークロスの小売事業、卸売事業、OEM(相手先ブランドの生産)事業、木型製造事業、輸入事業、靴職人を育てる靴学院まで、靴の総合企業として培ってきた知見と、ワールドのデジタル・プラットフォームを掛け合わせて、新しいビジネスモデルを作る。
神戸レザークロスは1948年に神戸・三宮で履物用の資材メーカーとして創業。その後、靴製造に乗り出すとともに、66年には「エスペランサ」で小売事業にも進出し、以後、日本の婦人靴市場の一角を担ってきた。だが、近年は婦人靴市場のけん引役が従来のパンプス、サンダル、ブーツからカジュアルなスニーカーに移行する中、苦戦を余儀なくされてきた。売上高はピーク時の2008年9月期の約110億円から、19年7月期は60億円前後に縮小する見通し。この数年は営業赤字に陥っている。
だが財務基盤はしっかりしており、ワールドは「当社にとって靴のトータルビジネスという新しい試みを一緒にできる会社」(中林恵一グループ常務執行役員)と判断し、子会社化を決めた。早期に黒字転換を目指しつつ、同時に神戸レザークロスがすでに展開しているカスタマイゼーション・サービスをワールドのデジタル・プラットフォームと組み合わせたり、靴の製造機能を他社に提供したり、ECを強化したりすることで相乗効果を高める。
婦人靴にとって小刻みのサイズに伴う製品在庫、さらに製品サイズによって異なる資材在庫のコントロールが長年の課題だった。神戸レザークロスの齋藤社長はワールドのデジタル・プラットフォームによる改善策に期待を寄せる。「当社のようなファミリー企業、中小企業ではどうしても限界があり、この数年は非効率で利益が残らない状態に陥っていた。(ワールドと一緒に)靴業界で誰もできなかったことを実現していきたい」と話す。