香港のカイタッククルーズでこのほど、下着・水着・スポーツウエアの素材展「アンテルフィリエール(INTERFILIERE)香港」が開催され、約1600人が来場した。主催は「パリ国際ランジェリー展(SALON INTERNATIONAL DE LA LINGERIE)」「アンテルフィリエール パリ」と同じユーロヴェット(EUROVET)。出展は60社あまりと決して多くはないが、2020-21年秋冬のトレンドをビジュアルで解説する「クリエイティブラボ」が設置され、トレンドや素材開発、流通戦略に関するセミナー、香港理工大学の学生たちによる華やかなランジェリーショーなど充実した内容だった。日本からは、旭化成アドバンス、北陸エステアールの2社が出展し、活発な商談が交わされていた。
オーブニングスピーチで、マリー・ロール・ベロン(Marie-Laure Bellon)ユーロヴェット会長は「環境に配慮した持続可能なボディーファッション業界の実現に向けて革新を進める」と述べ、会場では“Sustainability(持続可能)”や“Circularity(循環)”といった言葉を頻繁に見聞きした。初日最初のセミナーのテーマは、国際的なサステイナビリティーのコンサルタント企業であるサポート(suPPPort)社による「未来の糸と生地」。現在のファッション産業が環境にどのような影響を与えているかに始まり、シルクタッチのオレンジファイバーやリンゴの皮から作られるビーガンレザーなどのエコフレンドリーな素材の紹介、リサイクル素材の取り組みなどが紹介され、旭化成のストレッチ素材「ロイカ(ROICA)」も循環型素材としてフィーチャーされていた。
ユーロヴェットとインドネシアの
下着業界が連携
また今回、ユーロヴェットとインドネシアの下着業界が、ドイツ連邦経済開発協力省(BMZ)によって設立された新興国に投資する企業を支援する「develoPPP.deプログラム」に参加することを表明。これに伴い、今展にはインドネシア企業4社も出展しており、ユーロヴェットは今後、前述のsuPPPort社と連携してインドネシアの下着業界に対しさまざまなサポートをしていくという。会場では、同プログラムにどのように関わりどのように実行していくか、2020年までのタイムテーブルが具体的に説明された。このプロジェクトに代表されるように、“サステイナビリティー”や“循環型”に対する関心は大いに高まっている。しかし、日本からの出展者からは、日本国内のエコフレンドリー素材に対する注目度の低さを指摘する声も聞かれ、グローバルな流れと大きな温度差があることを実感した。
学生達は英語で
コンセプトをプレゼン
もうひとつ驚いたのが、香港理工大学の学生達によるファッションショーのレベルの高さだった。これはコンペティションを兼ねており、12人の学生がイメージボードとデザイン画を示しながらコンセプトを英語で説明し、各3体をショー形式で見せるというもの。業界を代表する審査員に加え、オンラインでも投票が行なわれ、6人のファイナリストが決定した。ファイナリストは6月13日に行なわれるITCファッションショーで各6体のフルコレクションを披露する。ファイナリストの作品はどれも主張がありつつ、製品化が具体的にイメージできるもので、学生たちは卒業後グローバルに活躍することを前提に教育されていることが見て取れた。ビジネスの現場でも学校教育の場でも、日本はグローバルの波に取り残されていないか、そんな心配が最後に残る「アンテルフィリエール香港」となった。
川原好恵(かわはらよしえ):ビブレで販売促進、広報、店舗開発などを経て現在フリーランスのエディター・ライター。ランジェリー分野では、海外のランジェリー市場について15年以上定期的に取材を行っており、最新情報をファッション誌や専門誌などに寄稿。ビューティ&ヘルスの分野ではアロマテラピーなどの自然療法やネイルファッションに関する実用書をライターとして数多く担当。日本メディカルハーブ協会認定メディカルハーブコーディネーター、日本アロマ環境協会認定アロマテラピーアドバイザー。文化服装学院ファッションマーチャンダイジング科出身