デサントの辻本謙一・取締役常務執行役員は、13日に大阪で開催された2019年3月期の決算発表会の席上で、伊藤忠商事との関係について「一気には難しいが、少しずつ現場との融和を図っていきたい」と語った。デサントは経営を巡る伊藤忠との対立が18年夏に表面化。伊藤忠は日本では異例の敵対的TOB(株式公開買い付け)を成立させ、創業家出身の社長である石本雅敏氏を含めた経営陣の刷新を断行した。激しい対立を経て6月に正式に発足する新体制について現場の社員に感情的なしこりが残らないかが憂慮されているが、辻本氏は「デサントの企業価値を上げたいという思いは一緒。社内はすでに前向きに動き出している」と強調した。
6月20日に開催予定の株主総会後に経営陣が刷新され、伊藤忠の繊維部門トップだった小関秀一氏が新社長に就任する。現在のデサント出身の5人の取締役は、韓国デサント社長の金勳道氏を除いて退任する。
小関氏を始めとした新経営陣はすでにデサントの経営会議などにオブザーバーとして出席し、引き継ぎ作業を進めている。小関氏はすでに石本社長と共に社員朝礼であいさつしたり、労使協議に出席して現場と意見交換に乗り出したという。
1月末に敵対的TOBが発表された際は、経営陣だけでなく、労働組合員の9割以上が反対に署名していた。辻本氏もスポークスマンとして反対の先鋒役だったが、「(敵対的TOBは)もう終わった話。われわれとしては納得して進めている」と話した。