素材メーカーから小売店までファッション企業の2018年度決算が出そろった。百貨店グループ大手5社は4社が減益に転じ、百貨店販路の割合が高い総合アパレル企業は総じて苦戦した。専門店では、しまむらやTOKYO BASEなど業績を下げた企業が目立つなか、上期では苦戦を強いられたアダストリアは大きく持ち直し、ユナイテッドアローズやパルグループホールディングスなども力強さを見せた。スポーツ・アウトドア企業では、売り上げ・利益ともに過去最高を更新したゴールドウインの勢いが止まらない。各社の業績から国内ファッション市場の動向を振り返る。
【百貨店】
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伊勢丹新宿本店
・売上高は前期比4.7%減の1兆1968億円
・営業利益は同19.7%増の292億円
・今期は基幹3店の改装とデジタル関連の 新ビジネスに積極投資
・改装では化粧品、宝飾・時計、特選を強化
「日本橋高島屋S.C.」(左)、日本橋高島屋店
・売上高に相当する営業収益は前期比0.6%増の9128億円
・営業利益は同24.5%減の266億円、9期振りの減益
・国内百貨店事業を示す単体の営業利益は 同33.9%減の85億円
・特選を除く婦人服売り上げは同4.3%減、 紳士服は同2.0%減
現在建て替え中の大丸心斎橋店本館
・売上高にあたる売上収益は前期比2.1%減の4598億円
・営業利益は同17.5%減の408億円
・百貨店事業の営業利益は同9.2%減の 241億円
・婦人服売上高は同3%減、引き続き婦人服売り場面積を縮小
阪急うめだ本店
・売上高は前期比1.3%増の4517億円
・営業利益は同3.7%減の175億円
・旗艦店である阪急本店(阪急うめだ本店、阪急メンズ大阪)の売上高は同4.3%増の2507億円
・今期(20年3月期)は関連費用、消費増税による影響を勘案し減益を見込む
松屋銀座本店
・売上高は前期比2.2%増の925億円
・営業利益は同13.2%減の18億円
・主力の百貨店業は同4.3%増と好調だったが「イッタラ」の輸入販売終了が響き、減益
・松屋銀座本店の売上高は同4.9%増の 782億円
【ショッピングセンター】
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・商品取扱高(ECも含む)は前期比2.6%増の3370億円
・ファッションビル「マルイ」を展開する小売部門の営業利益は同29%増の114億円
・ネット通販取扱高は同4.8%増の241億円
・全国25館の「マルイ」「モディ」で百貨店業態からショッピングセンター化を進めたことで収益力が向上
・売上高に相当する営業収益は同8.6%増の3129億円
・営業利益は前期比7.7%増の529億円
・国内の既存モールの専門店売上高は 同1.5%増
・中国および東南アジアの海外事業の黒字化が貢献
・売上高にあたる営業収益は前期比1.8%減の899億円
・営業利益は同53.7%減の54億円
・宇都宮店と熊本店の閉鎖決定に伴う損失でそれぞれ21億円、9億5500万円
・アイテム別では婦人服が同10.6%減、紳士服が同10.0%減と総じてファッション分野が振るわなかった
【大手アパレル】
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・売上高に相当する売上収益は同1.6%増の2498億円
・本業のもうけを示すコア営業利益が前期比2.5%増の163億円
・アパレル市場が低迷する中でも徹底した経費コントロールが奏功
・M&Aで傘下に入れた企業が貢献したが既存店売上高(国内)は同3.0%減
・売上高は前期比1.0%減の2407億円
・営業利益は同13.7%減の44億円
・EC売上高は同26%増の255億円
・「ジル・サンダー(JIL SANDER)」など海外事業の収益改善に期待
・売上高は前期比6.1%増の1650億円
・営業利益は同5.6%増の22億円
・低採算事業の撤退費などにより純損益は2億300万円の赤字を計上
・20年度は好調ブランド商品の原価率を上げてプロパー価格で勝負
「アクアスキュータム」の公式サイトから
・売上高は前期比4.1%減の636億円
・営業損益が25億円の赤字(前期は2億1500万円の黒字)
・百貨店を主販路にするブランドの業績不振と冬物コートの販売が苦戦
・親会社の山東如意科技集団と決算期を統一するため、2月期から12月期に変更する
・売上高は前期比5.5%減の590億円
・営業損益は21億円の赤字 (前期は19億円の赤字)
・希望退職者募集に伴う22億円の特別損失
・今期は「三陽銀座タワー」の全面改装や婦人服の戦略ブランドを立ち上げる
ルックの公式サイトから
・売上高は前期比2.3%増の440億円
・営業利益は同13.6%増の16億円
・既存事業の底上げと「衣食住」「美」の分野の新規事業に本腰
・アッパーミドルのブランドによる直営店をなだらかに増やす
【専門店】
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しまむらの公式サイトから
・売上高は前期比3.4%減の5459億円
・営業利益は同40.7%減の254億円
・周年記念の過度な値引きが粗利を圧迫
・45日以内で生産する商品の割合を15%前後にまで高める
「無印良品 銀座」 PHOTO:SHUHEI SHINE
・売上高に相当する営業収益は前期比7.9%増の4096億円
・営業利益は同1.2%減の447億円
・積極的な採用活動による販管費が上昇したため8期ぶりの営業減益
・国内店舗は大型化を進め、店舗面積を平均500坪へと拡大する
・売上高は前期比横ばいの2226億円
・営業利益は同43.7%増の71億円
・下期はセール期間を短縮、恒例の福袋販売も中止
・今後、EC購入品の店舗受取りや試着予約などのサービスを導入
・売上高は前期比2.9%増の1589億円
・営業利益は同5.2%増の110億円
・ネット通販既存店売上高は4期連続2ケタ増
・女性の社会進出のニーズに対応したビジネスウエアが伸長
・売上高は前期比5.9%増の1304億円
・営業利益は同12.6%増の79億円、純利益は同91.2%増の47億円
・EC売上高は同38.2%増の152億円とEC事業も好調
・英・インターナショナルの大量退店に伴う在庫処分などにより一部利益が押し下げられた
・チェーン全店売上高は前期比16.7%増の930億円
・売上高に相当する営業総収入は同19.4%増の669億円
・本業である作業着市場は東京五輪に伴う建設の増加で堅調に推移
・「ワークマンプラス」の出店加速やPBの拡充で高機能・低価格のカジュアル市場の開拓を急ぐ
・当期では決算期を1月期から2月期に変更
・18年2月〜19年2月までの13カ月決算の売上高は710億円、営業利益は47億円
・18年2月~19年1月の12カ月決算の売上高は前年同期比0.3%減の679億円、営業利益は同82.9%増の46億円
・国内事業の立て直しが進む一方で中国事業が減速
・売上高は前期比13.7%減の約277億円
・本業の営業損益は約6億6400万円の黒字(前期は約16億円の赤字)
・店舗数減による人件費削減や広告宣伝販促費削減などが奏功
・創業者の寺田和正氏は退任し取締役に異動
・売上高は前期比9.2%増の139億円
・営業利益は同10.7%減の14億円
・主力の「ステュディオス」は上期に営業利益ベースで前年同期比28.9%減と苦戦を強いられたが後半はプラスに
・8月、中国・上海に初出店し、様子を見ながら他都市でも出店を目指す
【スポーツ・アウトドア】
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・売上高は前期比3.9%減の1781億円
・営業利益は同5.2%減の76億円
・市場縮小が顕在化したランニングシューズを中心にグローバルで苦戦
・今期は建設、製造、運輸業などの従事者の制服を強化するほかメディカルウエアなどを拡充
日本最大の旗艦店「デサント トウキョウ」
・売上高は前期比0.9%増の1424億円
・営業利益は同17.3%減の79億円
・最大の市場である韓国の売上高は前期に比べて約3億円増の722億円、日本は約11億円増の568億円
・22年3月期を最終年度とする中期経営計画は新経営体制のもとで発表
2019年4月に東京・原宿にオープンした新店舗「ザ・ノース・フェイス オルター」
・売上高は前期比20.6%増の849億円
・営業利益は同67%増の118億円
・「ザ・ノース・フェイス」などアウトドア事業の売り上げは同30.8%増の646億円
・今後「ウールリッチ(WOOL RICH)」の店舗数拡大など店舗投資を行う
・売上高は前期比3.4%減の3866億円
・本業のもうけを示す営業利益は同46.3%減の105億円
・純損益が203億円の赤字(前期は129億円の黒字)
・特に米州(北米・南米)での大幅減収と主力のランニングシューズの販売不振が業績悪化を招いた
【EC】
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・商品取扱高は前年同期比19.4%増の 3231億円
・売上高は同20.3%増の1184億円
・営業利益は同21.5%減の256億円
・5月30日に「ZOZOARIGATO」を終了、PBも縮小予定
・商品取扱高は前期比48.4%増の141億円
・売上高は同68.9%増の67億円
・営業損失は9億7900万円 (前期は3億2600万円の黒字)
・今年度も引き続き積極的な投資とM&Aを行う
【サプライヤー】
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・売上高は前期比6.6%増の9743億円
・営業利益は同0.6%増の729億円
・世界的な衣料市況の悪化で下期から失速
・東南アジアの繊維子会社は構造改革の遅れから苦戦
・売上高は前期比6.9%増の1227億円
・営業利益は同1.7%減の105億円
・アパレル部門の売上高は同2.1%増の 253億円、営業利益は同40.2%増の10億円
・アパレル部門では「ビスコテックス」を活用したカスタマイズ生産システムの拡販が寄与
・売上高は前期比0.1%増の835億円
・営業利益は同36.2%増の14億円
・主力の服地事業は同4.0%増の524億円
・今年度は組織をOEMとODMの2つに分け巻き返す
・売上高は前期比2.2%増の662億円
・営業利益は同21.6%減の10億円
・婦人服市場の不振や原材料の高騰も加わり利益を圧迫
・海外事業は同12%で好調、現地スタッフの育成に注力する
・売上高は前期比28.5%減の513億円
・営業利益は同68.9%減の46億円
・受注減に伴い工場の稼働率がピーク時の 3割程度にまで落ち込む
・無縫製のホールガーメントは好調で下期以降は無縫製ニット機「ホールガーメント」を増販
・売上高は前期比1.0%増の390億円
・営業利益は同0.6%増の21億円
・衣料・ファブリック部門の売上高は同0.6%増の257億円
・スポーツ・機能分野の売上高は国内・海外ともに同9.8%増の64億円
・売上高は前期比13%増の22億円
・インドのスビン綿をベースにした“ロータス”シリーズが好調
・“ロータス”は売り上げの約3~4割を占める
・「定番品に用いられているため、毎シーズン必ず買い付けがある」
・ファスニング事業の売上高は前期比4.3%増の3378億円
・営業利益は同3.1%増の542億円
・好調要因は成長するアジア地域での供給体制の増強など
・「コストダウンしたことで主にスポーツ分野で伸長した」