H&Mファンデーションが主催するコンペ「第4回グローバル・チェンジ・アワード(Global Change Award)」で日本人として初受賞した慶應義塾大学の研究チーム、シンフラックス(Synflux)は5月14日、H&Mが主催した日本のプレス向け発表会でプレゼンテーションを行い、これまでの研究成果を発表した。
「アルゴリズミック・クチュール」のイメージ動画
シンフラックスが受賞したのは、人工知能の活用によって廃棄物ゼロを目指すパターンメーキング技術「アルゴリズミック・クチュール」で、AIを用いて型紙をテトリスのように四角形と三角形の集合体に最適化するもので、無駄な廃棄物を出さないというものだ。チームは川崎和也ファッションデザイナー兼プロジェクトリード、佐野虎太郎ファッションデザイナー、清水快デザインエンジニア兼プログラマー、藤平祐輔デザインエンジニア兼プログラマーの4人で、年齢は21~28歳と若い。
プレゼンテーションに立った川崎は、開発に至った経緯について「衣類の生産工程で廃棄される繊維は利用される量の約15%。2015年の繊維の世界消費量は約400億平方メートルと言われており、その15%というと約60億平方メートルが廃棄されていることになる。また、パーソナライゼーションやカスタマイゼーションが求められているものの、製造工程の最適化や自動化、デジタル化はまだまだ不十分だ」と指摘する。
川崎はこうも言う。「1868年にオートクチュールが、1959年にプレタポルテが登場した。おそらく2020年はマスカスタマイゼーションが求められるだろう。また、地球温暖化の解決策も求められる。僕たちは、廃棄ゼロのパターンとカッティングと、着る人のサイズとテイストにフィットするマスカスタマイゼーションを可能にする」。
「現在、『アルゴリズミック・クチュール』による生地の廃棄量は約5%だが、これをゼロにもできる」と胸を張る一方、現時点での課題としては縫製箇所が多いことを明かした。今回受賞したドレスのパーツは約70で、とにかくステッチが目に付く。縫製工場泣かせなだけではなく、ファッション性においても改良を求められるところだろう。しかし川崎は、すでに縫製を最少化するアルゴリズムの開発に取り組んでいると言い、加えて「着る人のサイズとテイストにフィットするマスカスタマイゼーションも可能にする」とも語る。
技術のブラッシュアップに取り組みながら「“循環型ファッション”に向けたフローを設計中だ。素材は環境配慮型の人工スエードや他の素材を用いる予定で、日本の大手繊維メーカーとリサイクル素材の開発と応用に取り組んでいる。縫製は、加工職人とのマッチングアプリと連携していく予定だ」という。実用化の目標は2020年だ。