アメリカファッション協議会(COUNCIL OF FASHION DESIGNERS OF AMERICA以下、CFDA)会長に就任するトム・フォード(Tom Ford)とスティーブン・コルブ(Steven Kolb)CFDAプレジデント兼最高経営責任者(CEO)は、ニューヨーク・ファッション・ウイーク(以下、NYFW)の会期を5日間に短縮すると発表した。新たなスケジュールは20年春夏コレクションから適用され、9月6日金曜日の夜から始まり11日水曜日まで開催するという。
「劇的な短縮だ」とトム次期会長。コルブ=プレジデント兼CEOは「5夜5日間で"5-5(ファイブ-ファイブ)”と内輪では呼んでいる。ショースケジュールの短縮はトムが出した最優先条件だった。私は徐々に調整し来年2月に実現することを考えたが、彼の答えは9月だった」と付け加えた。
今回の変更がCFDAで公式に議論されるのは6月1日のトムの会長就任以降になるが、同氏は9月の実施を現実的にするため、それを待たずして調整を進めることを選択した。「CFDAの取締役会は会期短縮に賛成するだろうという自信がある。彼らは賛成する必要性がある」とコルブ=プレジデント兼CEO。「会員についてはこの決定を歓迎する声もあれば、芳しくない反応をするメンバーもいるだろう」と語った。
同議会にはウィメンズおよびメンズ、ジュエリー、アクセサリーのデザイナーなど500人以上の会員が所属しており、取締役会はマイケル・コース(Michael Kors)やトミー・ヒルフィガー(Tommy Hilfiger)、ラルフ・ローレン(Ralph Lauren)ら19人で構成されている。コルブ=プレジデント兼CEOによればプロデューサーやPR会社などブランドのショーに携わる関係者数名とはすでに個別に話す時間を設けており、ほとんどは変更を支持する意向でクライアントとも見解を共有するという。
近年NYFWの会期の長さと複雑なスケジュールには以前より多くの出席者から不満が出ていた。かつて8日間だった会期を近年は7日間に減らして開催しているが、非公式で行われるオフスケジュールのショーが存在し、前回の春夏コレクションではオフスケジュールが祝日に合わせて会期の2日前倒しで始まり、ファッション・ウイーク全体のボリュームが増大した。加えてその中には出席者の大半にとって見逃せない新興ブランドのショーもあったため、NYFWに国外から出席するプレスやリテーラーにとっては大きな負担となっていた。
また、トムが「アメリカのファッションは世界規模で認知度の向上と露出を増やす必要があり、それらがNYFWから始まるべきだ」と強く主張したとし、「NYFW全体が世界と無関係な方向に行くのか、それともスケジュールを変更して再活性化し適応するように努めるのか、選択の時だ」と語った。
短縮スケジュール実現には、時間帯の設定やブランドが敬遠する週末のショー開催も必要になるという。コルブ=プレジデント兼CEOは「変更後のスケジュールを機能させるために朝9時から夜8時までの開催とし、会期中に行われるパーティーや特別なイベント等は考慮しないことにする。たとえショーと並ぶほど重要なことがあっても、あくまで第一優先はショーであり、夜8時はスケジュールの中で最も重要な時間帯となることが望ましい」と述べた。
同様に避けられないのはショーをするブランド数の削減だ。これまで公式スケジュールに則ってショーを開催していたブランドを省くことは容易ではなく、CFDAも慎重に動くことが予想され、メジャーなブランドへの集中によって、いわゆる“コンテンポラリーブランド”が劣勢になる恐れもある。「5日間にするには多くの課題があったが、以前の民主的な姿勢では主要なショーに十分集中できていなかった。NYFWに関わるあらゆる人物や数多の匿名委員会、そして国内外のエディターやバイヤーに今期にふさわしいブランドについて聞き取りを始めている。会期変更の動機は海外メディアの出席率が下がったことであり、出席者には重要だと考えるブランドはどこか、そしてブランドには誰を招待しているかをそれぞれ問う。この2点がブランドを取捨選択する上で重要になってくるだろう」とし、海外メディアからのインプットに比重がいくだろうことも示唆した。
またCFDAは国外出席者の足が遠のいた要因の1つである予算についても対策を打ち始めており、ニューヨーク市のマーケティングおよび観光業務を担うNYC社(NYC&CO.)と文化的側面でのパートナーシップを模索し交渉を進めているという。加えて、メンズ・ファッション・ウイークで実現したように、規模の大きいファッションや異業種のブランドに渡航資金への協力も募るという話も出ているという。