ファッション
連載 「ディオール」メゾンコード研究

「ディオール」メゾンコード研究 第5回  創業地の名前を冠した“トロント モンテーニュ”

 歴史あるブランドはアイコンと呼ばれるアイテムや意匠を持ち、引き継ぐ者はそれを時代に合わせて再解釈・デザインする。アイコン誕生の背景をひもとけば、才能ある作り手たちの頭の中をのぞき、歴史を知ることができる。この連載では1946年創業の「ディオール(DIOR)」が持つ数々のアイコンを一つずつひもといてゆく。奥が深いファッションの旅へようこそ!

 文化はしばしばブランドの世界観と強くつながり、後世のデザイナーたちをインスパイアする。「ディオール」の創業地はパリ8区のモンテーニュ通り30番地である。シャンゼリゼ大通りとセーヌ川をつなぐこのマロニエの並木道は、今でこそ世界屈指の高級ブティック通りとして知られるが、創業者のクリスチャン・ディオール(Christian Dior)がこの地に一目ぼれしたのは戦後間もない1946年のことだ。個人の邸宅であったエレガントな建物を「端正なバランスに従って」改装し、同年12月16日にお披露目。その数週間後にはここで初のファッションショーを開いた。以降、この地からたくさんの物語が生まれている。同じ通りに暮らし、「ディオール」のミューズでもあった女優のマレーネ・ディートリヒ(Marlene Dietrich)も30番地でのショーを何度も訪れている。この話からだけでもムッシュ・ディオールが先見の明で開いたこの場に人々が集まり、流行を生んできたことが目に浮かぶ。「ディオール」の現アーティスティック・ディレクターであるマリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)は、ムッシュの執務室が残るこの地について「人と場所とのつながりが極めて強力になることがあります。メゾンの歴史発祥の地に足を踏み入れてすぐにそれを感じました」と話している。 

 そのつながりに着想を得て、マリア・グラツィアが今春スタートしたのが新ライン“トロント モンテーニュ(30 Montaigne、※注 トロントはフランス語で30の意味)”である。「ディオール」を象徴するアイコニックなアイテムを集めた小さなワードローブで、“バー”ジャケットやトレンチコート、プリーツスカートなど流行に左右されることなく愛されるウエアやアクセサリーがそろう。同ラインのコンセプトに合わせたショルダーバッグは最高級のレザーを用い、型紙を使って裁断し一つ一つのピースを組み立てている。縫製からラベルのディテールに至るまで全て職人による手作業だという。「新ラインではメゾンのアイデンティティーを反映するのと同時に、女性がそれぞれのライフスタイルに即した“マイ ディオール”の魅力を持つきっかけを提供したいと考えました」とマリア・グラツィア。スマートフォン用インナーポケットを備え、留め具はワンタッチで開き、ストラップは長さを調整することでクロスボディースタイルも楽しめるなど、細やかな心配りは現代を力強く生きる女性デザイナーならではといえるだろう。

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

2025年春夏ウィメンズリアルトレンド特集 もっと軽やかに、華やかに【WWDJAPAN BEAUTY付録:2024年下半期ベストコスメ発表】

百貨店、ファッションビルブランド、セレクトショップの2025年春夏の打ち出しが出そろった。ここ数年はベーシック回帰の流れが強かった国内リアルクローズ市場は、海外ランウエイを席巻した「ボーホー×ロマンチック」なムードに呼応し、今季は一気に華やかさを取り戻しそうな気配です。ただ、例年ますます厳しさを増す夏の暑さの中で、商品企画やMDの見直しも急務となっています。

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。