中国最大手EC企業のアリババ(ALIBABA)の2019年3月期決算は、売上高が前期比50.5%増の3768億元(約5兆6520億円)、営業利益は同17.6%減の570億元(約8550億円)、純利益が同30.6%増の802億元(約1兆2030億円)だった。営業利益の減少は主に株式報酬費用の増加や2億5000万ドル(約272億円)の訴訟和解金によるもので、これらの影響を除くと同8.0%増となる。
マギー・ウー(Maggie Wu)最高財務責任者は、「売上高が前期比で約51%成長するなど、18年は素晴らしい年となった。全体のユーザー数やエンゲージメント率も堅調に伸びている」と語った。将来の展望については、「長年にわたって順調に利益を伸ばして健全なキャッシュフローを維持してきたため、主要事業の強化や新規事業への投資が可能となり、当社ならではの高い付加価値を顧客に提供することができた。また投資によって事業を展開する市場を増やし、長期的な成長を確実なものとしている。こうした力強い成長を背景に、20年には売上高が5000億元(約7兆5000億円)に達すると見込んでいる」と自信を見せた。
アリババの主要事業である小売りは、同社の決済システム「アリペイ(ALIPAY)」からの流入率の上昇によって新規顧客が順調に増加。自社ECサイト「タオバオ(TAOBAO)」のアプリをリニューアルし、ミニ動画の共有やライブ配信などを可能にしたこともユーザー増加に一役買っている。なお、中国国内のマーケットプレイスでのアクティブコンシューマー数は18年末時点で6億5400万に達し、モバイルでの月間アクティブユーザーは19年3月末時点で7億2100万だった。アクティブコンシューマーの増加数のうち約70%が発展途上の都市からだったという。流通総額(GMV)は前期比19%増の8530億ドル(約92兆9770億円)となっており、同社が掲げる“20年度末までにGMVで1兆ドル(約109兆円)突破”という目標は十分に射程圏内だ。
関税措置をめぐる米中貿易摩擦の影響について、ジョセフ・ツァイ(Joseph Tsai)=エグゼクティブ・バイス・チェアマンは、「中国経済は輸出中心から国内消費型へと転換しつつあり、輸出減がGDP成長に与える影響については心配していない。中国国内の雇用拡大も継続している。過去5年で製造業の雇用者数が1400万人減少したが、サービス業では7000万人増加した。これによって可処分所得が増え、消費額も伸びている。また中国の中間層は3億人超と米国全体の人口に迫る勢いで、今後10年間でさらに倍増するだろう」と語った。