ナイキ(NIKE)やアディダス(ADIDAS)のアメリカ現地法人など173社のスポーツ用品やシューズメーカーが、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領に対中関税の引き上げ中止を求める公開書簡を発表した。その中で、「フットウエアの対中関税を25%に引き上げることは、米国の消費者や企業、そして米経済全体に壊滅的な影響を与える」とし、スニーカーだけではなくあらゆる種類の靴に影響すると米政府を批判している。
米中の貿易摩擦は、米政府が中国からのほぼ全ての輸入品に25%の関税をかける手続きに入ったことでいっそう激しさを増している。これは米中が合意に至らない限り今年初秋にも発動される予定だが、今回はアパレルやフットウエアも対象となるため、米国内の小売業界や消費者への影響を懸念する声が専門家らの間で高まっていた。
公開書簡には前述の2社に加えて、アンダーアーマー(UNDER ARMOUR)やリーボック インターナショナル(REEBOK INTERNATIONAL)、プーマ(PUMA)、スケッチャーズUSA(SKECHERS USA)、スティーブ マデン(STEVE MADDEN)、アグ(UGG)などのほか、スニーカー小売り大手のフットロッカー(FOOT LOCKER)も名を連ねている。アパレルも対象となっているものの、フットウエアの輸入はそのおよそ4分の3が中国からのものであるため、影響はさらに大きい。業界アナリストによれば、中でもスケッチャーズとアンダーアーマー、スティーブ マデンへの影響が懸念されるという。
トランプ米大統領は、関税引き上げ分は中国の負担になると繰り返し主張してきたが、公開書簡は「年間30億ドル(約3300億円)の関税に直面している業界として断言できる。輸入靴にかかる関税などのコスト増は、直接消費者に影響を及ぼすだろう」とこれに反論している。
またトランプ米大統領は5月14日、「米国内で生産すれば関税はかからない。中国ではなく、関税がかからない国から買うこともできる。多くの企業が中国から離脱している」とツイッターに投稿したが、事はそう簡単ではないというのが多くの専門家らの意見だ。公開書簡でも、「当業界でもしばらく前から中国への依存度を下げるべく努力しているが、フットウエアは資本集約型の産業であり、調達先などを何年も前から計画した上で製造する。工場をそれほど簡単に動かすことなどできない」と訴えている。
米国の靴業界団体のフットウエア・ディストリビューターズ・アンド・リテーラーズ・オブ・アメリカ(Footwear Distributors and Retailers of America)は、関税引き上げによって消費者の負担額は年間70億ドル(約7700億円)増加するとの試算を示した。