「トッズ(TOD’S)」は5月23日、韓国・ソウルの東大門デザインプラザで新作シューズ“シューカー #03”の発表を兼ねたイベントを行なった。会場には俳優の大谷亮平や韓国のダンスボーカルユニット東方神起のユンホ(Yunho)らセレブリティーなどアジアから大勢のゲストが訪れ、シューズをデザインしたソク・ヨンベ(Seok Yong Bae)やウンベルト・マッキ・ディ・チェッレーレ(Umberto Macchi di Cellere)「トッズ」CEOが出迎えた。
会場となった東大門デザインプラザは建築家のザハ・ハディド(Zaha Hadid)が手掛けた巨大建造物で、独特な流線型が近未来を思わせる。場内もそれとリンクするような空間演出で、スクリーン仕様の什器や壁から流れるムービーが来場者をフューチャリスティックなムードへと誘う。フロアは“シューカー”の歴代3モデルを展示するスペースと、ムービーを上映するスペースの2つで構成した。
新作のシューズは、2018年に立ち上げたプロジェクト“トッズ ノーコード(TOD’S NO CODE以下、ノーコード)”から誕生したプロダクトだ。“ノーコード”は既存のルールにとらわれず、ブランドが培ったクラフツマンシップと最先端のテクノロジーを融合したモノ作りを、イタリア生産にこだわって行う。“シューカー #03”も一見するとハイテクなデザインだが、細かい工程は一つ一つ手作りされている。展示スペースに設けたブースでは、イタリアの工房で働く職人が素材のカッティングから仕上げまでのデモンストレーションを披露した。
「トッズ」はブランド立ち上げから40年を迎えた。18年には幹部陣の世代交代を進めたり、限定コレクションやコラボレーションアイテムなどを1年通して発売したりするなど、変革を進めている。その象徴的なプロジェクトである“ノーコード”のデザインを託されたのが、韓国人デザイナーのヨンベだ。同氏の生まれ故郷である韓国で、デザイナー就任のきっかけや新作“シューカー”についてを聞いた。
「新作の着想源はスーパーカー」
WWD:イベントを韓国で開催した目的は?
ソク・ヨンベ(以下、ヨンベ):ソウルは国際的かつ現代的な主要都市のひとつで、今回のイベントを開催するにあたって完璧な“ノーコード”の都市だった。
WWD:デザインを手掛けることになった経緯は?
ヨンベ:2018年にトッズ・グループのディエゴ・デッラ・ヴァッレ(Diego Della Valle)会長兼CEOとのミーティングで、彼から新しいカテゴリーについてのアイデアと“ノーコード”の哲学について説明を受けた。そして私を“シューカー”のデザイナーとして選んでくれた。私自身、アジアで生まれてヨーロッパで生活しており、複数のスタイルや異なる視点を持ち合わせている“ノーコード”な人間だ。だからとても誇りに感じると同時に、プロジェクトの成功に寄与できると思った。
WWD:“シューカー”シリーズの特徴は?
ヨンベ:シューズとスニーカーを融合した“シューカー”は、クラシックなスポーツシューズに高いクオリティーを盛り込むことを意識している。そして上質素材を用いて、イタリア製であることが重要だ。そして朝のランニングにも適しているし夜のフォーマルなパーティーにも履くことができるなど、1日の全てのシーンに対応する。
WWD:新作“シューカー #03”のデザインイメージは?
ヨンベ:新作はイタリア人デザイナーのマルチェロ・ガンディーニ(Marcello Gandini)が手掛けたスーパーカーや、ラリーカーの名車“ランチア・ストラトス・ゼロ”などの自動車からインスピレーションを得た。「トッズ」のクラシックなモデルをベースに、形をシャープにして美しいプロポーションに仕上げている。
WWD:カーデザインに引かれる理由は?
ヨンベ:自動車産業に携わる人たちはとても先進的で、新しい素材や技術を使って今までにないモノ作りに挑み続けているからだ。私もあらゆるデザインの仕事をする際に彼らと同じ気風を取り入れて、常にユニークなデザインを意識している。
WWD:スニーカー市場は激戦区だが、“シューカー”が成功するために必要なことは?
ヨンベ:スニーカーの開発には複雑なプロセスがある。ソールは一定の性能を満たし、アッパーは多くの異なるパーツや素材を使いながらも美しさが必要だ。だから私たちは数多くの試作品を製作し、技術面や美しい形状に決して妥協しない。トッズには素晴らしい工房があり、アトリエで働く人々の高いプロ意識や情熱もある。成功にはこの組織力が欠かせない。彼らの高いクラフツマンシップがあるからこそ、私は革新的なデザインやテクノロジーに挑むことができる。
WWD:“ノーコード”の始動から約1年経つが、今後の展望は?
ヨンベ:現状の成果はとてもいいので、新しいことに挑戦したい。すでに“ノーコード”プロジェクトは次なる展開に向けて動き始めている。もう間もなく発表になることがあり、きっと驚くはずだ。もちろん、内容はまだ秘密だけれど。