カーデザイナーが参画する高級時計ブランド「フェノメン(PHENOMEN)」を輸入・販売するオールージュの下山征人代表はこのほど、同ブランドがサポートし自身もドライバーを務めるレーシングチーム、アウディ チーム マーズで「ピレリスーパー耐久2019」ST-TCRクラスの開幕戦で優勝した。元F3ドライバーの下山代表は、10数年ぶりのレースの世界へのカムバックだ。
また「フェノメン」はファースト・コレクション“アクシオム”の購入者にアウディ チーム マーズの実機でサーキットを走れことができる体験プログラムを用意した。下山代表に、レースの世界に復帰した理由、体験プログラムの狙いを聞いた。
WWD:なぜ今、レーサーに復帰したのか?
下山征人オールージュ代表(以下、下山代表):カーレーサー時代の後輩が立ち上げたチーム、アウディ チーム マーズに協賛したのがきっかけ。行ったら乗りたくなっちゃうので(笑)、当初は応援のための現地入りなどはせず、「勝ちました」とか「リタイアでした……」なんてメールをもらうくらいでした。今は経営者であり、夫であり、父親なので、打ち込みすぎて何か起こってしまうのも怖かった。なのにシーズンが終わった後、「パーツをアップデートするから」みたいな理由で誘われて、車に乗ってしまったんです。最初は、おそるおそる。でも30分くらいハンドルを握ったら「なんかイケるかも?」って思えて、2回目の試走ではポールポジションと同じくらいのラップタイムを叩き出しちゃったんです(笑)。
WWD:それでいきなり開幕戦で優勝しちゃった(笑)。
下山代表:現役の時から「何あったら死ぬ」と覚悟していたし、特に雨の日はいろんなコトを考えていた。けれど久しぶりに車に乗ったら、そんなコト関係なくなっちゃった(笑)。とはいえ鈴鹿の初戦は、決勝までにハンドルを握った時間なんてせいぜい1時間半くらい。6周くらいしか試走していない。僕の中では、他の会社の社長が週末にゴルフするのと大差ないんです。
WWD:レース界への復帰は、「フェノメン」の時計を買ったらレーシングカーを運転できるプロモーションの“きっかけ”になった?
下山代表:お客さまは2時間の講習を受けるだけ。免許証を持っている必要もありません。カーレースの世界はどこか排他的で、ゴーカートのように楽しむ世界とかけ離れすぎている。12年ぶりにハンドルを握り、「こんなカンタンに運転できるんだ」って実感したから、サービスに組み込んだんです。車と時計の世界は一見近くて、いろんなブランドがコラボしたりキャンペーンに取り組んだりしているけれど、両方の世界を知っている僕から見ればまだまだ遠い。そして、どちらも新しい人を取り込めていない。だったら「両方をつないで、新しいコミュニティーを作ってしまえば」って思ったんです。
WWD:高級時計の世界は、ブランドとユーザー、ユーザーとアンバサダー、ユーザーとユーザーの絆が大事だ。
下山代表:オールージュは「RJ」や「HYT」などニッチな時計を取り扱っています。ニッチなコミュニティーを広げる難しさは、ここ数年、ずっと感じてきました。だったら、時計ファンがモータースポーツにハマって、車ファンが時計を好きになってくれたら。オトナになっちゃうと、こんな経験、なかなかできないでしょう?