CtoC市場は個人の役割を“受け手”から“提供する側”に変え、「他人が着た服はちょっと……」といった価値観すらも変えて、中核的な市場の1つにまでなりました。コンテンツの世界でも「一億総クリエイター時代」と言われるようになっていますが、ファッションのクリエーションや流通でも、CtoCによって同様のことが起きています。誰にでも自分の作品を簡単に世に送り出して評価を受けるチャンスがありますし、多様な作品に触れ、手に入れることもできます。
しかし同時に、誰でも簡単に権利侵害者になれてしまうし、侵害品をつかまされるリスクも抱えてしまう。企業の取引なら一般に流通しなかったはずの商品も出回るようになっていますから、知的財産権などを駆使して流通をコントロールする術を磨くことも求められるようになりました。
プラットフォーム、権利者、そして個人それぞれが、これまでになかった法律問題に触れ、相談が増えているのも確かです。それでもここまでCtoCが定着したのは、プラットフォームをはじめ、市場としての信用を確立する各社の努力によるところが大きかったのだと思います。
関真也/TMI総合法律事務所弁護士:1984年生まれ。2008年TMI 総合法律事務所に入所。16年にニューヨーク州弁護士資格を取得。KADOKAWA 経営企画局知財法務部担当部長(16年7月~17年12月)。東海大学総合社会科学研究所研究員や日本知財学会事務局も務め、著書に「ファッションロー」(勁草書房)など。趣味はマンガ・アニメ・映画、野球。「WWDジャパン」で毎月第1週に連載している「ファッションロー相談所」にも度々登場する
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