アメリカのファッションブランド「ブルックス ブラザーズ(BROOKS BROTHERS)」は先ごろ日本上陸40周年を祝して、日本初となるランウエイショーを行った。“野球”をテーマとして明治神宮外苑 室内球技場にスタジアム風の会場を特設し、約500人を招いて2019-20年秋冬コレクションのメンズとウィメンズ計61ルックを披露した。1818年にニューヨークで創業した「ブルックス ブラザーズ」の長い歴史の中で、ショーを行ったのは3回目。1979年にオープンした東京・青山店はアメリカ国外初の旗艦店であり、ビジネス面でもアメリカに次ぐ売り上げ規模を誇る重要市場として日本は特別な存在だ。来日したクラウディオ・デル・ヴェッキオ(Claudio del Vecchio)ブルックス ブラザーズ会長兼最高経営責任者(CEO)に日本への思いを聞いた。
WWD:来日は何度目?
クラウディオ・デル・ヴェッキオ=ブルックス ブラザーズ会長兼CEO(以下、デル・ヴェッキオ):数えきれない。少なくとも20年以上、毎年1回は来日している。日本は常に何か新しいものを生み出すインスピレーション源だ。新しいトレンドがコンパクトに詰まっている伊勢丹新宿本店メンズ館をよく訪れている。今回は大相撲を観戦した。
WWD:ショーは“野球”がテーマだった。「ブルックス ブラザーズ」は、野球日本代表「侍ジャパン」のオフィシャルスーツパートナーでもある。
デル・ヴェッキオ:野球はアメリカでも日本でも象徴的なスポーツであり、このショーで日米間のつながりを強調したかった。私はたまに観戦に行くが、「ニューヨーク・メッツ」のファンだ。
WWD:日本のビジネスの推移は?
デル・ヴェッキオ:79年に米国外で初めて日本に進出して以来、現在の販売先は40カ国以上に広がっている。現在、全体の売上高は約11億ドル(約1200億円)で、アメリカは横ばいながら、日本のほか中国、インド、香港などは2ケタ成長している。
WWD:日本のビジネスが好調な理由は?
デル・ヴェッキオ:ニューヨーク本社とジャパン社との間に密接な協力関係が築けていることだ。本社のチームは毎年1回来日し、ジャパン社のチームはニューヨークに年4回来て、ビジネスのコミュニケーションを継続しており、この強いパートナーシップが商品に反映されている。日本人の装いは変化しており、ショーでも表現した通り、スーツよりもカジュアルウエアに重きを置いた。200年以上にわたって蓄積してきた歴史やノウハウに加え、時代の変化に対する適応力こそ「ブルックス ブラザーズ」の強みだといえる。
WWD:ウィメンズウエアはザック・ポーゼン(Zac Posen)がクリエイティブ・ディレクターを務めているが、メンズウエアにもクリエイティブ・ディレクターを起用する考えは?
デル・ヴェッキオ:「ブルックス ブラザーズ」全体の売上高の約80%がメンズウエアで、ビジネスは好調に推移している。メンズのデザインチームは強力であり、クリエイティブ・ディレクターを起用する必要性は感じていない。ザック・ポーゼンのデザインには満足している。ウィメンズウエアにもっと新しいスタイルが広がれば、さらに成長できるポテンシャルがある。将来的にはメンズウエアとウィメンズウエアのビジネスを同等にしたい。
WWD:世界最大の眼鏡企業ルックスオティカ(LUXOTTICA)の創業者である父親から学んだ経営哲学は?
デル・ヴェッキオ:10代のころからイタリアの工場で父の背中を見て育ち、25歳のときにアメリカ法人の責任者となり、40歳までルックスオティカで働いた。その間に学んだことは多いと思う。
WWD:「ブルックス ブラザーズ」が今力を入れていることは?
デル・ヴェッキオ:よりよいサービスにつながるシステム構築に投資しており、オンラインビジネスを強化している。今後も日本の消費者を驚かすことを考えたい。