ファッション

「ミラノサローネ」で注目デサイナーが手掛けた菓子店が登場 「MSGM」のマッシモ・ジョルジェッティをパートナーに選んだわけ

 「WWDジャパン」5月27日号付録のミラノサローネ特集の表紙は、ミラネーゼにおなじみのパスティッチェリア(菓子店)だ。パスティッチェリアにはカフェが併設されており、カプチーノとペストリーなどが楽しめる。表紙に写っている女性は「フェンディ(FENDI)」などとのコラボレーションで知られる注目の若手女性デザイナーのクリスティーナ・チェレスティーノ(Christina Celestino)だ。彼女は「ミラノサローネ2019(MILANO SALONE 2019)」で、ミラノに敬意を表して老舗の「パスティッチェリア・クッキ(PASTICCERIA CUCCHI以下、クッキ)」の外装や内装などを期間限定でデザイン。ルイージ・クッキ(Luigi Cucchi)と妻のヴィットリーナ(Vittorina)が1963年に創業して以来、地元で愛されて続けている「クッキ」を彼女らしいカラフルなカラーと象嵌細工を施して都会のオアシスに生まれ変わらせた。チェレスティーノは、「ミラノサローネ2018」でも「トラム・コラーロ(TRAM CORALLO)」プロジェクトを手掛け、ラウンジのようなトラムをミラノ市内に走らせた。このように毎年、地元の住民にデザインを通してサプライズを届けるチェレスティーノにプロジェクトや「ミラノサローネ」について話を聞いた。

WWD:なぜこのプロジェクトをスタートしたか?パスティッチェリアに着目した理由は?

クリスティーナ・チェレスティーノ(以下、チェレスティーノ):ミラノの歴史的かつアイコニックな場所に魅了されているから。昨年「トラム・コラーロ」を、今年は「クッキ」をテーマにした「カフェ・コンチェルト・クッキ(CAFFE CONCERTO CUCCHI)」プロジェクトを手掛け、ミラノの象徴的な場所の再解釈を続けている。パスティッチェリアに並んでいるお菓子の洗練された美しさにはすごく共感を覚える。特に独特な色使いとか、お菓子の仕上げに施されるデコレーションとか加工とかね。ミラネーゼは、市内の歴史ある有名な「コヴァ(COVA)」や「マルケージ(MARCHESI)」などと異なり、ずっと一族経営で創業当時から変わっていない「クッキ」にとても愛着を持っている。ある意味、新鮮味が必要だと思ったの。

WWD:このプロジェクトのコンセプトは?

チェレスティーノ:「カフェ・コンチェルト・クッキ」に対する私のビジョンは、未来的な視野を持って過去と現在のクリエイティブな交流を生み出すこと。このプロジェクトは、歴史的なカフェの内装とお菓子の美的な世界、そして私のカラフルなボキャブラリーを自由に折衷させたもの。

WWD:このプロジェクトで最も興味深かった点と、難しかった点は?

チェレスティーノ:最も興味深かったのは、世界中で最高のメーカーやプロジェクトに熱心なブランド、そして刺激的なブランドの多くと協業する機会に恵まれたということ。このプロジェクト自体が、ユニークで首尾一貫したインテリアを完成させるために異なる色や素材をコーディネートするものだった。一番大変だったのが、合理的に調整できたとしても大きな変化が必要であることをオーナーに理解してもらうことだった。

WWD:「MSGM」のマッシモ・ジョルジェッティ(Massimo Giorgetti)もこのプロジェクトに参加しているが、彼を起用した理由は?協業した感想は?

チェレスティーノ:マッシモにこのプロジェクトを話した時、すぐに意気投合した。私たちはもともとミラノ出身ではないけど、ミラノに対して強い愛情を持っていて、ミラノとミラノを象徴するさまざまな場所、その一つである「クッキ」へのオマージュを共有している。

マッシモがデザインしたカフェのスタッフのユニホームは大好きよ。プリントしたポプリンのシャツにシルクのボウタイは、「エムエスジーエム」のスタイルを再解釈していて私のクリエイティビティーと完璧に調和している。「MSGM」のパターンやグラフィックの使い方はコンテンポラリーで新鮮、とても気に入っているわ。このプロジェクトがスタートした時からモチーフにしていたシルクのカーテンや大理石の象嵌などに見られるストライプに「MSGM」は手の込んだアレンジを加えてくれた。

WWD:多くのブランドやメーカーと協業しているが、どのように彼らを選んだか?彼らとプロジェクトで関わった感想と、このプロジェクトをまとめた感想は?

チェレスティーノ:各パートナーは、象嵌の繊細なバランスと魅力的な組み合わせ、マルチカラーの効果といった「カフェ・コンチェルト・クッキ」に対する私のビジョンを実現するために必要だった。例えば、“ミラージュ”スクリーンはパリの麦わらマルケトリーアーティストのリゾン・ドゥ・コーン(Lison de Caunes)によるもので、色付けした麦わらを幾層にも重ねているし、ミラノの壁用テキスタイルブランド「ミシャ(MISHA)」のシルクの壁素材“オアシ”はメタリックな表面に刺しゅうが施されている。外の“カンディティ”テーブルの天板は大理石の「ブードリ(BUDRI)」がマルチカラーの大理石の象嵌で仕上げている。このように多くのパートナーが存在するプロジェクトでは、全てのクリエイションが同時に進行し、それぞれの存在を適切に高めるよう調整することね。

WWD:カフェに来る人にどのように感じてほしいか?

チェレスティーノ:ペストリーの世界の色味や技術にインスピレーションを得た都会のオアシスをイメージした。予期しない色や素材の組み合わせで作った生き生きとした空間に伝統を反映させたつもりよ。カフェに来る人には、私のイメージと同様にそれを感じてもらえたらうれしい。

WWD:「ミラノサローネ」の醍醐味は?

チェレスティーノ:全てよ。素晴らしいプロジェクトが満載で、世界中から興味深い人が集まる場だから。私にとって「ミラノサローネ」とは毎年書かれるエッセーのようなもの。その時まで積み重ねてきた作品の発表が終わったら、また新しい仕事に取り掛かる。他のクリエイターの作品を見て学ぶことも多いし、クリエイションのひらめきの場よ。年々スケールが大きくなり、興味を持つ人も増えている。民主的なデザインに皆が関心を持っているのは明らかだし、またそれには人を教育する力があるということね。

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