「ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」は5月24日、東京で2020年プレ・スプリング・コレクションを発表した。それに合わせ12年ぶりにジョルジオ・アルマーニ(Giorgio Armani)が来日し、ウィメンズ・メンズ合計で120体以上のルックを披露。スーツやジャケットスタイル、スポーティーなルックも充実した。そのコレクションを支える一つであるメイクアップでは、リンダ・カンテロ(Linda Cantello)=ジョルジオ アルマーニ ビューティ インターナショナル メイクアップ アーティストが来日し、バックステージのメイクアップを担当した。当日のメイクアップルックのコンセプトとともに、バックステージからインスパイアされた人気製品「リップ マエストロ」の誕生秘話などについて語った。
プレ・スプリング・コレクションのコンセプトは、自身のカルチャーや価値を尊敬し、大切にする“insula”。これに合わせてリンダ=メイクアップアーティストは2つのルックを手掛けた。「いつもショーのメイクアップをするとき、ファッションのチームから具体的なコンセプトを教えてもらわず、洋服の写真やインスピレーションが送られてくるの。今回のコレクションは鎖国時代もあった日本が、自分たちの文化を唯一無二なものと捉え、大切にしていることだったので、洋服も色やシルエットなどミスターアルマーニが昔から貫いてきた自分だけのスタイルを強調していた。メイクアップも、まさに彼が昔から大切にしてきたものを象徴しているのよ」。
アジア人モデルには、肌をマットに仕上げつつも厚塗りにならないように濃淡をつけて仕上げた。リンダ=メイクアップアーティストは「ミスターアルマーニが常に言うのは、 『素晴らしいメイクアップは、見たときにメイクが目立つのではなく、つけている女性が目立つこと』。そのためには肌や骨格など、生まれ持った個性の美しさを引き出す必要がある。今回もベースがとても大事だった。肌を十分潤してから、モデルのスキントーンにあった『パワー ファブリック ファンデーション』をつけたが、肌を覆い隠すマスクのようにならないためにカバーするところとしないところのメリハリをつけながらで塗った」と解説する。
さらに目頭に影を入れたメイクアップが特徴で、「アジア人は欧米人に比べて鼻筋が低く、目頭に黒のアイシャドウで影を入れることによって奥行きを作ることが可能だ。目を強調すべくストレートなアイラインを描き、スモーキーなアイシャドウでぼかした。90人のモデルのメイクを仕上げなければならなかったので、とにかく簡単に、だけどエレガントに仕上がるルックにしたの」。リップはリキッドルージュ「リップ マエストロ」のヌードカラーを口元と頬に薄くつけ、統一感を出した。なお欧米人モデルには目元に影を入れず、他はアジア人モデルと同じメイクを手がけた。
またリンダ=メイクアップアーティストは、今回のショーにも使用され、バックステージから生まれた「リップ マエストロ」についても語った。「リップ マエストロ」はベルベットのような柔らかなフォーミュラで、艶のあるマットという画期的なテクスチャーをかなえるリップだ。「ファッションメゾンから派生したブランドとして、バックステージからアイデアが生まれる製品が多い。『リップ マエストロ』もまさにその製品の一つだ。バックステージではとにかく時間がなく、かつ効率よく全てのモデルに統一したルックを施さなければならない。ショーのために新しいカラーやテクスチャーを作ることが結構あるけど、あるときにファンデーション『フェイス ファブリック』のベースに、ピグメントを混ぜて唇にのせてみたら、今までにない素晴らしいテクスチャーのリップが出来上がったの。とっさに思いついたことだったけど、ずっと研究所にこもってたら絶対に生まれなかったアイデアよ」と話す。以来、リンダ=メイクアップアーティストはバックステージにベースとピグメントをスーツケースいっぱいに詰めて持っていくという。
「リキッドのアイシャドウ『アイ ティント』も、ハイライター『フルイド シアー』にピグメントを混ぜて生まれた製品よ。通常化粧品のラボではファンデーション専門の開発チーム、アイメイク開発チームが別々で製品を開発していることが多いけど、バックステージでこのようなアイデアが生まれてからは、全てのチームがお互いに協力しあってさまざまな製品を作るようになったの。ミスターアルマーニの揺るがない美への追求はもちろん、こういった従来の概念にとらわれないメイクアップへのアプローチが『ジョルジオ アルマーニ ビューティ』の強みで、長年愛される理由だと思うわ」。