ロンドンの名門セント・マーチン美術大学(Central Saint Martins BA)が毎年行っているファッションショーが5月30日に開催され、プリント、ニットウエア、ウィメンズ、メンズなど各学科から43人の学生が参加した。多数の著名デザイナーを輩出した同校のコレクションは注目度が高く、ファッション関係者も多く訪れるが、今年の優勝者はその斬新な作品でひときわ注目を集めた。
大賞にあたるロレアル・プロフェッショナル・ヤング・タレント賞(L’Oreal Professionnel Young Talent Award)を受賞したノルウェー出身のフレドリック・シャエランドセン(Fredrik Tjaerandsen)のショーでは、巨大な風船を上半身にかぶったような格好のモデルたちが登場した。ランウエイの途中で色とりどりの風船から空気が抜けていき、やがてラバー素材のドレスに変身するというマジカルな演出に、会場からは盛大な拍手と歓声が湧き起こった。
大胆なショーはインターネット上でもすぐに評判となり、「メットガラ(MET GALA)」などのイベントに派手な衣装で登場することで知られる米俳優ビリー・ポーター(Billy Porter)も、インスタグラムに投稿されたショーの動画に「うわーーー!!!」と驚きのコメントを寄せた。
シャエランドセンは、「人間の自己認識が明確になる、その曖昧な瞬間を表現したかった。その瞬間を再現して経験するための実験的な方法を開発するべく努力を重ねた。使用されているゴム素材はスリランカ産で、地元のゴム栽培農家から仕入れている会社のものだ。ドレスには空気圧システムが付けられていて、着用者が自分で風船をしぼませてその中から“脱出”できるようになっている。風船と中のドレスは一つのピースで作られており、つなぎ目がなるべく少なくなるようにデザインした」と語った。なお、シャエランドセンは「バレンシアガ(BALENCIAGA)」や「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」「クレイグ グリーン(CRAIG GREEN)」「ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)」で働いた経歴を持つ。
準優勝には、ボタンが並ぶウィメンズのジャケットや形状記憶素材を使用したドレスなどを発表した、スイス出身のポーリーン・ドゥ・ブロネー(Pauline De Blonay)が輝いた。また、すぐにでもパリのメゾンで通用するような高い技術力でメンズウエアをデザインした日本人のフミカ・オオシマ(Fumika Oshima)と、1980年代にインスパイアされた肩を強調したブラウスやスカートなどが印象的だったアゼルバイジャン出身のフィダン・ノブルゾバ(Fidan Novruzova)が同率3位に入賞した。
今年の審査員は、写真家のマイケル・コスティフ(Michael Costiff)、デザイナーのグレース・ウエールズ・ボナー(Grace Wales Bonner)とリチャード・マローン(Richard Malone)、英「ヴォーグ(VOGUE)」誌の編集者オリビア・シンガー(Olivia Singer)のほか、セント・マーチン美術大学の教授陣やロレアル プロフェッショナルの代表者らが務めた。