2018-19年秋冬シーズンからスタートした東京発のユニセックスブランド「ヨーク(YOKE)」が急成長中だ。10型程度のアイテムでデビューした当時は数店舗だった卸先も、3シーズン目となる東京・神宮前のキャロル(carol)や中目黒のソウ(SOU)、代々木上原のジョン(JHON)などの都内の個店や地方のセレクトショップを中心に35店舗。アイテムもプロパー消化率100%で売り切っている。
「ヨーク」はOEMメーカーやドメスティックブランドなどで経験を積んだ寺田典夫デザイナーがスタート。“つなぐ”、“絆”、“洋服の切り替え布”などを表すブランド名には「作り手から消費者まで、すべてをつなぐ」という意味を込めた。ニットで作ったフリースや、つなぎ目にニットテープを使用したスエットなど、ニット素材を主軸に、一見スタンダードだがディテールで変化を付けたアイテムをそろえる。「『オーラリー(AURALEE)』をはじめ、他ブランドが既にベーシックウエアで地位を確立している中で、オリジナリティーを出すための挑戦としてニットを選んだ。ニットで作ったコートなどを提案したファーストシーズンから編み地をメインとしたアイテムを制作している」と寺田デザイナーは語る。
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デビュー当時は寺田デザイナーの知人らを通じて徐々に人気を拡大してきた同ブランドだが、その後一変して若者から注目を浴びることになる。そのきっかけとなったのが、ファッションユーチューバー、高島涼の存在だ。チャンネル登録者数が4万人を超える高島がユーチューブ上でブランドを紹介したところ、20代前後の若年層を中心に人気が急騰。一着でコート、ブルゾン、巻きスカートと3通りの着こなしが可能で、男女でシェアができるデザインの“シェアコート”は販売後に即完売。さらに店頭に並ぶ前に高値で転売されるほどの人気商品となり、ブランドの売り上げの軸になった。「高島さんが動画で紹介してくれていなかったら、ここまで急な成長はなかった。正直想定外の出来事で、自分がついていけてない状態だ(笑)」と寺田デザイナーもブランドの急速な拡大に驚く。
飛躍的な成長を遂げはしたが、寺田デザイナーは慎重だ。「ユーチューブをきっかけに若い世代からの注目が一気に増したことは現代らしいなと思うが、ブランドとしての実力も重要。今後は自分と同世代である30代の方々を中心にブランドを拡大していきたい。海外も視野に入れつつ、自力でゆっくりと取引先店舗を増やしていくつもりだ」。さらに今後はウィメンズ商品の拡充にも力を入れるという。「現在、売り上げの圧倒的多数を男性客が占めているが、今後は色味などを女性よりにしたものや、ワンピースなどのアイテムを増やしていく。今後も引き続き素材や品質にこだわったモノづくりを続けていき、時代が変わっても残ってくれるような固定ファンを増やしていかなければならない」。