ユニリーバ(UNILEVER)は日本の芸者の美容法を着想源とする米国発ラグジュアリースキンケアブランド「タッチャ(TATCHA)」を買収した。買収額は明らかになっていないが、業界筋によるとその額は5億ドル(約540億円)に上ると見ている。
「タチャ」は創業者のヴィクトリア・ツァイ(Victoria Tsai)が10年前に京都を訪れたときに芸者の美容法を取り入れたところ皮膚炎が治ったことがきっかけで立ち上げた。婚約指輪を売ったお金で始めた「タチャ」はあぶらとり紙からスタートし、肌を傷めることなく、優しくケアすることを重視した製品作りにこだわっている。製品開発には時間をかけることが多く、化粧水「ザ エッセンス」は製品化まで7年かかったという。また、製品は日本とアメリカの研究者と共に開発している。現在ベストセラーは化粧下地「ザ シルク キャンバス フィルター フィニッシュ プロテクティブ プライマー」(52ドル、約5616円)やクリーム「ザ ウオーター クリーム」(68ドル、約7344円)、ミスト状化粧水「デューイ スキン ミスト」(48ドル、約5184円)などで、フォーミュラはクルエルティーフリー(動物実験をしていない)でミネラルオイルや人工香料、パラベンなどを使用していない。セフォラ(SEPHORA)やオーストラリアのメッカ(MECCA)などで販売しているほか、日本では「フォーシーズンズホテル京都」のスパで取り扱っている。
ユニリーバ傘下となり「タチャ」は2カ所目となる本社を東京に新設する予定だ。「タチャ」は近年急成長しており、2017年に投資企業のカスタネア パートナーズ(CASTANEA PARTNERS)から出資を受けている。19年の売り上げは1億ドル(約108億円)を達成すると見られる。ツァイ創業者は「私たちの製品の材料は食品由来のものが多く、美容業界であまり使われていないものもある。ユニリーバは食品やフードサイエンスのノウハウを持っているので、協業できるのがうれしい」とコメントする。
ユニリーバは近年プレステージのスキンケアに力を入れており、ここ数年で「ミュラド(MURAD)」「ダーマロジカ(DERMALOGICA)」「ケイト サマビル(KATE SOMERVILLE)」「レン(REN)」を買収している。ヴァシリキ・ペトルー(Vasiliki Petrou)=ユニリーバ プレステージ エグゼクティブ バイス プレジデントは「『タチャ』はポテンシャルのあるスキンケアブランドであるだけでなく、女性が率いる会社ということにも魅力を感じた。私のミッションの一つに、女性起業家をサポートすることがある。苦労している女性起業家が多いので、女性が十分に活躍できる社会にしたい」と語る。