業績不振が続いているカナダの大手小売りハドソンズ・ベイ・カンパニー(HUDSON’S BAY COMPANY以下、HBC)のリチャード・ベーカー(Richard Baker)=エグゼクティブ・チェアマン兼ガバナーは6月10日、同社の発行済み株式をほかの複数の主要株主と共に買い取る形での上場廃止案を取締役会に提出した。
ベーカー=エグゼクティブ・チェアマン兼ガバナーは、「HBCの業績回復には時間がかかることが想定されるので、短期間での成果やリターンが期待されない環境でじっくりと取り組んだほうがいいと考えた」と語った。
上場廃止案では1株当たり9.45カナダドル(約765円)と、7日の終値に48%のプレミアムを付けた価格による全額キャッシュでの買い取りを提示。この取引に基づいた同社の時価総額はおよそ17億カナダドル(約1377億円)となる。市場はこれを好感し、株価は前日終値比で42.3%高の9.07カナダドル(約734円)をつけた。
なお、ほかの主要株主は米投資会社ローヌ・キャピタル(RHONE CAPITAL)、米不動産開発会社ウィーワーク プロパティー アドバイザーズ(WEWORK PROPERTY ADVISORS)、欧州の投資会社ハノーバー・インベストメンツ・ルクセンブルク(HANOVER INVESTMENTS LUXEMBOURG)、米投資会社エイブラムス・キャピタル・マネジメント(ABRAMS CAPITAL MANAGEMENT)などで、ベーカー=エグゼクティブ・チェアマン兼ガバナーの持ち分と合わせておよそ57%の株式を保有している。
HBCの2019年1月期決算は売上高が前期比1.2%減の93億7600カナダドル(約7594億円)、純損失は前期の5億8100万カナダドル(約470億円)から5億4200万カナダドル(約439億円)にやや縮小したものの、業績回復とは言い難い。同社は再生策の一環として傘下の百貨店ロード&テイラー(LORD & TAYLOR)のニューヨーク五番街旗艦店のビルを17年10月に売却したが、同店は18年末に閉店した。また同じく傘下のサックス・フィフス・アベニュー(SAKS FIFTH AVENUE)は好調であるものの、サックス・オフ・フィフス(SAKS OFF 5TH)やロード&テイラー(LORD & TAYLOR)などの業績低迷が続いている。