袖に量感や飾りを持たせるシルエットは“袖コンシャス”“盛り袖”“ボリューム袖”“バルーンスリーブ”などと呼び名を変えながら、ここ数年にわたって人気が続いています。袖のみから肩にまで範囲が広がる形で、“パワーショルダー”として2019-20年秋冬の注目トレンドになりそうな予感もあります。来秋冬の主役と見込まれているクラシックでエレガントな装いとも好相性なので、さらに勢いが加速しそう。そこで、今回はボリュームスリーブを生かしたおすすめの着こなしをピックアップしてみました。
薄着になる夏にもボリューム袖は華やぎを添えてくれます。気になる二の腕もふんわりカバー。しかも、汗ばむ日でも肌に張り付かないから、さわやかに過ごせます。見栄えと着心地の両面でメリットが多いので、世代を超えて多くの女性から支持されています。
透けるシアー生地を使えば、サマールックにも生かしやすくなります。たとえば、「ビリティス(BILITIS)」の2019年春夏コレクションには、アンティーク調のシアーなボリュームスリーブのブラウスが登場。クラシカルで優雅なブラウスに、ハイウエストのデニムパンツを合わせて、ロマンチックとカジュアルをミックスしました。内側に着たキャミソールがほんのり透けて、着痩せ効果も生まれています。
◆パンツルックをフェミニンに格上げ
あっさりした表情になりやすいパンツルックも、袖にボリュームがあれば着姿に起伏が生まれます。「ソロヴ(SOLOV)」のラベンダー色のショート丈の羽織り物は、ふっくらした袖がヴィクトリアン調ムードを醸し出します。肩周りのギャザー寄せも効いています。パンツと色味を合わせて、セットアップ風にコーディネート。このようなパンツルックに愛らしい袖を合わせるのが新鮮なマッチングです。
夏らしく肩を露出したトップスにも、ボリューム袖を組み込めば動きを印象づけられます。「ディウカ(DIVKA)」はオフショルダーのブラウスに、ボリューム袖をあしらって、立体的な見え具合にしました。ひじのあたりにたっぷりとふくらみを持たせているのがポイント。マットで静かな黒パンツと相反するフォームが響き合って、着映えに深みが加わりました。
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◆楽ちんワンピースをドラマチックに演出
ワンピースに取り入れて、シルエットをドラマチックに演出する手法も効果的です。全体的にオーバーサイズで仕立てると、穏やかな輪郭が生まれます。「シー(SEA)」はシャツワンピースの袖をふんわりさせて、エレガントなたたずまいに。スリット入りのシャープなレギンスと合わせて、ボリュームの落差を際立たせました。グレーと黒のコントラストも効いています。
二の腕ゾーンをふくらませたパフスリーブは、コケティッシュな雰囲気を呼び込みます。「レキサミ(REKISAMI)」のワンピースは、パフスリーブに加えて袖先をフレアにして、複雑な起伏を作り出しています。ワンピースの上からジレ(ベスト)を重ねて、フェミニンとマニッシュをクロスオーバーさせた、ジェンダーミックスのコーディネートです。
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◆2019-20年秋冬は袖の主張がさらにパワーアップ
袖コンシャス人気は肩まで範囲を広げて、さらに盛り上がっていきそうな気配です。パリで発表された、人気ブランド「イザベル マラン(ISABEL MARANT)」の19-20秋冬コレクションは、1980年代を思い起こさせる“パワーショルダー”を提案。大きく張り出した肩ラインが「強い女」のイメージを押し出しました。太ベルトとサイハイブーツで合わせたルックは凜々しいうえに、メリハリが効いていて、19-20年秋冬の注目スタイルになりそうです。主張の強い雰囲気も来秋冬の特徴となります。
秋からの盛り上がりが有望なトレンド要素“ダークロマンチック”や“レトロ”などは、袖コンシャスとの相性も抜群。最重要トレンドとみられている“ブルジョアエレガンス(富裕層の良家令嬢風)”とも組み合わせやすいので、夏のうちから袖コンシャスを取り入れて、早めの秋支度を進めてみるのもよいでしょう。
ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター 宮田理江:
多彩なメディアでコレクショントレンド情報、着こなし解説、映画×ファッションまで幅広く発信。バイヤー、プレスなど業界での豊富な経験を生かし、自らのTV通版ブランドもプロデュース。TVやセミナー・イベント出演も多い