東京大学生産技術研究所(以下、東大生研)は、繊維商社の豊島が昨年10月に東大生研に設立した「豊島ライフスタイル寄付研究部門」の第1回目となる研究内容を発表した。同部門は豊島の寄付をもとに開設されたもので、ファッション業界や社会が抱える課題の解決に貢献する技術を、東大生研の工学系の研究から見出し、試作を繰り返して実用化や事業化を目指すもの。
発表されたのは「ヒョウヒ(HYOHI)」と命名されたスマートウエア。複数のセンサーを装着した衣服を着用することで、そのセンサーが心拍、呼吸、栄養値、ビタミン値、ホルモン値など身体情報を計測して、個々人に合った体調調整を可能にし、例えば病院に行かなくても手軽に健康管理ができるというもの。医療や介護などのほか、ソサエティ5.0(超スマート社会)時代に向けたライフスタイルの進化と充実につながるものとして期待されている。この研究は、先ごろ新橋のザ コア キッチンで開かれた「デザインアカデミー」のトークイベントで、東大生研と協力している英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アートのウエアラブル研究者、アンドリアーナ・ナッソー(Andriana Nassou)さんが発表した。
東大生研の戸矢理衣奈・特任准教授は「東大生研が経験のないファッションとテクノロジーを融合した新しい試みだ。豊島との提携によりさまざまな可能性を探っていきたい」と話した。また。豊島の藪輝彦・常務取締役は「今後、半年に1度、研究成果を発表する会を設ける予定だ。5年後をめどに事業化したい。ファッションにとどまらず、さまざまな分野の可能性を探りたい」と抱負を語った。