イタリア発ジュエリーブランド「ダミアーニ(DAMIANI)」を傘下に持つダミアーニ・グループのジェローム・ファヴィエ(Jerome Favier)最高経営責任者(CEO)が来日した。同グループは「ダミアーニ」のほかに、カジュアルなジュエリーブランドの「サルヴィーニ(SALVINI)」や「ブリス(BLISS)」、ダイヤモンドルースの「カルデローニ(CALDERONI)」、ウオッチとジュエリーの専門店のロッカ(ROCCA)、ベネチアングラスの「ヴェニーニ(VENINI)」を擁している。主軸ブランドの「ダミアーニ」は今年創業95周年で、創業以来イタリア・ヴァレンツァの自社工場でジュエリーのデザインから生産までを一貫して行っている。2007年に上場したが、19年にはダミアーニ一族が株式公開買い付けを行い、上場を廃止。18年3月期決算で約400万ユーロ(約4億8800万円)の損失を計上した。今年2月25日「WWDジャパン」付録のビジネスリポートでは、伊勢丹新宿店本店本館や松屋銀本店などの百貨店が「ダミアーニ」を好調ブランドの一つとして挙げている。来日したファヴィエCEOに、上場廃止の理由や今後の戦略について聞いた。
WWD:今回の来日の目的は?
ジェローム・ファヴィエ=ダミアーニCEO(以下、ファヴィエ):3つ目的がある。創業95周年を記念した限定商品を紹介すること、グループとして組織改革を加速するため、そして、すばらしい日本を楽しむためだ。
WWD:95周年の記念商品とは?
ファヴィエ:“ベルエポック”はホワイトゴールドだけだったが、イエローとピングゴールドが加わった。サイズはMとSが追加され、バングルなどの新商品も登場する。限定商品はレインボーカラーのサファイアを施している。95周年のロゴも登場した。
WWD:「ダミアーニ」のブランド価値は?
ファヴィエ:ジュエリー業界では珍しく、いまだに一族経営だという点。創業一族の3代目がデザインや経営に携わっている。また創業当時からデザイン、生産、ディストリビューション全てを自社で手掛けているので、「ダミアーニ」ならではの由緒正しいジュエリーを提供できる。多くのジュエリー企業は、生産やディストリビューションを他の会社に任せている。大きなグループに属するブランドは、創業当時の価値を失ってきていると思う。「ダミアーニ」は古き良き時代と同じ、“ファンダメンタル・ラグジュアリー(ラグジュアリーの基本)”を提供する独自性のあるブランドだ。ブランドの核にある価値は、美に対する飽くなき情熱だ。
WWD:上場廃止した理由と目的は?
ファヴィエ:上場廃止をした目的は、株主を気にせず経営できるから。クリエイションに関して制限がなく、改革し続けることができる。ラグジュアリーとデジタルを融合させた“アップル ウオッチ”のケース“メトロポリタン”がその例だ。ラグジュアリーは平凡であるべきではない。われわれが正しいと思うものを自由に製作できる。“メトロポリタン”は一見シンプルだが、実はとても複雑だ。パヴェダイヤモンドを施したものもあり、全て手作業で仕上げている。組織として、グローバルな成長を加速させるためでもある。上場しているといろいろなルールがあるが、今は独自にいろいろな面で革新ができる。
WWD:組織改革はどのようにして行うか?
ファヴィエ:私の役割は創業一族が持つ価値に敬意を示しながら、グローバルな視点を持って組織運営をすること。水平型組織だったのを垂直型組織にすることで、ダイバーシティーを持った企業にするつもりだ。ノウハウに多様性を持たせ、外部からの人材も積極的に採用するつもりだ。
WWD:現在何カ国で販売しているか?売り上げトップ5の市場は?
ファヴィエ:約20カ国、62店舗で販売している。日本の店舗数は14だ。1位はイタリアで、日本や韓国、ロシア、中東が売り上げ好調な市場だ。
WWD:今後の世界戦略は?
ファヴィエ:まずは既存の市場を伸ばしたい。まだまだ伸びる余地はある。そして、リーマン・ショック時に撤退したアメリカ市場にも再参入したいし、パートナーを通して中国の卸市場も拡大したい。
WWD:黒字化の予定は?
ファヴィエ:改革がスタートしたのは昨年で、次々と変化が起きている。全ての市場を活性化させるつもりだ。投資を継続しながらもうすぐ黒字化できるはずだ。
WWD:合成ダイヤモンドについてどう思うか?
ファヴィエ:機械式時計を持っている人が“アップル ウオッチ”を持つのと同じ現象が起こるだろう。合成と天然のダイヤモンドを両方持つという選択もあると思う。ダイヤモンドに対する論議が活発化するだろうし、消費者にもっとダイヤモンドを知ってもらういい機会だ。例え全く同じ組成であったとしても、地層で何万年もかけてできた天然のダイヤモンドと、数カ月という短期間でできる合成ダイヤモンドの価値は比べものにならない。