ファッション

シャネル、18年度も売上高1兆円超え 身売りの噂をあらためて否定

 シャネル(CHANEL)の2018年12月期の売上高は、実質ベースで前期比10.5%増の111億2000万ドル(約1兆2000億円)と、17年度に引き続きLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)傘下の「ルイ・ヴィトン」に迫る勢いだった。

 ファッション部門は、レザーグッズやウエアを含むほぼ全てのカテゴリーで2ケタ成長となった。香水・ビューティ部門は、香水の新作や韓国で発売されたメンズ向けメイクアップラインがけん引して好調だった。ウオッチ・ジュエリー部門は、“ココ クラッシュ(COCO CRUSH)”が引き続き好調だった。
 地域別では、アジア太平洋地域の売上高が前期比19.9%増の47億3000万ドル(約5108億円)、ヨーロッパは同7.8%増の42億8000万ドル(約4622億円)、南北アメリカが同7.4%増の21億ドル(約2268億円)といずれも増収だったが、中でもアジアの好調ぶりが目立った。

 フィリップ・ブロンディオ(Philippe Blondiaux)最高財務責任者(CFO)は、「全ての製品カテゴリーで成功を収めるなど、18年度も素晴らしい業績となった」と語った。

 シャネルは1910年に創業して以来の初決算を18年6月に発表したことから、身売りの噂が流れていた。同社はこれを否定したが、19年2月にカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)氏が死去したことで噂が再燃。ブロンディオCFOは、「身売りや上場することは決してない。独立した非上場企業であることが当社のビジネスモデルの核であり、成功の要因だ。世界で最も魅力あるブランドの一つであり続けるため、長期的な視点で投資している」と噂をあらためて否定した。

 その言葉通り、シャネルはオムニチャネルや店舗網の拡大、オフィス改装や増員、そして原材料の調達などのあらゆる分野に投資しており、設備投資額は17年度の4億3900万ドル(約474億円)から130%増となった。ブロンディオCFOは、「クリエイティビティーを事業の中心とした、今後100年を見据えての投資だ」と述べ、「19~20年も同レベルでの設備投資を予定している。将来的な決算では、売上高に占める割合などより具体的な数字を公表することも検討している」と付け加えた。

 シャネルの18年度の営業利益はおよそ30億ドル(約3240億円)と前期比8%増となっており、営業利益率は27%だった。なお、ライバルであるケリング(KERING)の営業利益率は28.9%、エルメス・インターナショナル(HERMES INTERNATIONAL)は34.3%といずれもシャネルをやや上回っている。これについて同氏は、「業績を定義するには、ブランドの資産価値を考慮する必要がある。シャネルのポートフォリオは競合他社とかなり異なるため、営業利益を比較することは難しい。当社はブランド開発に長期的な視点で取り組んでおり、短期的な目標は掲げていない。それは短期的な利益を多少損ねてでも、長期的な投資が必要だと考えているからだ」と説明した。

 同氏はまた、シャネルの設備投資額は競合他社と比較して50%程度多いと試算。毎年、平均30店舗を改装もしくは新規オープンしていることもあり、18年末の時点で前期比13.5%増のおよそ2万5000人を雇用しているという。「身売りや上場を考えている企業は、これほどの額を長期的に投資したり、増員したりしないだろう。CFOとしては、そうした噂を否定する最も効果的な材料としてこれらの“数字”を提示したい」と、ここでも売却の噂を否定した。

 設備投資に加え、シャネルは買収にも合計で2億3400万ドル(約252億円)を投じている。スペインの皮なめし会社コロマー・レザー・グループ(COLOMER LEATHER GROUP)を9000万ドル(約97億円)で、イギリスのメンズ水着ブランド「オールバー ブラウン(ORLEBAR BROWN)」を4410万ドル(約47億円)で買収。金額は非公開だが、ラグジュアリーEC大手のファーフェッチ(FARFETCH)の少数株式を取得した。また、米グリーンケミストリー(有害化学物質をできる限り使用・排出しない化学製品)会社イボルブド バイ ネイチャー(EVOLVED BY NATURE)の少数株式も取得している。同社はパーソナルケア製品や医療機器、テキスタイル製品に使用される化学薬品の代替物として、有害物質がない液状の天然シルクなどを提供する会社だという。ほかにも、スキンケア製品の原材料として使用されるコーヒーのため、環境を重視したコスタリカのコーヒー会社に出資している。

 シャネルは爬虫類の革などを指すエキゾチックレザーや毛皮の使用を廃止することを18年に発表しており、皮革代替品などのより環境にやさしい素材を探すため、今後もサプライヤーの買収を続けるという。また30年までには、直営店で再生可能エネルギーのみを使用することも発表している。

 ブロンディオCFOは、「当社の全製品において、企業の社会的責任や環境を重視する戦略を取っている。現在使用している素材についても、将来的には代替品に移行することも視野に入れて検討している。サプライチェーンの変更だけではない長期的な観点から投資しており、より包括的な社会的コミットメント(約束)を数カ月以内に発表する」と語った。なお、広告費などのブランドサポートには前期比9.2%増の16億5000万ドル(約1782億円)を投じているが、これは売上高の増加率とほぼ比例しているという。

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

2025年春夏ウィメンズリアルトレンド特集 もっと軽やかに、華やかに【WWDJAPAN BEAUTY付録:2024年下半期ベストコスメ発表】

百貨店、ファッションビルブランド、セレクトショップの2025年春夏の打ち出しが出そろった。ここ数年はベーシック回帰の流れが強かった国内リアルクローズ市場は、海外ランウエイを席巻した「ボーホー×ロマンチック」なムードに呼応し、今季は一気に華やかさを取り戻しそうな気配です。ただ、例年ますます厳しさを増す夏の暑さの中で、商品企画やMDの見直しも急務となっています。

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。