左からLUTHFI(Ba)、LEO(Vo)、JUA(Rap)、YU(Sax)、ZERU(Gt)、ALEX(Per)、KAHADIO(Dr) PHOTO : YOSHIAKI HIKINUMA
メンバー全員が日本とヨーロッパ、ないしはアメリカ、アジア、アフリカなどさまざまな国にルーツを持つ、東京・渋谷発多国籍ファンク&ヒップホップバンドALI。LEOのソウルフルな歌声に聴きほれていると、JUAがラップの技量を見せつけたりと、ルーツも年齢も異なる7人の個性が絶妙に融合し生み出される音楽は、ファンクからヒップホップ、ブルース、ソウル、レゲエまで、さまざまなブラックミュージックへのリスペクトが込められている。しかし、決して模倣的なサウンドではなく確かなオリジナリティーを感じさせ、何より音楽としてのパワーを帯びている。
左からKAHADIO、JUA、LEO PHOTO : YOSHIAKI HIKINUMA
5月17日に1stEP「ALI」をリリースしたばかりのALIを代表してLEO、JUA、KAHADIOの3人に集まってもらい、ファッションメディアとしては初となるインタビューを敢行した。
WWD:まずは、みなさんのルーツから教えてもらえますか?
LEO:母親がスペインとイギリスのハーフで、父親が日本人。渋谷が地元で、ALIでは最年長の32歳です。
JUA:最年少の22歳です。日本とフランスとカメルーンのミックスですけど、ハワイ生まれで日本とフランスで育ちました。
KAHADIO:父親がオランダとスペインのハーフで、母親が日本人の27歳。でも生まれはアメリカです。
LEO:ギターのZERUはガーナにルーツがあって、ベースのLUTHFIはインドネシアとオランダのミックスだったりと、ルーツも年齢もバラバラなんです。
WWD:そもそもみなさんはALIを結成する以前からミュージシャンになりたかったんでしょうか?
LEO:14歳くらいから「音楽でアメリカに行くぞ」って周りに言ってましたね。でも音楽学校に通ってたわけでもないし、当時付き合ってた彼女には「何言ってるの?」って(笑)。でもその彼女の母親が歌の先生だったんで、高校を卒業してから5年間、週5日通ってピアノと発声を学んでました。
JUA:父親がラッパーというのもあって、小さい頃はその反動で逆にミュージシャンになりたい気持ちが全くなかったんですよね。でもフランスの高校でバンドを組んだりしてるうちに、「音楽が1番楽しいかもしれない」って思い始めて、今も歌い続けている感じです。
KAHADIO:5歳くらいからマイケル・ジャクソン(Michael Jackson)みたいなスターになりたいと思ってたんですけど、13歳の時にドラムを始めて、3〜4人の先生に習う英才教育を受けてました。それでスタジオミュージシャンを目指してた時期もあったし、Quattroってバンドでドラムをやってたこともあります。
WWD:それぞれ影響を受けたアーティストは?
LEO:いっぱいいますけど、強いて3人挙げるならボブ・マーリー(Bob Marley)、ニーナ・シモン(Nina Simone)、ドアーズ(The Doors)のジム・モリソン(Jim Morrison)。それぞれジャンルは違うけど、歌に対する気持ちが一緒だと勝手に思っている3人です。
JUA:僕はやっぱり父親のB-BANDJ。フランスだとセクシオン・ダソー(Sexion d'Assaut)やネクフ(Nekfeu)、アメリカだとトラヴィス・スコット(Travis Scott)ですかね。
KAHADIO:マイケル・ジャクソン、オンリーです。
左からLEO、YU、ALEX、JUA、KAHADIO、LUTHFI、ZERU PHOTO : YOSHIAKI HIKINUMA
WWD:あらためてさまざまなルーツを持つみなさんだということがわかりました。それではALIの結成経緯を教えてください。
LEO:最初からいまの人数だったわけではなくて、少しずつ俺が声をかけて増えていった感じです。KAHADIOとJUAの2人はメンバーの中で1番関係が古いんですけど、KAHADIOはお互いが別のバンドで活動してた17歳のときに知り合って、JUAとは初対面で「フリースタイルできるでしょ?」って無理矢理ラップをやらせたのが出会いでした。その時からなんとなく、JUAがラッパーでKAHADIOがドラムのバンド像が浮かんでたんですけど、ボーカル、ラッパー、ドラマーだけじゃバンドは組めないからずっと悩んでて。そしたらZERUと出会い、ZERUがLUTHFIを連れてきてって、だんだんと増えていったんです。
バンドを組んだ理由は、音楽的に難しいことをやりたいわけじゃなくて、ブルースもジャズもロックもR&Bもヒップホップも音楽自体に歴史があって、この音楽の歴史に返答したいし加わりたいという気持ちからなんです。昔の音楽に簡単にさかのぼれる今だからこそ、昔の音楽をリスペクトする気持ちですね。
JUA:LEOがいなかったらALIは存在しないし、これからもLEOが引っ張らないとALIはなんとなく進んで自然消滅してしまうと思ってます。LEOにはなんかついて行きたくなるオーラがあるんですよね。KAHADIOは才能は素晴らしいけど僕との関係はチルい感じで、タピオカを一緒に飲むタピフレです(笑)。
KAHADIO:LEOは察知能力がすごいと思っていて、 俺を生かすも殺すもLEO次第。ただ俺をドラムに選んでくれたのは、間違いなく正解です(笑)。
LEO:ハーフが集まって、古いやつも新しいやつも、いろんな育ちのやつも共存してる感じが、東京っぽいバンドだと思ってます。
WWD:バンド名の由来は?
LEO:コンセプトとメンバーは結構前から決まってたんですけど、バンド名だけなかなか決まらず1年くらいずっと悩んでたんです。そんな時にZERUとTVを観てたらモハメド・アリ(Muhammad Ali)が亡くなったってニュースが流れて、モハメド・アリからとりました。ALIって単語にはまだ意味がなくて、モハメド・アリか俺らだけ。ALIってワードがこういう音楽で、こういう人たちが奏でてて、こういう気持ちになるって意味にしたいですね。
WWD:それでは結成日はアリの命日ということ?
LEO:そうですね、2016年6月3日。アリが亡くなった日から動き出しました。
WWD:バンドのコンセプトは?
LEO:簡単に言うと「LOVE MUSIC & DANCE 音楽万歳」に尽きる。とにかく音楽最高っていうのを伝えたいバンドです。
READ MORE 1 / 2 メンバー間で起こる感覚の差がALIのオリジナルに
VIDEO 「STAYING IN THE GROOVE」のスタイリングは高橋ラムダが手掛けている
WWD:今作の1stEP「ALI」に収録されている「STAYING IN THE GROOVE」を初めて聴いたときは衝撃的でした。
LEO:冒頭を飾る「STAYING IN THE GROOVE」は2年前の夏にできた曲で、ALIとして1番最初に作った曲です。安いスタジオで録ったんですけど、すごいパワーが秘められている曲だと思っていて、この1曲で事務所が決まったようなものだし、今こうして取材してもらっている。他の3曲は18年の1月から1カ月くらいで作りました。
WWD:EPは全体的にアッパーな印象ですが、その中で「BONNIE」だけはバラード調ですね。
LEO:「BONNIE」はJUAが主導して作った曲です。
JUA:制作当時は、昔のトラックを引用したりすることが多くて、どことなく古臭さを感じてたんです。だからヒップホップ的要素のあるメロウな今っぽい曲が欲しいと思い作りました。最近のヒップホップをバンドでやった感じで、「BONNIE」だけオートチューンを使っているのもあってALIっぽくない曲ではありますね。
LEO:このJUAの感覚が、難しいけど面白いんですよね。JUAが参考にしているコードは実は古い曲のものだけど、それをJUAは今っぽいと感じていたり、「あ、これをこう捉えるんだ」みたいな発見がよくあるんです。音楽の新しさとか古さって人によって捉え方が全然違うと思うんですけど、この感覚の差がALIの中にあるんですよ。俺はこれを大切にしていて、ALIの中で一番若いJUAのユースの感覚を信じていきたいですね。
KAHADIO:「BONNIE」はドラムとラップが今っぽいけど、LEOの歌やホーンは最近っぽくない。バンド内でも1つの曲に対する捉え方が全然違うからこそジャンルレスな曲が作れるんだと思ってます。
VIDEO 90年代のレゲエクラブのカオス感を表現したという1stEP「ALI」収録曲の「Vim」。日本語、英語、ポルトガル語で歌詞が綴られている
WWD:これまでに3つのMVが公開されていますが、全てモノクロですね。この意図は?
LEO:単純にモノクロが好きだし、白人と黒人の共存とかいろいろ意味を込めていたり、MVが公開されるたびに顔が徐々に見えてくるようにとか構想があるんですが、今は秘密です。
WWD:ライブを観ているとオリジナル曲はかなりあるようですが。
LEO:完成しているのは約10曲で、ALIっぽく完全に落とし込み切る前のものが30〜40曲くらいありますね。
JUA:いろんなルーツのメンバーがいるからこそ、それぞれがやりたい曲を作ったりカバーして、ALIというバンドのスタンスを探ってる途中なんです。だから作詞作曲も曲によってバラバラなんですよ。
KAHADIO:曲を作る上では人数も多いしいろんな血の集まりだから、これまでにいっぱい喧嘩してきましたね(笑)。
WWD:今後の展開は?
LEO:8月から4カ月連続でシングルを出していきます。2年後にALIを聞いた人はALIの音楽性がすぐにわかると思うんですけど、今を生きてる人には、毎月どんな曲が出るんだろうってワクワクを楽しんでほしいですね。
READ MORE 2 / 2 「親愛な関係を築いた人たちと素敵なものを」
LEO PHOTO : YOSHIAKI HIKINUMA
WWD:LEOさんは「ワコマリア」の旗艦店パラダイストーキョー(PARADISE TOKYO)で働かれていたり、ルックではモデルも務めていますね。
LEO:森さん(森敦彦「ワコマリア」デザイナー)をはじめ、スタッフにはかわいがってもらってます。森さんには音楽はもちろん、いろいろなことを教えてもらったんで、俺は一生「ワコマリア」を辞めないし、音楽でなんとか恩返ししたいと思ってます。ALIでMステに出たら、次の日は店頭に立つって決めてます(笑)。
WWD:では好きなブランドは当然「ワコマリア」?
LEO:もちろん。
JUA:僕は最近、「ラグ & ボーン(RAG & BONE)」とサムライカット(SAMURAI CUT)をよく着てます。
KAHADIO:着てるのは「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」が多いですけど、気になってるのは「エルメス(HERMES)」ですね。親が働いてるので。
5月に行われた1stEP「ALI」の発売記念イベント「JUNGLE LOVE」にて PHOTO : YOSHIAKI HIKINUMA
WWD:ライブ衣装のこだわりはありますか?
LEO:俺は楽なのもあってスーツスタイルですね。夏でも着てるんですけど、それは映画「ブルース・ブラザーズ(The Blues Brothers)」やバンドのスペシャルズ(The Specials)を代表するような“カッコつけるカルチャー”で、単純にこのカルチャーが好きだからです。
JUA:ライブではとにかく動くので、動きやすくて着心地が良いものを身につけてます。
KAHADIO:あんまり気にしてなくて、めちゃくちゃ汗をかくから上裸だったりします。でもこの間、高橋ラムダさんにスタイリングしてもらったのがめちゃくちゃカッコよかったんで、最近はスタイリングしてもらいたい気持ちが生まれましたね。
PHOTO : YOSHIAKI HIKINUMA
WWD:バンドTにもかなりこだわってるとお伺いしました。
LEO:Tシャツだけじゃなく、ロゴからグッズまで全てに愛情を注いで作ってます。
JUA:バンTを着て歩いてたら外国人に「これカッコいいんだけど、どこのブランド?」って声をかけられのはうれしかったですね。
WWD:ブランドがミュージシャンをフックすることがありますが、コラボしたりビジュアルに起用されたいブランドはありますか?
LEO:「ワコマリア」と「エルメス」ですね。コラボしたいなんておこがましいですけど、俺は森さんを親だと思って慕ってるし、KAHADIOの親には若いころから気にかけてもらってたし、なるべくリアルな関係というか、親愛な関係を築いた人たちと素敵なものを作りたいです。あとは昔、渋谷のバーで働いてるときにジェイソン・ディル(Jason Dill)が服をくれたりかわいがってくれたので、ディルの「ファッキング オウサム(FUCKING AWESOME)」もですね。
左からALEX、KAHADIO、LEO、JUA、LUTHFI、YU、ZERU PHOTO : YOSHIAKI HIKINUMA
WWD:最後に、今後の活動目標を教えてください。
LEO:目標というか夢なんですけど、東京でも海を越えた先でも、いろんな人種の人が俺らのライブに来て1つになっているのを見たいんです。ただ先を見据えすぎるのは良くないし、まずは東京を固めます。それが固まった時には、俺らが世界に行かなくても世界が俺らを見てくれてるはずなんで。
JUA:まだ1stEPを出したばかりでALI自体もALIに染まりきっていないと思うから、これからどういう色になってどういうものを作っていけるのか僕らもわからなくて、これが楽しみです。でもシンプルに、カッコいいと思うものを作っていきたいし、カッコいいことをしたいです。
KAHADIO:どう転んでも俺らはずっとカッコいいし、俺は一生ALIです。