ファッション

ギャップやリーバイスも署名 関税引き上げに反対する書簡をトランプ米大統領に

 米国を代表するファッションデザイナーやアパレルブランド、業界団体などが、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領に対中関税の引き上げ中止を求める書簡を連名で送付した。

 米中の貿易摩擦が激しさを増す中、米政府は5月10日、中国からの輸入品2000億ドル(約21兆円)相当への関税率を10%から25%に引き上げた。中国への強硬姿勢を強めている米国は、さらに3250億ドル(約35兆円)相当の輸入品にも追加関税を発動することを検討しており、その一環として米通商代表部(USTR)が6月17日から7日間の予定で公聴会を開いている。

 今回の書簡の中心となったのは米アパレル&フットウエア協会(American Apparel & Footwear Association以下、AAFA)と、トム・フォード(Tom Ford)が新会長に就任したばかりのアメリカファッション協議会(Council of Fashion Designers of America以下、CFDA)、そして米アクセサリー協会(Accessories Council)だ。

 アパレル業界の強い危機感を示すように、書簡の最後には4ページ以上にわたって関税引き上げ中止を求める関係者の名前が連ねられている。ラルフ・ローレン(Ralph Lauren)やダイアン・フォン・ファステンバーグ(Diane von Furstenberg)、ナルシソ・ロドリゲス(Narciso Rodriguez)らデザイナーや、「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」や「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」を擁するPVHコープ(PVH CORP)、「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」や「ティンバーランド(TIMBERLAND)」「ヴァンズ(VANS)」などを擁するVFコープ(VF CORP)、ギャップ(GAP)、リーバイ・ストラウス(LEVI STRAUSS)などのアパレル大手に加えて、「シンシア ローリー(CYNTHIA ROWLEY)」や「レベッカ ミンコフ(REBECCA MINKOFF)」などのウィメンズブランド、「ケネス コール(KENNETH COLE)」や「ジョン・バルバトス(JOHN VARVATOS)」などのメンズブランド、そしてスポーツウエア業界からはニューバランス(NEW BALANCE)やアンダーアーマー(UNDER ARMOUR)などが署名している。

 リック・ヘルフェンバイン(Rick Helfenbein)AAFAプレジデント兼最高経営責任者(CEO)は、「対中関税が引き上げられた場合、アパレル業界に壊滅的な影響を与えるだろう。すでに平均12.5%の関税を支払っているところに25%の追加課税が実施されたらと想像すると恐ろしい。メーカーによっては利益よりも関税のほうが高くなってしまう」と語った。

 書簡は、「中国との貿易協議が合意に至っていないことに対する大統領のいら立ちは理解する」としながらも、「テキスタイル、衣料、シューズ、アクセサリー類への関税を交渉の切り札として使うことには強く反対する」と述べている。「2018年にアパレル業界は180億ドル(約1兆9440億円)以上の関税を支払っている。これは米政府が徴収する関税の40%近くに及ぶが、アパレル業界が輸入品に占める割合は6%程度にすぎない。米国で現在販売されているフットウエアのおよそ69%、アパレル製品の同42%が中国と関係している。サプライチェーンを中国以外に移転させることは簡単ではなく、デザイナーやメーカー、卸、小売り、輸出入業者など、アパレル業界の全ての関係者が被害を受ける。関税の引き上げによって米国の消費者は値上げに直面することになるが、結果としてアパレルやフットウエアの売り上げが落ち、ひいてはアパレル業界の雇用が失われるという壊滅的な打撃となるだろう」と訴えた。

 公聴会で、カレン・ギバーソン(Karen Giberson)米アクセサリー協会会長は、「関税の引き上げは、すでに業績が芳しくないメーカーや卸にさらなる打撃となるだけだ」と述べたという。マーク・シュナイダー(Marc Schneider)=ケネス コールCEOは、「(トランプ大統領は)中国が関税を負担すると言うが、それは違うと公聴会ではっきり指摘した。実際に被害を受けるのは米国のメーカーや小売り、そして消費者だ」と話した。

 同じく公聴会で意見を述べたヘルフェンバインAAFAプレジデント兼CEOは、「トランプ大統領がかつてメイシーズ(MACY’S)と協業した衣料ブランドは主に中国で生産していた。当時の彼が現在のわれわれと同じ状況にあったら、『関税の引き上げなどバカバカしい』と大声で反対しただろう。貿易戦争に巻き込まれて国民が仕事を失うなど間違っている」と話した。公聴会には今後、ニューバランス、フィラ(FILA)、スティーブ マデン(STEVE MADDEN)、フォーエバー21(FOREVER 21)、エバーレーン(EVERLANE)などの代表者も出席する。

 今回の書簡に先立ち、全米小売業連盟(National Retail Federation)も同様の書簡をトランプ大統領に送付しているほか、5月21日にはナイキ(NIKE)やアディダス(ADIDAS)のアメリカ現地法人など173社のスポーツ用品やシューズメーカーが、やはり対中関税の引き上げ中止を求める公開書簡を発表している。

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