ゆったりシルエットのワンピース“サックドレス(sack dress)”は、海外コレクションで相次いで提案され、日本でもヒットの兆しがみえています。暑い日でも涼しく過ごしやすいのは、肌離れがよく、体と服の間を風が通る仕立てのおかげです。
ニューヨークブランドの「トリー バーチ(TORY BURCH)」は2019年春夏コレクションで、モロッコ風のボヘミアンルックを提案、その中でサックドレスも登場しました。洋の東西を越えたカルチャーミックスはモード界の大きな流れ。暑さをしのぎやすい砂漠地域の民俗衣装は、地球温暖化を背景に、ファッションの面でも暑さ対策が求められる中でますます注目を集めそうです。年々、きつくなる日本の猛暑にも、サックドレスは助け船になってくれそうです。
今回は日本人デザイナーが手掛ける人気ブランドのルックを参考に、“サックドレス=ゆったりワンピース”の取り入れ方を押さえていきましょう。
◆1枚で楽ちんおしゃれ
アジアムードで街中リゾート風に
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東京・青山に直営店を構える「ヌキテパ(NE QUITTEZ PAS)」は、インドの職人による手仕事仕上げのウエアで人気があります。程よくエスニック感を帯びたワンピースは、リラックスした雰囲気で着こなせます。アジア風味や旅人テイストを生かしやすいのも、ゆったりワンピースの長所でしょう。服と体の間に空気をたっぷりはらむので、風が吹けばいっそう涼やかな気分に。
アースカラーのワンピースは、白いストライプ柄とティアード風の切り替えを施して、リズミカルな印象に仕上げました。“街中リゾート”の気分で着こなすなら、フラットソールのサンダルを合わせて。スニーカーで合わせれば、スポーツミックスのコーディネートになります。
背中が広く開いた黒いワンピースは、リボンの大きな結び目がエレガントです。背中側の見栄えを重視する、最近の流れにもマッチしています。アジアンな刺しゅうモチーフはエキゾチックなムード。キャミソールやビスチェを投入したり、デニムパンツに重ねたりして、カジュアル感を出すアレンジも楽しめます。
◆甘さを抑えて優美な着映え
自然な細感を演出
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パリ在住の日本女性、マリエ・ウエストン(Marie Weston)さんが手掛ける「マリハ(MARIHA)」のゆったりワンピースは、たっぷり施されたギャザーが目を引きます。繊細でやわらかい表情があるのに、甘くなりすぎないところが魅力。胸下から切り替えを施し、ドレープの量感を強調してウエスト位置を高く見せ、上半身をコンパクトに見える計算されたシルエットです。「女性が装うときのときめきを形に」という想いからスタートしたブランドらしいアレンジです。
ゆったりしたシルエットでも、ドラマティックな色を選べば大人っぽくまとまります。1枚で着て楽ちんなサックドレスですが、Vネックでスッキリ見せたり、袖をフレアにしたりと、こちらのアイテムには細部にこだわりが見えます。
大人の上手な肌見せパターンとして参考になるのが、オフショルダーの袖付きタイプ。実はスタイルアップ効果も期待できます。袖先にボリュームを持たせてあり、ひじから先がほっそり見える仕掛けになっています。しなやかな細感が演出できる点でも注目です。
◆伸びやかな縦長コーデ
決め手はワンピース×アンダーパンツ
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世界中を旅するモデル、女優の桐島かれんさんの“ライフクラフトブランド”「ハウス オブ ロータス(HOUSE OF LOTUS)」からも、多彩な着こなしに誘うゆったりワンピースが登場しました。ドット柄で埋め尽くしたロング丈ワンピースは、プチ旅に出掛けたくなるようなポジティブなテイストが持ち味。スカートやパンツに重ねて、縦長レイヤードに。さらにロングネックレスを垂らせば、縦落ち感をアピールできます。
涼しげなブルー系のワンピースはサマールックにうってつけ。ラッフル付きのエアリーなパンツに重ねたうえ、ショート丈の羽織物も添えて、3層レイヤードに仕上げた縦長コーディネートです。実はワンピースとパンツの組み合わせは、桐島さん流の着こなしのベースになっている得意技。ミニワンピースの下にパンツを合わせて、パンツの面積をたくさん見せるよりも、ロングワンピースの下からパンツをちらっとのぞかせるコーデのほうがシックに決まることをこのルックが証明しています。
ターコイズ(トルコ石)を思わせるような、さわやかな水色のロングワンピースの下には黒パンツをレイヤード。コントラストが強まって細さも際立っています。このように太めのパンツを重ねることで装いに動きが出ます。
サックドレスの原型とも呼べそうな服に、トルコや中央アジアのイスラム圏の民俗衣装“カフタン”があります。暑さが厳しい中東や西アフリカの装いは、世界的にトレンドの仲間入りをしています。日本も気温の変化が激しくなっていて、風通しのよいゆったりワンピースは重宝する存在に。秋以降もロングブーツなどで合わせればシーズンレスに着回すことができるので、夏のうちにアレンジ技をスキルアップしておきたいものです。
ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター 宮田理江:
多彩なメディアでコレクショントレンド情報、着こなし解説、映画×ファッションまで幅広く発信。バイヤー、プレスなど業界での豊富な経験を生かし、自らのTV通版ブランドもプロデュース。TVやセミナー・イベント出演も多い