ファッション
連載 コレクション日記

メンズコレドタバタ日記 大渋滞で「セリーヌ」のゲートが閉まる、と思ったらマジで奇跡が 「ポール・スミス」には三浦春馬登場

 6月23日。晴れ。ずっと晴天だったパリ。週明けからは最高気温が37度!みたいな灼熱地獄に突入するそうですが、パリメンズ期間中は爽やかな初夏の晴天が続きました。さぁ、今日でパリメンズも最終日。張り切って行きましょう〜!

9:45 「ダブレット」

 本日一発目は、「ダブレット(DOUBLET)」です。僕は井野将之デザイナーを、ファッション界の“平成の喜劇王”だと思っていたのですが、さぁ令和の時代はどうでしょう(笑)?

 ショールームのドアを開けたら、こんな風に出迎えてくれました(笑)。井野さん、“令和も喜劇王”、確定です!!

 コレクションは「まだナイショ」なので写真はアップできませんが、今シーズンも爆笑(!)、クスッと笑っちゃう(!!)、もしくは苦笑い(!!!)アイテムと粒ぞろいです。僕一番のお気に入りは、“中を開けて顔にかざすだけでピンナップガールになれるクラッチ”でしょうか(←なんのこっちゃ!?、ですね)。

13:30 「ケンゾー」

観客の数で「バルマン」と1、2を競った「ケンゾー」のショー会場

 「ケンゾー(KENZO)」は、キャロル・リム(Carol Lim)とウンベルト・レオン(Humberto Leon)=クリエイティブ・ディレクターによる最後のコレクション。振り返ればこの2人には、いろんなことを教えてもらいました。一番は、“コミュニティー”という概念です。

 あれはロゴ入りのスエット、Tシャツ、キャップ、「ヴァンズ(VANS)」とのコラボスニーカーなどが大ブレイクしていた時の話です。とあるシーズンのショー直前、ウンベルトに「どうしてロゴをいっぱい使うの?」と質問したら、「昔、『カルバン・クライン』のロゴTシャツを手に入れたとき、『あぁ、これで僕もオシャレな人たちの仲間入りができたんだ』って思えて嬉しかったんだ。ロゴアイテムは、“コミュニティー”の一員だって実感するのに最高のアイテムなんだよ」と答えます。以降“コミュニティー”という価値観は、僕の中で大きな取材テーマになっています。

観客の数で「バルマン」と1、2を競った「ケンゾー」のショー会場

 そんな2人のラストショーは一昨日の「バルマン(BALMAIN)」同様、一般顧客も招待した壮大な規模感。僕らの席の反対側は、もう人だらけです(笑)。過去のコレクションをまとったダンサーのパフォーマンスで幕を開け、メンズ、ライブ、そしてウィメンズ、フィナーレ!という一大スペクタクル。この場にいた人は皆、ライブ同様の一体感を味わい、まさに“「ケンゾー」コミュニティー”の一員だったことを実感したでしょう。後任は、誰でしょう?僕は「高田賢三さんに3000点」です(笑)。ウンベルトは、「後任もぜひアジア人であってほしい」と祈っているそうですよ。

14:45 「リンシュウ」

 「ケンゾー」は、めちゃくちゃ楽しかったものの、ショーは延べ30分に及び、終わった時は既に14時。お次の日本代表「リンシュウ(RYNSHU)」が始まる時間です(汗)。慌ててバスに乗り、左岸から右岸に大移動。ところが、道路工事と交通封鎖でなかなか進みません。「パリよ、アナタは日曜日も大渋滞なのですね……」。40分遅れで到着し、漆黒のスーツに花々が咲き乱れたショーになんとか間に合いました。いや、これも「メゾン ミハラヤスヒロ(MAISON MIHARAYASUHIRO)」同様、「待っていていただいた」という表現が正しいでしょう。ありがとうございました!

15:10 「ディオール」

 「ディオール(DIOR)」の展示会にGO!ここでの取材は、最新コレクションにまつわるポストカードをゲットすることから始まります(ソレは取材じゃないw)。お土産にぴったりなポストカードは、キム・ジョーンズ(Kim Jones)の優しい心づかい。アクセサリーの詳細については、コチラの記事をどうぞ

16:30 「ポール・スミス」

 お次は「ポール・スミス(PAUL SMITH)」。ここでの最初のミッションは、日本人アンバサダーに就任した三浦春馬さんの写真を撮影することです(これは、ちゃんと取材w)。会場に入って“どセンター”のフロントローに目を凝らすと、三浦さん発見!!もちろん「ポール・スミス」の洋服がお似合いです。iPhoneのポートレートモードで爽やかな笑顔と愛らしいピースサイン、いただきました。感謝。

 コレクションは、三浦さんが着たらベリー似合いそうな優しいフォーマル。淡いパステルカラーやオーバーサイズのシルエットは、まさに2020年春夏のスーツです。前回まではブリティッシュトラッドな細身のシルエットにクラシカル&ビビッドな色合いで難易度高めでしたが、これは挑戦しやすい。「ポール・スミス」は、みんなに楽しんで欲しいブランド。素敵なブランドにカムバックです。

17:45 「ピガール」

 さぁ、「アン ドゥムルメステール(ANN DEMEULEMEESTER)」が遅刻常習犯なら、こちらはもはや“問題児”の「ピガール(PIGALLE)」です。もうね〜、このブランド、本当にショーが始まらないの、毎回(笑)。毎回大遅刻&大混雑なのに、反省の色ナシなブランドなのです。ゆえにいつもはどんなに遅れても構わないスケジュール(イヤ、われわれは構うのだけれどw)、つまり一日のラストバッターを務めてきたのですが、今回は、このあとまだ3ブランドが控える夕方の時間帯。大丈夫なのかしら?

 会場に着いたのは予定時刻より10分遅れた17時10分。すると、なんとまだ入場さえ始まっておりません(笑)!当然、入り口は大混雑です。17時20分になって、ようやく入場開始。ところが会場は建物の7階で、エレベーターは1基しかないと言うじゃあ〜りませんか。ステファン・アシュプール(Stephane Ashpool)よ、アナタたちはオペレーションが苦手なハズなのに、どうして、こんなに客入れが大変な会場を選んでしまったの?これは大遅刻確定!!でございます。

ステファンが、エレベーターでなければたどり着けない会場を選んだ理由は、この景色。確かに癒やされました

 ようやくエレベーターに乗って7階に上がれば、なんとまだリハーサル中だし、45分遅れで始まったショーは、まさかの牛歩で全然進まない!!「ピガール」、今シーズンも自由奔放すぎます(笑)。

 「コレは、会場前方に陣取ったら、帰りも大混雑に巻き込まれて次のショーに間に合わないな」……。そう思ったわれわれは、あえて最後尾のベンチに座り、およそ半分のルックを見たところでササっと退席させていただきました。急ぎ足でメトロの駅に向かいます。

18:30 「ダンヒル」

 「ダンヒル(DUNHILL)」のショーは、アーティストの小林健太さんのお隣。小林さんは今回、マーク・ウェストン(Mark Weston)クリエイティブ・ディレクターのためにアートを提供しています。ロンドンの写真展の作品を見たというマークから連絡があったとのこと。初ランウエイを「楽しみです」とドキドキして待っています。

 コレクションは、そんな小林さんのアートをさまざまなアイテムにのせただけでなく、全般的にオリエンタルなテイストです。着物合わせのジャケットやコートは、普通なかなかエレガントにキマらないシロモノですが、マークが手がけるとアラ不思議!!新しいスーツになっています。センスあるなぁ。小林さんも「楽しかったです」と終始笑顔でした。

19:30 「1017 アリクス 9SM」

 「1017 アリクス 9SM(1017 ALYX 9SM)」は、細身のフォーマル。左右の身頃の合わせに得意のメタルパーツを使います。にしても、ショー会場には日本人が少ないこと。周りは空席が目立ちます。みんな「セリーヌ」に遅れないよう、「1017 アリクス 9SM」はスキップしたのですね。いや「セリーヌ」も遅れるだろうし、大丈夫だとは思うけれど……。

20:30 「セリーヌ」

 と思ったらナント!「セリーヌ(CELINE)」に向かう道も大渋滞!!この連載を読んでくださっている方はご存知、「BB」こと「貧乏バス」は、遅々として進みません。今回この「BB」、かなりの頻度で大遅刻しており、2日目は「ヴァレンティノ(VALENTINO)」、3日目は「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」に間に合わないという大失態。「2度あることは3度ある」が、まさかエディ・スリマン(Hedi Slimane)の「セリーヌ」で訪れることになろうとは……。

 予定時刻を30分ほど過ぎ、「BB」が会場まで1km手前の地点で立ち往生していたとき、後方から叫び声が聞こえてきました。インスタグラムのライブストリーミングで、ショーが始まってしまったのです!!

 5分ほど遅れて、会場に到着。当然、入り口は閉ざされています。悲しいことに僕たちは、招待状を持っているのに、会場の外で、ライブストリーミングを見ているというナゾな状況に。諦めて帰る人もチラホラです。

 ところが、神は存在したのです。セキュリティーがバリバリ厳しい「セリーヌ」が、まさかの「招待状があれば、途中入場OK」という“お言葉”。当然、入り口には「BB」バスの乗客約70人が殺到します。僕は序盤ですんなりゲートを通過。後輩のオーツカは、「もうダメ!!」と再度封鎖されそうになった瞬間、警備員の脇の下をくぐり抜けギリギリ入場成功です。オーツカ、素晴らしい神がかり的フットワーク!!履いていた「セリーヌ」のモンクストラップシューズが、彼に力を授けたのでしょう。脇からショー会場に入り、ラスト10ルックとフィナーレを鑑賞。結構ちゃんと見えました。途中からではあったけれど、現場に入って、体感できてヨカッタ(笑)。オーツカは、「『セリーヌ』が見れなかったら、帰国できない」とさえ言っていましたが、彼も無事、日本に帰国できそうです(笑)。

 本日は、また会食でおしまい。ホテルに戻ったのは、深夜0時半ごろでした。明日からは展示会回り。合間にウェブと紙面の原稿を書いて入稿。校正&校了という地味な日々が始まりますが、展示会にもニュースはいっぱいです(ということで、この日記はもうちょっと続きますw)。

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