独EC大手のオットーグループ(OTTO GROUP以下、オットー)と同チボー(TCHIBO)は、政府主導の再利用可能なパッケージ・プロジェクト「プラックスパック(PRAXPACK)」に参加する。環境にやさしい製品やフェアトレードグッズなどを扱う同国のマーケットプレイス、アボカドストア.de(AVOCADOSTORE.DE)や、郵便事業を担うドイツポスト(DEUTSCHE POST)とその傘下の国際物流会社ディーエイチエル(DHL)なども参加する。
「プラックスパック」プロジェクトは6月初旬から32カ月間にわたって行われる予定で、再利用可能なさまざまなパッケージを試験的に使用する。プロジェクトを取り仕切る民間シンクタンクの独エコポール(OKOPOL)のティル・ジマーマン(Till Zimmermann)博士は、「再利用可能なパッケージが現実的なものとして使用されるには、環境に対する意識の高い一部の消費者だけではなく、全国的な取り組みとして広く受け入れられる必要がある」と語る。
このプロジェクトでは、フィンランドで2011年にスタートした「リパック(REPACK)」システムもテストする。これはオンラインでの買い物の際に「リパック」での配送を希望すると、段ボール箱などの代わりに再利用可能な専用バッグで商品が届き、消費者はそれを封筒サイズに折り畳んで郵便ポストに投函して返却するという仕組みだ。現在、バッグの回収率は75%程度だという。ジマーマン博士は、「専用バッグに入らないサイズの商品や壊れ物の配送にも対応するため、梱包開発会社と提携し、将来的には再利用可能なカートンやボックスなども取り入れていきたい」と話した。
オットーは、「使い捨てプラスチックによるゴミ問題の解決策を見つけるため、そして再利用可能なパッケージの実用性を証明するため、今回のプロジェクトに参加する」とコメントした。同グループの売上高はおよそ140億ユーロ(約1兆6940億円)に上る。自社で独自の再利用可能なパッケージシステムを立ち上げるか、「リパック」のようなサードパーティーと提携するのかなども含め、さまざまな角度から検証するという。「実現可能でかつ顧客が受け入れてくれるソリューションはどれかを検証したい」。
チボーの売上高は32億ユーロ(約3872億円)程度で、主力であるコーヒー豆やコーヒー関連商品に加えて、ライフスタイルグッズや衣料品を販売している。同社は、「再利用可能なパッケージの品質や、自動配送システムで問題なく使用できるのか、そして顧客にとって使いやすいものなのかなどを検証したい」と述べた。なお、今回のプロジェクトで使用される再利用可能なパッケージの費用は顧客の負担とはしないという。
エコ先進国として知られるドイツでは、再利用可能なパッケージを歓迎する消費者が多いことが予想される。梱包関連の業界団体であるジャーマン・パッケージング協会(GERMAN PACKAGING INSTITUTE)による最近の調査では、消費者の70%が「梱包が環境に配慮しているものではない」ために製品を購入しなかった経験があり、同19%は「梱包が環境に配慮したものかどうか」を購入の基準にしているという。
しかし、問題はコストだとジマーマン博士は言う。再利用可能なパッケージの製造コストは使い捨てのプラスチックバッグよりかなり高いため、コスト効率をよくするには再利用率を高めるしかない。現時点では、主に一部の意識が高い消費者が利用しているため回収率は高いが、広く普及させるには消費者への啓発が必要になるだろう。「リパック」の場合、専用バッグの平均使用回数は20回程度だという。同博士は、「オンラインでパンツを3本購入して2本を返品する場合など、再利用可能なパッケージが便利だと気付いてもらえる機会も活用していきたい」と語った。
環境負荷の低減に関するコンサルティング会社の独シンクステップ(THINKSTEP)のフローラ・ドゥスーザ(Flora D’Souza)は、環境保護の一環としてパッケージを見直すブランドが増えているが、それだけでは十分ではないと話す。同氏は、「300gのコットン製の服が200gのパッケージに入っている場合、パッケージの二酸化酸素排出量はその製品全体の5~10%にすぎない。ファストファッションなど、製品が大量に生産されることのほうが大きな問題であり、サステイナビリティーの実現にはパッケージだけではない全体的なアプローチが必要だ」と語った。