香港の大手繊維商社リー&フォン(LI & FUNG)のスペンサー・フォン(Spencer Fung)最高経営責任者(CEO)は、6月17日に開催された投資家向けの説明会後の記者会見で、収束する気配のない米中貿易戦争を「過去20年間で最大のビジネスチャンスだと捉えている」と話した。
同氏は、米中が今後どのような合意に至るのであれ、“チャイナリスク”の怖さが身に染みたメーカーや小売りは中国に依存していた調達や生産工程を見直し、他国への移転を検討するだろうと指摘。その際に、50カ国以上の生産国にネットワークを持ち、中国以外の国にある工場と長年の信頼関係を築き上げてきた実績によってスムーズな移転を支援できると述べた。例えば2019年の時点で中国への依存度が70%程度の米婦人服小売りであれば、既存ベンダーと共に新たな生産国を探したり、中国以外の国の新たなベンダーを紹介したりすることで、20年には依存度を20%にまで下げることが可能だという。
リー&フォン自体も、15年は調達事業の59%を中国に依存していたが、18年には51%まで下げ、19年は40%台後半になる見込みだ。同社は世界最大級のアパレルおよび日用雑貨のサプライヤーであり、中国以外での生産高はベトナム、インド、バングラデシュがそれぞれ10億~20億ドル(約1070億~2140億円)で、インドネシア、カンボジア、中南米が同2億5000万~10億ドル(約267億~1070億円)となっている。
一方で、米国のブランドが中国から離れてその生産能力に余裕ができることを考えると、英国や欧州、日本のメーカーや小売りにとって中国は引き続き魅力のある生産国だとフォンCEOは話した。「米国の小売りにとっての中国の役割は、今後20年間で間違いなく変化する。米中貿易摩擦が起きる以前の11~13年頃から、中国はIT産業を拡大するために最低賃金を引き上げた。それによって、ここ6~7年はアパレル関連企業が中国を離れており、今後もその動きは加速するだろう」。
香港で現在行われている、中国本土への容疑者引き渡しを可能にする法案への反対デモの影響については、「当社は香港に本社があり、香港証券取引所に上場しているものの、取引先やサプライヤーの大半は香港以外の場所にあるため直接的な影響はないと思われる」と説明した。