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インフルエンサー軸の新通販アプリ「フォーシュア」 自腹で購入して推薦

 インフルエンサーマーケティングのリデル(LIDDELL)は、スマホをベースとしたインフルエンサーECプラットフォーム「FOR SURE(フォーシュア)」のβ版サービスを開始した。福田晃一社長が「これまでのインフルエンサーマーケティングの知見を集結した」というもので、「インフルエンサーの“好き”を信じて、買える場所」をスローガンに、「『買う』『売る』『宣伝する』が一体化した、ブランドお墨付きのC to C型ショッピングサイト」を目指す。

 ビジネスモデル内に登場するのは、“シュアリスト(SURERIST)”と呼ばれるインフルエンサーと、出店する企業・ブランド、そして、買い物やコミュニケーションを楽しむユーザーの3者。“シュアリスト”はリデルがネットワークを持つ約2万人のインフルエンサーの中から厳選して認定した、目利き力やセンスがあり、自分自身の言葉で商品の魅力を語れる人々のこと。出店ブランドから好きな服やアクセサリーを身銭を切って購入し、着用写真を投稿したり、フォロワーやユーザーにお気に入りのポイントや着こなしのアドバイスなどを紹介する。商品の詳細はブランドのECサイトと連携しているため、面倒な登録などは不要だ。紹介した商品が売れれば売上げの一部を報酬として得られるので、セレクトショップ感覚でアカウントを運営する醍醐味もある。

 売られているのは出店企業・ブランドの正規品だけで、しかも、“シュアリスト”が実際に私物として購入したものだけであり、ユーザーにとっては信用が担保された状態で購買を検討することができることになる。“シュアリスト”に問い合わせをしたりコメントのやりとりをしたり、購入後にユーザーも着用写真を投稿するなどして、好きなブランド・好きな商品を介してコミュニケーションを楽しむことができる。

 企業・ブランド側にしてみると、通常のインフルエンサー施策では、これまで費用を払ったりギフティング(商品提供)をして投稿してもらっていたものが購入してもらえるため、コストが売上げ・利益に逆転する。#PR表記もいらなくなる。また、「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」や「楽天市場」などのファッションECモールではブランドでの購買体験が希薄になりがちだが、共感型の「フォーシュア」では良質な購買体験を創出することで、ブランディングやファンの発掘・拡大に寄与。ダイレクトマーケティング、エンゲージメント、O2O、共創など、未来の顧客をつくり、強いブランドが育つプラットフォームとして活用できる。インフルエンサー施策が遅れている企業・ブランドには「渡りに船」的なサービスでもある。

 このサービスの責任者を務める山本悟史リデル執行役員フォーシュア・ディビジョン・リーダーは、もともと電通でコミュニケーションプランナーやクリエイティブディレクターを務め、いくつかのアワードも受賞した人物だ。「モノと情報で溢れかえった時代に、実際に買って、本当に好きで人にすすめたい商品だけが売り買いされる場所を作りたい」と昨秋電通を辞め、サービスの開発や企業・ブランド招致に取り組んできた。

 「広告的・PR的なアプローチではなく、Sure Relation(シュアリレーション)を提唱するのが『フォーシュア』だ。『シュアリスト』の純粋で正直なおススメ品だけが集った“熱量”と“正直さ”が詰まった場所で、本当に“好き”なモノで人とつながり、その価値観を尊重しあえる確かで正直な場所・正直な購買体験を提供したい。“好き”を介してブランドのファンが生まれる『コマース×コミュニティ型』を構築し、消費するのではなく、価値を生み出すマーケットプレースとして、多くの人に利用してもらいたい。買い物にワクワクを取り戻し、愛のある自己表現で溢れた世界を目指したい」と熱く語る。

 5月31日のβ版スタート時点の“シュアリスト”は400人で、エイネットの「ズッカ(ZUCCa)」「メルシーボークー(mercibeaucoup,)」「ネネット(Ne-net)」「にゃー」「603」や、サザビーリーグの「メゾンスペシャル(MAISON SPECIAL)」、ミッドウエスト(取り扱いブランドは「トーガ/トーガ プルラ(TOGA / TOGA PULLA)」「ジョン ローレンス サリバン(JOHN LAWRENCE SULLIVAN)」「タロウホリウチ(TARO HORIUCHI)」「タン(TAN)」「ポンチ(PONTI)」「リト(RITO)」「ステア(STAIR)」「サーロイン(SIRLOIN)」「ババコ(babaco)」「ユルイエ/YY バイ ユルイエ(YUUL YIE / YY BY YUUL YIE)」「マイリ(Mhairi)」「イリアアシミネ(Iria Ashimine)」など)、「アウラアイラ(AULA AILA)」などが参加している。

 開始2週間の時点で、計120投稿・160万リーチがあった。また、ネットでは定番品が売れやすいが、「感度が高く着こなしがうまいシュアリストが多いためか、個性的なアイテムが急にタテ売れ(販売数量が増加)したり、シュアリスト着用カラーの動きが良くなる傾向もある」という。

 今後は、“シュアリスト”のニーズを把握し、商品開発などにも意見を取り入れたり、共同で商品開発を行うことなども想定している。リアル店舗やブランドの自社ECなどで購入した商品についても販売できるようにするかなどについても検討していく。すでに“シュアリスト”の投稿により、インスタグラムのフォロワーの増加や自社ECへの来店や売上げなどの効果が表れているブランドもあるようだ。

 8月のグランドオープン時には、大手アパレルやセレクトショップなども参画する予定。今後は出店ブランドを開拓し、取扱品番を増やすとともに、“シュアリスト”を増やしたい考え。「結婚や出産を機にアパレルを辞めた方、自身のセンスで副収入を得たい方、洋服屋を開くのが夢だった方などからも応募を受けたい」。

 課題は大きく3つある。EC強化やインフルエンサー施策の強化をしたくても、新サービスに割けるマンパワーが不足している企業が多いため、いかにスムーズにデータ連携ができるかが1つ。2つ目は、自社販売員をインフルエンサー化し、外部インフルエンサー施策を敬遠しがちの企業をどう口説き落とすか。そして、3つ目が「フォーシュア」自体のチームの強化だ。上場した新興セレクトショップの創業メンバーも立ち上げ前から参画しているが、今後はファッションビジネスの経験者やECのリーダーを担える人材、エンジニアなども拡充する必要がありそうだ。「サービスの可能性を伝え、一緒に夢をかなえる仲間を増やすことにも注力したい」と山本執行役員。

松下久美:ファッション週刊紙「WWDジャパン」のデスク、シニアエディター、「日本繊維新聞」の小売り・流通記者として、20年以上にわたり、ファッション企業の経営や戦略などを取材・執筆。著書に「ユニクロ進化論」(ビジネス社)

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