「スタージュエリー(STAR JEWELRY)」は1946年に横浜・元町で創業以来、デザイン性と着け心地のよさにこだわったジュエリーを生み出してきた。同ブランドの一番の強みは職人技だ。最近トレンドのカスタマイズも20年以上前からスタートさせ、カスタマイズイベントも頻繁に行って人気が定着している。6月5~11日に伊勢丹新宿本店1階ザ・ステージで開催したポップアップショップ「スタージュエリー コズミック ラボ(STAR JEWELRY COSMIC LABO)」では、会場内に“クラフツマンカウンター”を設置し、職人を常駐させカスタマイズサービスを提供。会期中に600人以上の購入があり予想以上の反響だったという。宮沢勲スタージュエリー ブティックス常務取締役営業本部長兼マーケティング本部長に話を聞いた。
WWD:ここ数年の年商の推移は?
宮沢勲スタージュエリー ブティックス常務取締役営業本部長兼マーケティング本部長(以下、宮沢):2016年で年商100億円を超え、17年が103億円、18年が107億円。19年は前年比2%ダウンを想定している。業界としてブライダルが厳しく、クリスマスのギフト需要が減っているからだ。
WWD:クリスマスギフトの需要が減っているのはなぜだと思うか?
宮沢:SNSなどにより、コミュニケーションの方法が以前と劇的に変わっている。以前はクリスマスが一大イベントだったが、今はいつでもどこでもコミュニケーションがとれるし、ギフトを贈るタイミングがそれぞれの消費者の価値観や考え方によりまちまちになっている。クリスマスのような世間一般の記念日を祝うというよりは、自分の記念日を祝う傾向になっているのでギフトにも工夫が必要だ。
WWD:競合ブランドは?競合とみなす理由は?
宮沢:百貨店の平場にコーナーを持つ「4℃」や「ヴァンドーム青山(VENDOME AOYAMA)」とは御三家と呼ばれるが、競合とは見ていない。「スタージュリー」は日本のブランドだからこそできる独自価値を発信するブランドだ。クラフツマンシップとデジタル技術を組み合わせた物作りからきめ細かいサービスまで、共感してくれる顧客に提供している。大量生産をしないわれわれのスタンスが伊勢丹新宿本店のザ・ステージで評価されたと思っている。3Dプリンターなどのデジタル技術を利用すれば、ジュエリー製作のコストや時間を縮小できる。顧客とのコミュニケーションも、インターネットを利用すればスムーズに行えるだろう。プロダクトアウトから、顧客に寄り添うジュエリー作りが出来るように変化しなければならないと思っている。国内に工房を構えて生産しているからそれは不可能ではない。
WWD:現在の課題と今後の戦略は?今後の出店計画は?
宮沢:ECの売り上げの割合を現在の6%から10%にすること。パーソナルギフト需要を取り込むための接客力の強化が必要だ。普通の接客では通用しない。顧客に感動を与えるような接客を目指す。商品情報の説明だけでなく、このジュエリーを購入することでどれだけ素敵に豊かになるかという提案をするべきだ。購入することに価値や意味があることを伝えていかなければと思う。来年春までに都内と横浜に1店舗ずつ出店する。
WWD:「スタージュエリー」をはじめ、基幹ブランドの売り上げシェアは?
宮沢:「スタージュエリー」が92%、「スタージュエリー ガール(STAR JEWELRY GIRL、以下ガール)」が5%、「エスジェイエックス(SJX)」が2%、「スタージュエリー
プレシャス(STAR JEWELRY PRECIOUS、以下プレシャス)」が1%だ。
WWD:各ブランドのコンセプトは?
宮沢:「スタージュエリー」はクラフツマンシップにこだわった上質で本物のジュエリー、「ガール」はその妹ブランドで、遊び心のあるファッションで冒険したい女性に向けたラインアップを提供している。「プレシャス」は18金とプラチナ素材が中心で「スタージュエリー」の華やかな部分を表現したラインだ。「SJX」はメンズジュエリーと思われがちだがユニセックスで“禁断の楽しみ(メード・フォー・ギルティー・プレジャー)”をテーマにしている。
WWD:「SJX」は男性タレントやスポーツ選手に人気が高いようだが?
宮沢:以前のコンセプトが“成功の力(パワー・トゥ・サクセス)”だったこともあり、野球選手やゴルフプレーヤーが着けてくれるようになった。最近では、中東などの目の肥えたインバウンド客にも好評だ。
WWD:各ブランドの売れ筋や中心価格帯は?
宮沢:「スタージュエリー」はピアスやリングが人気で、平均価格帯は5万円前後。エンゲージリングだと30万~40万円が中心価格帯だ。「ガール」もピアスやリングが売れ筋で、10金素材が中心なので2万円前後。「プレシャス」はネックレスやリングが売れ筋で10万~15万円程度。「SJX」は18金のブレスレットやネックレスで平均価格は30万円だ。
WWD:全体の売上高でブライダルが占める割合は?
宮沢:30%程度でマリッジリングが多い。3月からは2ケタ増で好調。エンゲージリングは厳しかったが、年号が令和に変わってから伸びている。“令和”や和歌の刻印を入れるなど、こだわる顧客が多い。
WWD:今後、アジアをはじめ海外出店の予定は?
宮沢:以前香港で、現地の企業と合弁で3店舗運営したことがあったが撤退した。海外ではブランド力がないと売れない。百貨店などから出店の声が掛かるが、出店するとしたら自社の販売員を派遣できるようきちんとした体制を作りたいと思っている。国内ではインバウンドに強いブランドとみられているので、さらなる認知度アップを図りたい。今年秋には、中国市場の専門ECサイトを立ち上げる予定だ。まずは、その動向を見ていきたい。
WWD:最近の消費動向で気になることは?
宮沢:ファッションのカジュアル化がジュエリー業界にも影響している。3万~10万円のボリュームゾーンの市場が縮小しており、本物かアクセサリーかの2極化が進んでいる。インバウンドも爆買いはなくなり、ファッションとして楽しめるものが求められている。6月に伊勢丹新宿本店のザ・ステージで行ったイベントでも“こだわり消費”が増えていると実感した。今はインスタグラムなどのSNSの影響で個人の発信が当たり前になり、自分を見てほしいと思う人が増えている。大量生産の発想ではなく、消費者のいろいろなニーズにこたえられればチャンスはあると考える。
WWD:ジュエリー業界が活性化するために必要なことは何か?
宮沢:同質化しているので、オリジナリティーを出していくことが大切。商品と価格の関係を明瞭にするトレーサビリティーも重要だ。
WWD:合成ダイヤモンドについてどう思うか?
宮沢:話題になっているので注視はしていくが、展開の予定はない。