キム・カーダシアン(Kim Kardashian)の補正下着ブランド「キモノ(KIMONO)」は、商品の発売時期さえ発表していないにもかかわらず、すでに大きな話題を呼んでいる。これは同ブランドを手掛けるキモノ インティメーツ(KIMONO INTIMATES)が“KIMONO”という言葉の商標登録を出願したことがSNSを中心に大きな議論を呼び、ついには門川大作京都市長が「使用について考え直してほしい」と公式文書を発表する事態にまで発展したからだ。同市長は、「私たちは『KIMONO』の名称は、きものやきもの文化を愛する全ての人々の共有の財産であり、私的に独占すべきものではないと考えます。キム様には、私たちの強い思いを御理解いただくためにも、『きもの』をはじめあらゆる日本の文化を守り育ててきた京都にお越しいただき、『きもの文化』の神髄に触れていただければ幸いです」とコメントしている。
リサーチ会社ユーロモニター インターナショナル(EUROMONITOR INTERNATIONAL)によると、ブラやショーツ、ガーターベルトなども含む女性のインティメート市場の規模は2018年で約840億ドル(約9兆円)だという。パーシスタンス マーケット リサーチ(PERSISTENCE MARKET RESEARCH)社によると、補正下着単体では20億ドル(約2160億円)規模で、リポート バイヤー(REPORT BUYER)社の調査では24年までに補正下着市場は64億ドル(約6912億円)にまで成長するという。
賛否両論あるキムの補正下着ブランドだが、補正下着市場にとっては注目が集まるという意味で追い風となるかもしれない。補正下着市場の現在のリーダー的存在は、00年に米アトランタで創業したの「スパンクス(SPANX)」だが、「ヘインズブランズ(HANESBRANDS)」や「ビクトリアズ シークレット(VICTORIA’S SECRET)」など大小さまざまなブランドが補正下着市場のシェア獲得に鎬を削っている。
もちろんSNSを活用して瞬時に何百万もの消費者にリーチできるキムの存在は、こうしたブランドにとって脅威となる可能性もある。キムがブランドの発表をインスタグラムで公表したのは6月25日。「キモノ」の公式アカウント(@kimono)のフォロワー数は同日時点では4万2000程度だったのが、7月1日時点で11万となっている。キム自身の公式インスタグラムのフォロワーも1億4000万を超えることから、「キム自身にも多くのフォロワーがいることなどは『キモノ』にとって確実にプラスになるだろう」と、ユーロモニター インターナショナル(EUROMONITOR INTERNATIONAL)のアヤコ・ホンマ(Ayako Homma)=ファッション&ラグジュアリーコンサルタントは分析する。
「ヘインズブランズ」のティム・ブランケンベイカー(Tim Blankenbaker)補正下着部門ジェネラル・マネジャーは、キムの新ブランドは脅威ではないと反論する。「われわれは自分たちのビジネスに集中し、消費者に喜んでもらえるように尽力する。小売りのパートナーからも大きなサポートを得ている」。同氏は、キムの「キモノ」とはターゲット層が異なり、「ヘインズブランズ」はマス向けのビジネスのため競合にはならないと説明する。
YU HIRAKAWA:幼少期を米国で過ごし、大学卒業後に日本の大手法律事務所に7年半勤務。2017年から「WWDジャパン」の編集記者としてパリ・ファッション・ウイークや国内外のCEO・デザイナーへの取材を担当。同紙におけるファッションローの分野を開拓し、法分野の執筆も行う。19年6月からはフリーランスとしてファッション関連記事の執筆と法律事務所のPRマネージャーを兼務する。「WWDジャパン」で連載「ファッションロー相談所」を担当中