独EC大手のオットーグループ(OTTO GROUP以下、オットー)と独広告会社のストロア(STROER)が提携し、新たなデータ会社オットーストロア・データソリューションズ(OTTO STROER DATA SOLUTIONS以下、OSDS)を設立する。顧客データを活用したマーケティング分野で、アマゾン(AMAZON)、フェイスブック(FACEBOOK)、グーグル(GOOGLE)などの米国勢に対抗するのが狙いだ。
オットーは、2018年の売上高がおよそ134億ユーロ(約1兆6348億円)に上る世界でも最大級のECであり、さまざまな価格帯のファッション関連サイトを傘下に収めている。ストロアは屋外広告からスタートしたが、現在はデジタル分野にも事業を拡大しており、ドイツテレコム(DEUTSCHE TELEKOM)のニュースサイトやディズニー(DISNEY)の独公式サイトなどを運営している。両社は膨大な量の顧客データを蓄積しているため、これをマーケティングツールとして第三者に販売するという。
スベトラナ・アーンスト(Swetlana Ernst)=オットー広報担当者は、「当グループが保有するデータ量は国内最大級だ」と自信を見せる。ストロア出身で、OSDSのマネジング・ディレクターを務めるトビアス・エマー(Tobias Emmer)は、「当社は3000万件以上のカスタマーリレーションマネジメント(CRM)データに基づいたデータベースを構築しており、これはフェイスブックがドイツ国内で保有するデータ量を凌駕している。またリーチ数は5000万以上になると予想され、ドイツ市場の90%がカバーできる計算だ。アマゾンやフェイスブックは、ドイツ国内ではるかに低い数字でしかない」と語った。
エマー=マネジング・ディレクターによれば、OSDSが保有しているデータは顧客がオットー傘下のECサイトなどで買い物をしたり、情報サイトを閲覧したりした際のものであり、年齢や住所などの顧客情報が偽物である可能性は低いためデータの質が高いという。最近の傾向として、何かを購入する際にはグーグルなどの検索エンジンではなく、最初からアマゾンのようなECサイト内で検索する消費者が増えたことも、同社の消費者行動データの正確性を高めていると話した。「例えば、ブランドAの商品がオットーのECサイトで販売されているとする。それを購入した顧客の“足跡”がデータとして残るので、ほかのサイトでの行動を追跡してデータを蓄積していくと、『ブランドAの顧客はワインとサッカーが好きで、スペインが旅行先の候補になっている』などのように、“ブランドAの顧客”のプロフィールが出来上がる。これを利用することで、オットーやストロアの顧客の中でブランドAを好みそうな潜在的な顧客は誰かが分かるという仕組みだ。これらの情報を、ブランドや広告代理店などに提供する」。
こうしたデータ収集は、もちろんアマゾンやフェイスブック、グーグルですでに行われている。異なるのは、OSDSからデータを購入した企業は、OSDSとの契約およびドイツの厳しい個人情報保護法の範囲内でという条件はあるものの、基本的には自由に活用していいという点だろう。
なお、収集したデータは匿名化してから使用および販売するという。同氏は、「どのサイトを見て何を購入したかなど、インターネット上に残る足跡によって広告が最適化されていることはよく知られている。各サイトにはそうした情報を収集・利用する旨が掲示されているし、自分の情報を利用されたくない場合は、それを禁じる“オプトアウト”の選択肢も用意されている」と強調した。
同社は7月1日に業務を開始したが、事前に小規模なテストプロジェクトを実施した際には顧客から高い評価を得たという。将来的には、スイスやオーストリアなどほかのドイツ語圏への進出も検討している。