世界最大のビューティ企業ロレアルグループ(L’OREAL GROUP)は7月2日、クラランス グループ(CLARINS GROUPE)傘下の「ミュグレー(MUGLER)」「アザロ(AZZARO)」の買収に向けて独占交渉中だと発表した。
交渉が成立すれば、ブランドフレグランス事業を推進するロレアルグループが「ミュグレー」のフレグランスおよびファッション事業、「アザロ」のフレグランスおよびアクセサリー事業を獲得することになる。同時にクラランス グループは、スキンケア事業に注力するために既製服市場およびフレグランス市場から撤退する。業界筋は、両ブランド合わせての年間卸売上高は3億6000万ユーロ(約439億円)に上り、買収額は10億ユーロ(約1220億円)と見込んでいる。なお、この取引にはレイグ キャピタル グループ(REIG CAPITAL GROUP)が保有する「アザロ」のファッションビジネスは含まれない。
ロレアルグループは1月にプーチ(PUIG)との契約が終了した「ヴァレンティノ(VALENTINO)」とグローバルライセンス契約を締結し、ラグジュアリーブランドのポートフォリオを築き上げている。また、現在プーチが保有する「プラダ(PRADA)」のライセンス事業を同社が獲得するのではないかと噂されている。
ロレアルグループのリュクス事業部は、「イヴ・サンローラン(YVES SAINT LAURENT)「ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」のフレグランスライセンスを保有している。
ユーロモニター インターナショナル(EUROMONITOR INTERNATIONAL)のクセニア・ガレニツスカ(Kseniia Galenytska)=ファッション&ラグジュアリーコンサルタントは、「ロレアルグループの売り上げのうち、9%近くはフレグランスによるものだ。ロレアルは、16年にプロクター・アンド・ギャンブル(PROCTER & GAMBLE)から『ヒューゴ ボス(HUGO BOSS)』や『グッチ(GUCCI)』などの化粧品事業を買収したコティ(COTY)に世界最大のプレミアムフレグランス企業の座を奪われた。交渉中の『ミュグレー』『アザロ』の獲得、ライセンス契約を締結した『ヴァレンティノ』、そして『ジョルジオ アルマーニ』のライセンス契約を2050年まで更新することによってロレアルグループは、世界一のプレミアムフレグランス企業としての地位を不動のものにしようとしている」と分析する。
クラランス グループの中心分野であるスキンケア部門は、18年に総売上高の64%を占め、17億3000万ユーロ(約2010億円)を売り上げた。前年比でコスメ部門が売り上げ4%増、フレグランス部門が同4%減の中、スキンケア部門は同18%増と同社で最も成長している分野だ。
ジョナサン・ズリヘン(Jonathan Zrihen)=クラランス グループ最高経営責任者(CEO)は、「今回の買収は、クラランス グループのポテンシャルを最大限に引き出す再投資と目標を再設定するための戦略的な動きだ。私達の目標は、スキンケアにおいてのグローバルリーダーになることだ」と強めた。