ファッション

「フジロック’19」で観るべき13のアーティスト

 何かと“令和最初の”なんて謳われがちだが、「フジロックフェスティバル(FUJI ROCK FESTIVAL)」は平成だろうが令和だろうが関係なく今年も素晴らしいアーティストたちのライブを観せてくれる。しかし、3日間で200組を超えるアーティストが出演するだけあって、タイムテーブルに悩ましい思いを抱く人も多いはず。そこで、参考になると(一部で)大好評をいただいている、毎年参加している編集担当が観たい&観るべき&ファション的におさえておきたい13のアーティストをオススメの楽曲とともに紹介。苗場へ向かう前にぜひご一読いただき、会場を回る際の参考にしていただければと思う。


ー 1日目 ー
TORO Y MOI
17:50〜18:50@RED MARQUEE

今年発表したアルバム「Outer Peace」収録曲の「Ordinary Pleasure」

 インターネットの発達とともに自宅から世界へと音楽を発信する“宅録系アーティスト”の存在が大きくなったが、トロ・イ・モワ(Toro Y Moi)もそのうちの1人。アフリカ系の父とアジア系の母を持つチャズウィック・バンディック(Chazwick Bundick)のソロプロジェクトで、2010年のデビュー以来コンスタントに楽曲を制作し、これまでに6枚のアルバムを発表している。単純計算で1年半に1枚アルバムを制作していると考えると、その楽曲制作への勤勉ぶりがうかがえる。便宜上チルウェイブなどと言われるが、アルバム毎にさまざまなジャンルを消化した新しい表情を見せるため、ジャンルレスと言ってしまうのが正しいかもしれない。

ネイト・サルマーンを客演に迎えたレ シンズの代表曲「Why」

 トロ・イ・モワのほかにも、ダンスミュージックプロジェクトとしてレ シンズ(Les Sins)名義でも活動していたりと、その類稀なる才能のアウトプットは止まらない。会場ではその膨大な手札の中から何をチョイスして心躍らせてくれるのかということと同時に、MVやライブを見るたびに変わっている髪型がどうなっているかを楽しみにしたい。13年の「フジロック」出演時はアフロだった。

THE CHEMICAL BROTHERS
21:00〜22:30@GREEN STAGE

ヘッドライナーとして登場した「フジロック’11」の様子は「DON'T THINK」として映像作品化されている

 フジロッカーの多くが、ケミカル・ブラザーズ(The Chemical Brothers)の出演に安堵感を抱いたのではないだろうか。それもそのはず、ケミカル・ブラザーズの「フジロック」出演は今回を含めて7回と海外勢最多で、そのうち5回でヘッドライナーを務めている大ベテラン。「フジロック」といえばケミカル・ブラザーズ、ケミカル・ブラザーズといえば「フジロック」。盛り上がることは必至でしかない。

「グラストンベリー 2019」での「Eve Of Destruction」。透き通ったような声が持ち味のオーロラだが、オートチューンがかかった声もまた良さがある

 4月には4年ぶりとなる9thアルバム「No Geography」をリリース。ファンの期待を裏切らないケミカル節全開の本作の冒頭を飾る「Eve Of Destruction」には、話題のノルウェーの歌姫オーロラ(AURORA)と、ゆるふわギャングのラッパーNENEが参加している。同MVはガッチャマン風の衣装をまとったオーロラが楽しめると思いきや、“水性ゴリラ”や“緑色液球体”と名付けられた謎の悪役とスーパーヒーロー(OL)が戦うという日本の戦隊モノにオマージュ(?)を捧げた内容に。先日の「グラストンベリー 2019(GLASTONBURY 2019)」ではオーロラと共にバックスクリーンいっぱいに水性ゴリラが登場していたので、苗場でも見られるはずだ。もちろん音はべらぼうにかっこいいので、山中で開催される「フジロック」だからこそ同アルバム収録曲「MAH」や「Hey Boy Hey Girl」とともに、いつも以上に爆音で流してほしい。

YAEJI
24:15〜25:30@PLANET GROOVE

頻出する韓国語の「クゲアニヤ」は日本語で「そうじゃない」を意味し、韓国語が理解できない人のためにわざと耳に残る言葉を選んだという

 1993年生まれでニューヨークを拠点に活動する韓国人のYAEJIは、トラックメーカーであり、フィルムディレクターであり、ラッパーであり、ペインターでもあり、まさに今の時代を生きる若者らしくなんでもこなす“スラッシャー”(複数の肩書きを持つ人)だ。失礼な言い方になってしまうかもしれないが、何かと目立とうとするアーティストが多いこのご時世、見た目は“おとなしくて勉強ができる女の子”。しかし、作り出す楽曲はミニマルでドープでクールというギャップが光る。代表曲「Drink I'm Sippin On」をはじめ、英語と韓国語を織り交ぜた歌詞はなかなか頭から離れずクセになる。

「Raingurl」のMVは自身がディレクションしている

 個人的な話をすると、人生で初めてYAEJIを観たのは2018年1月1日の深夜1:00。わずか1時間程度のDJだったが、「Raingurl」が流れた瞬間に沸いたフロアを観て「夜の『フジロック』が似合いそう」という印象を抱いた。今年ようやく念願が叶う。

KAYTRANADA
25:30〜27:00@PLANET GROOVE

ケイトラナダが21歳のときに出演した「ボイラー・ルーム」

 ハイチ生まれカナダ育ちのプロデューサー、ケイトラナダ(KAYTRANADA)。14歳のときにDJを始め、15歳のときには楽曲をプロデュースしていたという天才だ。R&Bからヒップホップ、エレクトロ、ダンス、ソウル、ハウスまで、多様なジャンルをミックスして独自のサウンドへと昇華した楽曲の数々で、夜の苗場をダンスフロアへと変貌させるのが目に浮かぶ。上の42分間の動画では、ロバート・グラスパー(Robert Glasper)からジェイムソン(JMSN)、アーマンド・ヴァン・ヘルデン(Armand Van Helden)まで、ジャンルを横断した彼のDJを楽しむことができる。見所は18:30〜の転調と、28:36〜のケイトラナダを代表するジャネット・ジャクソン(Janet Jackson)の「If」のリミックス。右で爆踊りする女の子にも目を向けてみてほしい。

「アディダス オリジナルス」の2018年のブランドフィルム「Original is never finished」

 スラリとした体形からモデルとして活動することもしばしば。「アディダス オリジナルス(ADIDAS ORIGINALS)」が制作した2018年のブランドフィルムには、ラッパーのエイサップ・ファーグ(A$AP Ferg)やプレイボーイ・カルティ(Playboi Carti)と共に出演している。

KID FRESINO
27:00〜27:45@PLANET GROOVE

「Retarded」のMVは「Coincidence」と「Arcades ft. NENE」に続く三部作の完結編

 ヒップホップクルーFla$hBackSの元メンバーで、日本語ラップシーンにおいてひと際存在感を放つKID FRESINOがバンドセットを提げて「フジロック」に初登場。仲間との人間模様を歌った「Eazy Breezy」に代表されるように、KID FRESINOの真摯なリリックは胸に刺さり、楽曲にはどこか哀愁がある。昨年11月にリリースした3年ぶりのアルバム「ai qing」では、英語と日本語を軽やかに行き来しながらバンドサウンドやダンスミュージックとクロスオーバーさせる圧倒的なセンスとスキルを見せ、各方面から“傑作”と高い評価を受けた。1人のリスナーとしても、アルバムのラストを飾る「Retarded」はこの1年でもっともリピートした楽曲の1つ。

KID FRESINOと同じくFla$hBackSの元メンバーのJJJがプロデュースした「LOVE」

 ファッション業界とも縁が深く、「リーバイス(LEVI’S)」ではグローバルキャンペーンのモデルを務め、盟友C.O.S.A.を迎えて2016年に発表した「LOVE Prod by jjj」のMVのディレクションは、東京を拠点とするスケートブランド「ディアスポラ スケートボード(DIASPORA SKATEBOARDS)」の中心人物で映像作家の小林万里が担当している。なお、このMVで着用しているつなぎは東京の新鋭ブランド「シュガーヒル(SUGARHILL)」のもので、林陸也デザイナーに参戦の有無を聞くと「当然観に行きます」と返答が。「同じつなぎを着て行きたいところですが、暑すぎて半日でダウンしそうなのでそれっぽい格好で参戦します」(林デザイナー)。


ー 2日目 ー
UNKNOWN MORTAL ORCHESTRA
14:50〜15:40@WHITE STAGE

フロントマンのルーバン・ニールソンの娘のミドルネームから名付けられた「Hunnybee」

 思わず1970〜80年代の曲だと勘違いしてしまうようなローファイちっく、かつエクスペリメンタルなサウンドで魅了するポートランド発サイケデリック・ポップ・バンド、アンノウン・モータル・オーケストラ(Unknown Mortal Orchestra)。サウンドの幅の広さが特徴で、昨年発表したアルバム「Sex & Food」では上の「Hunnybee」や「Not In Love We're Just High」を代表するメロウなものから、ガレージロック調の「American Guilt」、ダンストラックの「Everyone Acts Crazy Nowadays」まで、1つのアルバムに収録されているとは思えない領域を見せている。また、2013年から毎年年末に「サウンドクラウド(SoundCloud)」で公開しているインストゥルメンタル・シリーズ「SB」は、少しばかり長尺だが飽きのこない構成なので一聴の価値あり。

アンノウン・モータル・オーケストラとダニエル・シーザーを客演に迎えたフリー・ナショナルズの「Beauty & Essex」

 アンダーソン・パーク(Anderson .Paak)のバックバンドを務めるフリー・ナショナルズ(Free Nationals)の「Beauty & Essex」では、後述のR&B歌手ダニエル・シーザー(Daniel Caesar)と共演しており、この時期の夜にピッタリなメロウでグルーヴィーなムードが心地よい楽曲を披露している。

DANIEL CAESAR
20:00〜21:00@RED MARQUEE

代表曲「Get You ft. Kali Uchis」は21歳で発表したとは思えない詩的な一曲

 3組いる“私的「フジロック’19」ヘッドライナー”の1組目は、カナダ出身の新星ダニエル・シーザーだ。フランク・オーシャン(Frank Ocean)と並ぶイチオシR&B歌手で、ゴスペル歌手の父親の影を感じさせるエッセンスと繊細で心地よい声から、R&Bというジャンルや彼のことをよく知らない人でも一度聴けばその魅力にとりつかれるはず。出世作となった女性シンガーのカリ・ウーチス(Kali Uchis)との「Get You」は昨年のグラミー賞にノミネートされ、同じく女性シンガーのハー(H.E.R.)との「Best Part」は今年の最優秀R&Bパフォーマンス賞を受賞。つい1週間前には、ファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)やジョン・メイヤー(John Mayer)らが参加している豪華アルバム「Case Study 01」をサプライズリリースするなど、彼の一挙手一投足に世界が注目している。

2017年に披露されたチャンス・ザ・ラッパーとの「First World Problems」は代表曲の1つだが未だに音源化されていない

 無類の音楽好きであるバラク・オバマ(Barack Obama)前大統領もベタ惚れしており、全21曲からなる自身のプレイリスト「My favorite songs of 2017」には、チャンス・ザ・ラッパー(Chance The Rapper)との「First World Problems」と、デビューアルバム「Freudian」収録曲の「Blessed」の2曲を選出している。オバマ前大統領同様、彼の声に耽溺しながらも昨年の初来日公演キャンセルに涙を飲み、首を長く長くして待っていたファンの皆さま、ハンカチ片手にレッドマーキーで会いましょう。


ー 3日目 ー
PHONY PPL
15:50〜16:50@WHITE STAGE

ボーカルのエルビー・スリーの声がとにかくチルサウンドに合っている「Why iii Love The Moon」

 西海岸にジ・インターネット(The Internet)がいれば、東海岸にはフォニー・ピープル(Phony Ppl)がいる。ニューヨークのブルックリンで高校生の時に結成された5人組ネオソウルバンドで、ジ・インターネットが「一番好きなバンド」と言うだけあって、ジ・インターネット好きであれば耳なじみがいいだろう。1990年代のヒップホップシーンで活躍したDJでプロデューサーのジャジー・ジェイ(Jazzy Jay)を父に持つマット・マフィー・バイアス(Matt Maffyuu Byas)がドラムということもあってか、楽曲は80〜90年代の香りを漂わせながら今っぽさも取り込んだ次世代のバンドサウンドだ。

全員で相談したであろうトップスの色味がかわいらしい

 故マック・ミラー(Mac Miller)をはじめアーティストのバックバンドとしても活躍するなどメンバーそれぞれの演奏力が高いので、音源で満足せずに豊かな表現力を聴きに足を運ぶべし。直接話したことはないのでなんとも言えないが、ライブやインタビュー映像を見ていると全員から人柄の良さがにじみ出ており、それが彼らの音楽にも表れている気がする。

HYUKOH
16:30〜17:20@WHITE STAGE

2014年発表でブレークのきっかけとなった「WI ING WI ING」

 韓国の音楽シーンをアイドルグループが席巻しているのはご存知の通り。その中で、ジャンルは違えどR&B歌手DEANやラッパーKeith Apeらと共に韓国を盛り上げているのが、オーセンティックな4人組バンドHYUKOHだ。2014年に韓国で人気に火が付き、それ以降毎年のように来日公演を行なっているので、ここではバンドについて詳述せずフロントマンのオ・ヒョクとギターのイム・ヒョンジェについて触れたい。ブルージーな歌声の持ち主であるオ・ヒョクは、18歳まで家庭の事情で中国国内を転々としていたことから韓国語・官話(中国語の1つ)・英語を操るトリリンガル。そして幼少期にバイオリンを弾き、ゴスペルを歌っていたという経験も重なり、彼が生み出す音楽はさまざまな文化的要素やジャンルが混じり合った“新しいロック”を感じさせてくれる。そんなバックボーンからファッションセンスも唯一無二で、「セリーヌ(CELINE)」や「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」のショーではフロントローに座り、日頃から着用するほど密な関係の「ナインティナインパーセントイズ(99%IS-)」の2017年春夏コレではショー音楽を手掛けた。ちなみに、バンド名は彼の名前(Oh Hyok)をひっくり返したもの。

韓国ドラマ「アントラージュ」のために制作された「MASITNONSOUL」。レッチリの「Around The World」を彷彿とさせる

 イム・ヒョンジェはギターの腕はもちろん、変態ギタリストのスティーヴ・ヴァイ(Steve Vai)と同じくらい顔でギターを弾くので、見ていると「本当にギター弾くのが好きなんだな」と思わせてくれる存在だ。HYUKOHの「MASITNONSOUL」や「Citizen Kane」のようなレッド・ホット・チリ・ペッパーズ(RED HOT CHILI PEPPERS)を思わせるサウンドは彼なくしては生まれなかっただろうし、ギター・ミュージックが不遇な時代だからこそ惹かれてしまう。オ・ヒョク共どもファッションアイコンとしても注目を集めている。

KOHH
18:10〜19:00@WHITE STAGE

幼少期の思い出を歌った「貧乏なんて気にしない」のリリックには思わず心打たれる

 もはや説明不要の日本が世界に誇るラッパーKOHHが3年ぶりに苗場の地に現れる。この3年の間、日本の歌姫・宇多田ヒカルの「忘却」をはじめ、世界の歌姫マライア・キャリー(Mariah Carey)の「Runway」、フランク・オーシャン(Frank Ocean)の「Nikes」、Higher Brothersの「We Talkin Bout」、5lackの「24365」など、国内外の著名アーティストの楽曲に参加。自身でもONE OK ROCKのTakaを客演に迎えた「I Want a Billion」を収録したアルバム「Untitled」をリリースしたり、他フェスに多数出演したりと精力的に活動していたので、前回と比べて格段にパワーアップした姿が見られるにちがいない。だからこそ、普段はKOHHを聴かないという人に彼のライブでの圧倒的なまでのパフォーマンスの熱量と、紡ぐ言葉の裏にある真意を感じてほしい。

パリコレを歩いたKOHHならではの「Paris」と、地元への愛を歌った「結局地元」

 「ファセッタズム(FACETASM)」のランウエイモデルにたびたび起用されるなど、その持ち前のセンスでファッション業界からも脚光を浴びるKOHH。昨年には完全予約制のセレクトショップ「ドッグス(Dogs)」を地元である東京・北区王子にオープンし、「ヴァレンティノ(VALENTINO)」のビジュアルに登場するなどアイコンとしても健在。ラッパーという枠にとどまらない存在へと成長を見せている。

VINCE STAPLES
20:00〜21:00@WHITE STAGE

ヴィンス・ステイプルズが参加しているゴリラズの「Ascension」

 3組いる“私的「フジロック’19」ヘッドライナー”の2組目。ドクター・ドレー(Dr.Dre)やケンドリック・ラマー(Kendrick Lamar)ら数々の名ラッパーを輩出してきたカリフォルニア州・コンプトンを地元とするラッパーで、日々若い芽が出てくるヒップホップシーンにおいて白眉なのが、ヴィンス・ステイプルズ(Vince Staples)だ。若手ラッパーの大半は流行りのサウンドを取り入れ、奇抜な見た目やクレイジーな言動といった“話題作り”に余念がなく、数年後には飽きられ大半が消えていくやもわからない。だがステイプルズはストレート・エッジな生活を送り、周りからの評価や流行に流されることもなく、己の信ずるままひたむきに自分らしさを追求。先鋭的なサウンドや独特の言い回し、そして確かなラップスキルでファンを獲得してきた。日本ではまだなじみがないかもしれないが、ゴリラズ(Gorillaz)の「Ascension」でラップを披露している人物と聞けば、頷くフジロッカーも少なくないだろう。ゴリラズが17年の「フジロック」に出演した際には、「ステイプルズがサプライズで登場するかも」というウワサが流れたものの、結果はスクリーンいっぱいにステイプルズの顔が映し出されるというオチ。それを含めるとステイプルズの「フジロック」出演は2回目となる。

コラボ“オールスター”のモチーフになった「Big Fish Theory」収録曲の「Big Fish」

 そんな彼は大の「コンバース(CONVERSE)」好きで知られ、「Lift Me Up」や「Norf Norf」、GTAとの「Little Bit of This」のMVで着用しているだけでなく、好きが高じて2ndアルバム「Big Fish Theory」をコンセプトとしたコラボ“オールスター(ALL STAR)”を発表している。

KHRUANGBIN
21:00〜22:30@FIELD OF HEAVEN

屈指の人気曲だがとにかくシュールな「Evan Finds The Third Room」のMVは一見の価値あり

 3組いる“私的「フジロック’19」ヘッドライナー”の最後を飾るのは、バンド名がタイ語で飛行機を意味するクルアンビン(Khruangbin)。結成はアメリカ・テキサス州で、シンプルな3ピースバンドだがボーカルはほぼなし。バンド名をタイ語からとっているように1960~70年代のタイ・ファンクや東南アジアのポップミュージックにルーツに持ち、それを欧米のロックサウンドや中近東の音楽とうまいこと融合させることで、アジアの異国情緒が匂う多面的なオリジナリティーを確立。つらつらと説明したが、簡単に言うと“妖艶で中毒性が高い”。聴いていると宇宙に連れてってくれそうな浮遊感を覚える悩殺サウンドで、フィールド・オブ・ヘブンとの相性は抜群だろう。しかし、グリーンステージのザ・キュアー(The Cure)と、ホワイトステージのジェイムス・ブレイク(James Blake)と時間が被っているのが悩ましいところ。DJセットではあるが2日目にクリスタル・パレス・テントに出演するので、そちらで楽しむのもありかもしれない。

「コーチェラ 2019」会場でのインタビューの様子。ローラ・リーが着用しているのは「オフ-ホワイト」2019年春夏のアイテム

 サイケデリックな音楽に違わず、ギターのマーク・スピアー(Mark Speer)も、ドラムのドナルド DJ ジョンソン(Donald “DJ” Johnson)もパンチのある見た目をしている。そんな中、ベースで紅一点のローラ・リー(Laura Lee)はかなりのファッション通で、先日の「コーチェラ 2019(COACHELLA 2019)」をはじめ多くのライブで「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」を着用。これに応えるかのようにヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)はツイッターで「super amazing, fave new band」、インスタグラムでも「my favorite band in the world right now」と絶賛、相思相愛ぶりを見せている。リーは「オフ-ホワイト」のほかにも、スパンコールが散りばめられたボディースーツなどステージ映えする衣装を着用することが多いので、当日も何を着用して登場するか期待したい。そして、時折披露するア・トライブ・コールド・クエストの「A Tribe Called Quest」やドクター・ドレの「Next Epsiode」、ウォーレン・G(Warren G)の「Regulate」、リル・キム(Lil' Kim)の「Get Money」など往年ヒップホップのカバーメドレーも楽しみにしたい。

Night Tempo
23:00〜23:40@GAN-BAN SQUARE

竹内まりやの「プラスティック・ラブ」をサンプリングした傑作「Plastic Love(Night Tempo 100% Pure Remastered)」

 フジロッカーは20代後半から40代前半が占めていると勝手に想定しているが、そんな方々にぴったりなのがNight Tempoだ。レトロフィーチャーと区分されるジャンルの代表的アーティストで、山下達郎や竹内まりや、Wink、中原めいこ、菊池桃子、具島直子ら1980〜90年代に一世を風靡した邦楽のボーカルをサンプリングに多用しキャッチーにアレンジしているので、ノスタルジーに浸りながらもアッパーになること間違いなし。

山下達郎の「LOVE SPACE」をサンプリングした「If You Love Me」

 メジャーどころからニッチなものまで、これだけ邦楽をサンプリングしているNight Tempoが実は韓国人というから驚きだ。なんでも音楽プロデューサー角松敏生への憧れをきっかけに、日本の音楽やオタク文化といったサブカルチャーをディグるようになったという。日本人が慣れ親しんだ楽曲を逆輸入し再認識させてくれるNight Tempoは、MVでも日本漫画の数々にオマージュを捧げているのでチェックをお忘れなく。


 以上、独断と偏見で選んだ13のアーティストを紹介したが、皆さんのプレイリストへの追加と足を運ぶきっかけになれれば幸いだ。しかし、残念ながら仕事のスケジュールや金銭的な問題で「フジロック」に参戦できない人もいるだろう。そんな人たちのために「フジロック」は昨年から、グーグル日本法人と協業し公式ユーチューブチャンネルでライブの模様を一部生配信している。諸事情で苗場に赴くことができないフジロッカーも家にいながら「フジロック」を楽しむことができるので、ここでは紹介できなかった日本語ラップシーンの新星MIRRRORをはじめ、サブリナ・クラウディオ(Sabrina Claudio)やコートニー・バーネット(Courtney Barnett)、ティコ(Tycho)、MITSKI、ステラ・ドネリー(Stella Donnelly)、SANABAGUN.、NST & THE SOUL SAUCE MEETS KIM YULHEE、BIGYUKIら他アーティストとともにぜひチェックしてみてほしい。

■FUJI ROCK FESTIVAL’19
日程:7月26〜28日
会場:新潟県湯沢町 苗場スキー場
出演アーティスト:トム・ヨーク・トゥモローズ・モダン・ボクシーズ(THOM YORKE TOMORROW'S MODERN BOXES)、ASIAN KUNG-FU GENERATION、ELLEGARDEN、Superfly、銀杏BOYZ、Tempalay、TAKKYU ISHINO、ハイエイタス・カイヨーテ(Hiatus Kaiyote)、Licaxxxなど

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