“快適”をキーワードとするブラジャーが市場を席巻するようになって久しいが、その流れのきっかけを作り、市場を牽引してきたのが、トリンプ・インターナショナル・ジャパンが展開する「スロギー(SLOGGI)」と言える。同製品の「きもちよすぎースロギー」という印象的なコピーのCMを記憶の方も多いだろう。
そもそも「スロギー」は1979年、快適なショーツブランドとしてドイツで誕生した。その後86年に日本に上陸し、2008年に伸縮性に優れた生地と接着技術を利用した、縫い目のないショーツを日本独自規格として発売。このショーツの技術をブラジャーに応用しようと研究開発を重ね、13年に接着面も伸びる特殊な製法を用いたハーフトップブラが完成。これが、累計620万枚(19年5月末現在)の大ヒットとなる「スロギー ゼロフィール(SLOGGI ZERO FEEL)」の誕生だ。その後3年で日本における「スロギー」の売り上げは約20倍に達し、16年以降は販路も拡大。18年の売上高は16年に比べて40%増を実現した。
最近は「スロギー」同様に、伸縮性のある素材を使用し、接着技術で仕上げたハーフトップ&ショーツが数多く発売され、安価な類似製品も出回るようになった。そんな他社製品との違いについて、河野智美スロギー事業本部プロダクト&マーチャンダイジング部マネジャーは「切りっぱなしでもほつれたりカールしたりせず、縦横斜めに自在に伸びる生地のクオリティー、テープを使わない接着によるフラットな仕上がり、接着部分も生地と同じように伸縮する技術、それらには自信を持っている」と胸を張る。また、サイズ展開もブラサイズごとのフィッティングチェックを行ったり、新製品でアンダーを調整できる2段4列のフックアイを採用するなど、さらなる着用感の向上にも取り組んでいる。
このようなコンフォートブラ市場の今後について、中井直スロギー事業本部長は「快適であることは最低条件であり心地よくて当たり前。今後は快適+αとなる“α”の提案が細分化していくだろう。価格競争が激化していることは承知しているが、われわれは価格ではなく革新性と技術力で勝負していく。お客さまが求める” α”に最初に応えるブランドでありたい」と語る。
13年に日本で誕生した「スロギー ゼロフィール」は、18年3月にヨーロッパで発売開始され、現在約40カ国で販売されている。「ヨーロッパ、アジア共に発売後2カ月で一時品切れが出るなど想像を超える売れ行き。20年には日本以外の販売量が日本を超える見込みだ」(中井直スロギー事業本部長)。河野マネージャーはその状況を「世界中の人がこんなに“快適”を求めているとは想像していなかった。スロギー ゼロフィールはグローバル展開となったが、感性的にも技術的にも高いレベルで打ち出していくことに変わりはない」と、冷静に物作りを追求する。
6月27日はスロギー公式オンラインストアがオープンし、今後は直営店のオープンやポップアップストアの展開も予定している。「デジタルのメディア戦略を強化し、20〜30代、さらに10代にもアプローチしたい。面白いと思ってもらえるコンテンツをそろえて仕掛けていく」と中井直スロギー事業本部長。日本の物作りの技術とマーケティング力でさらなる飛躍を狙う。
川原好恵(かわはらよしえ):ビブレで販売促進、広報、店舗開発などを経て現在フリーランスのエディター・ライター。ランジェリー分野では、海外のランジェリー市場について15年以上定期的に取材を行っており、最新情報をファッション誌や専門誌などに寄稿。ビューティ&ヘルスの分野ではアロマテラピーなどの自然療法やネイルファッションに関する実用書をライターとして数多く担当。日本メディカルハーブ協会認定メディカルハーブコーディネーター、日本アロマ環境協会認定アロマテラピーアドバイザー。文化服装学院ファッションマーチャンダイジング科出身