1923年に創立されたファッション教育の伝統校である文化学園は文化ファッション大学院大学学長、文化学園大学学長などを務める濱田勝宏氏が4月1日に理事長に就任して、次代の学校像を構築中だ。濱田理事長は文化学園で約50年のキャリアがあり、特に大学の発展に尽力した。若者のファッション離れ、少子化などファッション教育機関が直面する難局にどう対応していくのか。文化学園が進む新時代への抱負を聞いた。
WWD:約50年の長いキャリアとともに文化学園の発展を見てきた濱田理事長は、全体を統括するトップとして適任のようだ。
濱田勝宏・文化学園理事長(以下、濱田):適任かどうかは分からないが、大沼淳・前理事長から役職引き継ぎのお話をいただき、熟慮の末、大役だが期待に応えて恩返しをしたいと思って引き受けた。私はこれまで大学運営に仕事の軸足を置いていたので、文化学園全体の動きについては十分把握していない点もある。理事長に就任以来、私の環境はそれまでと比べて大きくと変わった。今勉強中の部分もある。
WWD:文化学園の現状は?
濱田:少子化、若者のファッション離れ、ファッションに対する捉え方の移り変わりを実感している。現在の学生数は約8000人。ピーク時は1万人以上が在籍したこともあるが、この2~3年は横ばいから少し上向いてきた。一つの特徴は、外国人留学生が増加して全体の約20%に達していることで、40カ国以上から留学生を受け入れているが特に中国人の学生が多い。留学生の獲得に対して積極的なPRは行っていないが、卒業生が受ける高い評価が口コミで広がっているようだ。ファッション業界はグローバル化が拡大しており、国際的な人材確保が企業の活性化につながっている。日本と母国の架け橋となって活躍している卒業生が多く、グローバルな人材育成は今後も力を入れたい。
WWD:グローバリゼーションは、文化学園が掲げるキーワードの一つだ。
濱田:キーワードとして掲げるクリエイション、イノベーションと並んで、国際社会で認められる研究・教育環境を整えていくグローバリゼーションは一番の柱であり、このグローバル化時代の大きな潮流にどう対応するかは差し迫った課題だ。国際交流センターでは14カ国46校におよぶ海外提携校との学術・文化交流、留学生・留学希望者のサポートなど国際的な関係拡大を長年にわたり積み重ねており、国際ファッション工科大学連盟(IFFTI)の国内唯一の加盟校となっている。この多様性が文化学園を支えている。今後は、国際的に存在価値のある学校に発展しなくてはいけない。国内だけでなく、“世界の文化学園”と言われるように努力したい。
WWD:“世界の文化学園”になるための施策は?
濱田:これまで積み重ねてきた歴史を振り返り、未来を模索していくこと。その一つの節目としてターゲットにしているのが、文化学園が創立100周年を迎える2023年。文化学園の強みは、100年の重い歴史を乗り越えてきた英知の上に築かれている。創立100周年を単なるお祝い事で済ませることなく、文化学園の新しい歴史をつくる区切りの年としたい。まだ抽象的だが、時代にそぐわないしくみや制度があれば見直したい。大学と専門学校との連携、短期大学の独自の在り方、産業界とのつながりや社会貢献など、まだ議論の余地が残されていることがたくさんある。変化する時代の中で求められるのはどんな人材なのか。閉塞感があるファッション界や学校の環境を変えていくには相当な改革が必要だ。今の仕組みやプログラムを幅広く特色あるものに改善していくことが先決だと思う。制度を変えるのでなく、今持っているポテンシャルをどう引き出すかが重要だ。そして、文化学園全体の総合力を強めていくこと―それが私の使命だ。