「ナンバー(NO.)」は、2018年春夏シーズンからスタートしたユニセックスブランドだ。ドメスティックブランドで営業などを経験してきた一宮武史ディレクターが立ち上げた同ブランドは、ストリートテイストでありながら、どこかクリーンな印象を感じさせるアイテムを主軸にそろえている。
「ナンバー」の最大の特徴は、デザイン体制の在り方だ。企業としてデザイナーを雇用するのではなく、毎シーズン、一宮ディレクターが設定したテーマに合わせて複数のデザイナーたちを招集。各々がテーマに沿った服を作り上げる。19-20年秋冬シーズンでは“ウエスタン”をテーマに、6人のデザイナーが参加した。「才能と意欲はあっても金銭的な理由などから自身のブランドを持てないデザイナーもいる。そういったデザイナーたちに資金を渡し、工場の選定やデザインなど、ブランドを運営する際に必要な業務を行ってもらっている。『ナンバー』としても、さまざまな意見が飛び交うことで常に鮮度がある提案が可能だ」と一宮ディレクター。同ブランドに参加しているデザイナーの中には、自身のブランドを立ち上げ、成功している者もいるという。
同ブランドの“才能ある若手を育む”デザイン体制は、海外でも評価されている。2019年春夏シーズンには、コペンハーゲン・ファッションウイークの合同展示会に招待された。高機能なギアウエアが人気の北欧の中でも、「特に若い人たちを中心となって、ブランドのデザインに対するスタンスを支持してくれていた。ブランドを立ち上げるために努力はしてきても、金銭的な理由もあり、なかなかうまくいかないという若手デザイナーの悩みは海外でも同様だ。『ナンバー』が採用しているデザイン体制は多くの人たちに受け入れられるなと実感した」と一宮ディレクターは手ごたえを感じているようだ。
アイテムの上代(小売価格)を決めていないことも「ナンバー」の特徴だ。同ブランドは卸値のみを設定し、上代は取り扱い店舗が決定する。「上代はブランド側が決めるという業界の暗黙のルールがあり、自分がブランドの営業をしていた際に苦労を感じたこともあった」と説明する。
「ナンバー」の取り扱い店舗は地方の個店で数店舗と、まだまだ小規模だが、2020年春夏シーズンからは取り扱い先の拡大を目指す。「これまで関わってきたデザイナーの成長や、コペンハーゲンでの反響などを見て、さらにブランドを広げられると感じた。今後はこれからは積極的に営業をかけていき、大手セレクトショップなどにも販路を拡大していきたい」。