ファーストリテイリング(以下、FR)がロサンゼルスで運営するジーンズ研究・開発施設「ジーンズイノベーションセンター(以下、JIC)」は、アジアや欧米の17の国と地域から約70人のメディア関係者を招き、6月に導入したばかりのウオーターリサイクルシステムを初めて公開した。レーザーを使ったビンテージ加工やナノバブルと人工石を用いた洗い加工などに続くもので、松原正明JICディレクターは「サステイナブルなアプローチをさらに加速させたい」と話す。
同システムはスペインのジーノロジア(JEANOLOGIA)社との協業で生まれ、ジーンズの洗い加工によって出る汚水を5つのタンクを使って浄化する。段階的に注入されるのはオゾンやミネラルなどナチュラルなもので、浄化された水はあらためて洗い加工に使われる。計算上は4カ月に1度排水の必要があるが、今後は「半永久的に使えるものにしたい」という。
JICの特徴について松原ディレクターは、「FRのスケールメリット」と「純粋な研究・開発ではなく、SPAとしての責任を持つこと」を挙げる。研究・開発施設などの作る最終サンプルは、実際には各工場が設備や従業員のスキルに合わせてそれに近づける努力を行うことが多いが、JICは「本当の意味での最終サンプル」を作り、そのレシピも提供する。それが「JICの強みだ」と語り、さらに松原ディレクターが「プロフェッショナル」と認める技術者が、実際の生産現場で指導や問題解決を行う。
JICは2016年に本格始動。「ユニクロ(UNIQLO)」と「ジェイ ブランド(J BRAND)」の2ブランドの研究・開発からスタートし、現在は「ジーユー(GU)」や「ヘルムート ラング(HELMUT LANG)」などFR傘下の全8ブランドのデニムを手掛ける。広さは932平方メートルで、「設立当初から倍増した」。
JICの今後については、「水の削減だけでなく、素材作り、染色、薬品などジーンズ作りの全てのプロセスでイノベーションを起こしたい。そして、われわれはすでに行動に移している」と述べた。