プロクター・アンド・ギャンブル(PROCTER & GAMBLE 以下、P&G)は、化粧品専門店「サリー ビューティ(SALLY BEAUTY)」の北米とカナダの店舗で黒人女性向けのヘアケアライン「マイ ブラック イズ ビューティフル(MY BLACK IS BEAUTIFUL)」を発売した。「マイ ブラック イズ ビューティフル」はもともとP&Gが2006年に立ち上げたプロジェクトで、社内の黒人女性が黒人ならではのビューティのニーズなどを発信したり、共有できる場となっている。
今回のブランドはSNSでアイデアをクラウドソーシングするインキュベーションプロジェクトにより誕生した。製品はココナツミルクやチューメリック、生姜、はちみつ、ココナツオイルなどを配合。シャンプーやコンディショナーのほか、集中トリートメントをそろえる。価格は11.99〜12.99ドル(約1294〜1402円)。
P&Gにとって、カールや縮毛が特に強い黒人女性に向けて製品を打ち出すのは初めてだ。17年に「パンテーン(PANTENE)」からカールヘアや縮毛向けの製品を出していたが、同ラインはカールをケアするというより、髪を保湿することにフォーカスしていた。
「マイ ブラック イズ ビューティフル」プロジェクトを率いるレラ・コフィー(Lela Coffey)P&Gマルチカルチュラル ビューティ ブランド ディレクターは「黒人女性は美容に対してとても情熱的。われわれは長い時間をかけてこういった黒人女性のニーズに耳を傾けてきた。P&Gのブランドポートフォリオをより多様にできたのは喜ばしいことだ」とコメントしている。
「マイ ブラック イズ ビューティフル」は製品の発売とともに、辞書の出版社に対して“black(黒、黒人)”の定義を変えるように訴える運動をしている。現在多くの辞書では“black”の定義に、「黒人や黒人にまつわるアイデンティティー」よりも先にネガティブな定義を記載していることが多い。 それを変えるように6月から訴え、その結果「ディクショナリードットコム(DICTIONARY.COM)」および「ミリアム-ウェブスター(MERRIAM-WEBSTER)」は “black”の定義を更新している。
【エディターズ・チェック】
ダイバーシティーを大切にする姿勢は本当に素晴らしいですが、この手のニュースを見るたびに、今更!と正直思ってしまうことが多いです。アメリカ合衆国国勢調査局によると、アフリカ系アメリカ人の人口は北米内で13.4%を占め(2018年時点)、76.5%を占める白人に次ぎます。人種が違えば髪質や肌質が違うのは当たり前なのに、ビューティ業界では彼らに向けた製品が極端に少ないように思います。日本人である記者は海外に行っても、白人と同じような明るめのファンデーションやカラーを使えるためになかなか気づかないのですが、超大手企業が出すブランドであってもファンデーションは暗いカラーの展開が少なかったり、黒人特有の髪ニーズをターゲットしたヘアケア製品は下の方の棚に並んでたりします。昔よりは黒人やマイノリティーに対する差別が減り、ちょっとでも差別的な発言や行動をすると叩かれるようになったものの、まだまだビューティ業界は追いついていないな、とも思っています。そういう中でP&Gのような業界をリードする企業がダイバーシティーに向けて一歩進んでいるのはとても良いことです。こういったニュースが取り上げられて賞賛されるのではなく、当たり前になるような日が来ることを願います。