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「お客さまの感情を喚起する」 ケイト・スペードのオムニチャネル施策

 “顧客接点”という観点において、いまやアプリは大きな役割を占めるようになった。それに伴い多くの企業がアプリ開発に乗り出す中、それぞれの“企業らしさ”をアプリ内で表現することも重要になってきている。果たして、企業の個性とは何なのか、そしてその個性が何を生むのか。クラウド型のアプリ開発プラットフォームであるヤプリを導入し、大きな効果を上げているというケイト・スペード ジャパンの柳澤綾子社長に直撃。同社がアプリやECにおいて重視しているという“感情”や、今後のオムニチャネル戦略に迫った。

自社ECは“アルティメット旗艦店”

WWD:「ケイト・スペード」にとってECはどのような役割を果たしている?

柳澤綾子ケイト・スペード ジャパン社長(以下、柳澤):本国も含め、私たちはECを“アルティメット旗艦店”と呼んでいます。商品数の制約がなく、お客さまはいつでもブランド全体を360度見ることができる。そのため、ブランドハブという立ち位置で、メディア機能などを強化しながら運営しています。

WWD:グローバルと日本で、ECの運営に違いはある?

柳澤:ケイト・スペードは企業として“Think global, act local”を意識しています。本国からコンスタントにミッションなどのメッセージが届き、それに対して各国が最適なツールや方法を考え、実行に移しています。

WWD:他国と比べ、日本の消費者はどのように違う?

柳澤:日本はモバイルが発達していますね。日本でEC事業をスタートさせた10年ほど前でも、サイト訪問者のモバイルの比率は40%と、他国に比べて高かった。今では90%を超えています。さらに、モバイル上でもサービスや体験、しっかりとしたメッセージングなど、“おもてなしの心”がデジタル上でも求められていると思います。

日本でのモバイル施策
「アプリは1番レスポンスがいい媒体」

WWD:モバイルが発達している日本において、どのような施策を行ってきたのか?

柳澤:モバイル上でのサイトのユーザビリティー向上やアプリ導入などです。特にアプリ施策は大きな反響がありました。これまでのデジタル上では「ケイト・スペード」と文字を入力して検索しなければブランドに触れることができなかった。でも、アプリはボタンを押すだけですぐにつながれる。少しでも「ケイト・スペード」に興味を持っていただいた方の身近に常にいて、コミュニケーションを取ることができるツールでもあります。

WWD:アプリ導入でどのような効果があった?

柳澤:ECの売り上げやサイトのトラフィック数は大幅に上がりました。特にアプリからの流入が非常に多かった。一つドアが増えたような感覚ですね。アプリは、お客さまからのレスポンスが一番いい媒体だと思います。現代の人は非常に忙しく、さまざまなシチュエーションや優先順位がある。そのような中でもダウンロードしていただいた方に日々メッセージを送ることで、「ケイト・スペード」の優先順位が上がっているなと思っています。日本の様子を見て、これまでアプリを使っていなかったグローバルでも導入の機運が高まっています。

日々のコミュニケーションで
「お客さまの感情を喚起する」

WWD:日々のアプリを通じたコミュニケーションで意識していることは?

柳澤:お客さまの感情を喚起することですね。お客さまが少しでも楽しくなったり、前向きな気持ちになったりするためのメッセージやサービスを考えています。今年に入ってからは、AR機能を使ってアプリ内のカメラをかざすと動画が見られる、という新たな試みも行いました。「ケイト・スペード」の根底には「女性たちが自分の人生のヒロインになって欲しい」という願いがあります。これはアプリに限らずECでも店舗でも同じこと。例えば、ECで購入した際に商品を梱包する資材は、一見すると段ボールですが、中には特別な柄やデザイナーからのメッセージが入っていたり、今の時期に店舗で配っているうちわを、ECで購入した商品と一緒に梱包してお届けしたり。小さいことかもしれませんが、少しでも特別感を味わうことができればと思って行っています。

顧客体験重視のオムニ戦略
「女性たちが自分の人生のヒロインに」

WWD:店舗とECの連動といったオムニチャネルの施策はどのように進めている?

柳澤:オムニチャネル化を語る際に、システムの話から入ってしまうことも多いですが、本当に重要なのは一人のお客さまの体験価値をどう上げるか。その目的に向けて、システムを整えていくのが正しいのかなと思っています。今後はモノの面でも、コトの面でもよりパーソナライズされたサービスをオンラインとオフライン双方から提供できるようにしていくつもりです。

WWD:今後のブランド戦略は?

柳澤:お客さまが輝けるサポートができるような仕組みを店舗とEC、そしてアプリなど全てのクオリティーを上げて作り上げていきたいです。先ほども言った「女性たちが自分の人生のヒロインにする」ことこそがケイト・スペードという企業、ブランドの存在意義。非常に高い目標であることは分かっていますが、モダンな女性を支え続けるブランドとして、拡大していきたいです。

PHOTO : KAZUO YOSHIDA

問い合わせ先
ヤプリ
050-1745-4458