官民ファンドのクールジャパン機構はこのほど、インターネットを活用したアパレル生産システムのスタートアップ企業シタテル(熊本県熊本市、河野秀和社長)に最大10億円の出資を決めた。シタテルはインターネットを通じてデザイナーと縫製工場をつなぐ同名のプラットフォームを運営しており、調達資金を活用し、海外進出と縫製以外の分野にも事業を広げる。クールジャパン機構はソフトウエアや小売り分野への投資が先行していたが、人工クモの糸で知られるスパイバーなど製造業系のスタートアップへの投資も増えてきた。シタテルは5月と6月に大手繊維商社のヤギと日鉄物産、丸井グループなどからの調達も行っており、今回も含め累計の資金調達額は約20億円になる。
シタテルは14年3月に創業。中小・零細企業の多い日本の縫製企業と、デザイナーやアパレルなどの最適なマッチングを目的にしたインターネット上のプラットフォーム「シタテル」をスタート。現在は縫製工場を中心に生地メーカーや副資材メーカーなどのサプライヤー700社と、国内のアパレルや若手デザイナーなど1万3000社が会員になっており、20年3月期の流通額は小売り価格換算で120億円を見込んでいる。小ロット生産を求める若手デザイナーと営業力不足が課題の縫製企業を、独自開発のアルゴリズムでマッチングしていることが流通額の拡大を後押ししている。
シタテルは調達資金を活用し、現在試験的にスタートしている、生産機能を持つ次世代型のネット通販サイト「スペック(SPEC)」の本格稼働を計画する。「スペック」は、サンプルのみを掲載、「シタテル」の生産機能を活用し、在庫なしで発注を受けてから生産できるプラットフォーム。9月からの本格稼働を計画する。
クールジャパン機構はシタテルの支援により、日本の縫製業に加え、アパレル業界全体の技術革新を後押しする狙い。